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DX、SAPシステムの移行などに必ず付きまとう予算の壁。
経営陣への説明やスムーズな予算承認のためには、どんなアクションが必要なのか?
大手サービス企業のプロジェクトチームのみなさまがお悩み相談にやってきました。







IE次長:現在、私たちはSAP ECC6.0を使用していて、S/4HANAへ移行するための基本構想を作る段階にあります。最終的には経営幹部に上申して予算を確保していきます。しかし、1つ大きな壁があって、経営幹部の価値観が多種多様なんです。SAPシステムへの印象も「昔と比べて便利になった」「もう少し使いやすくしたい」「高いよね」とさまざま。この認識の違いをどうやって解消して共通化すればいいのか。大和ハウス工業さんのこれまでの経験からアドバイスをいただけたら幸いです。

JSUG福嶌:まずは、今の話をカバーするために当社がなぜSAPをなぜ選んだかみたいなところをお話してみます。今、振り返ると弊社の導入時は、標準化された仕組みを求めていました。それは創業者が示した、創業100周年に10兆円企業を目指すという大目標があり、どんどん事業が拡大していく中でスピード感が求められていました。

KD担当部長:なるほど。

JSUG福嶌:当時の既存システムは自社のカルチャーにあったスクラッチの仕組みを使っていました。M&Aをして事業やグループ会社が増えていく中、システムも横展開していきましたがもう限界が近かった。いろいろ機能拡張してかなりのスパゲッティー状態になって、さらに手を加えるのは困難でしたから。一方でインフラもOSもバージョンアップでどんどん進化する。このシステムをずっとカバーしながらいい運用ができるのか、疑問しかありませんでした。もうこれを解決するには、パッケージ化された仕組みが必要だという答えに行きつきました。でも、だいぶ抵抗はありましたね。

MF主任:使い勝手の部分とかですかね。そうですよね。

JSUG福嶌:これまで、かゆいところまで手が届く仕組みでやっていましたが、会計や人事とかバックグラウンド系の業務というのは、どこの会社でも大体同じようなことをやっている。パッケージに合わせられるのなら、Fit to Standardでなるべくアドオンをせずに導入しようという方針を立てたんです。

IKグループリーダー:そうすると、今までのシステムが変わるという抵抗感と業務自体をシステムに合わせないといけない。2重のストレスがありますよね。

JSUG福嶌:そうですね。ただ、今後業態や会社が増えていく中で、独自のスクラッチシステムを横展開するのではスピード感にも欠けるし、費用も人員もいくらあっても足りない。これを解決するためにSAP製品の導入しかないと思いました。

IE次長:企業の成長・発展とシステム維持コスト、業務改革コストをどう考えますか?という目線合わせを経営陣としたということですか。

JSUG福嶌:そうですね。まず経営陣に対して、現システムの持続可能性の低さと、企業の成長スピードのために投資が必要だという考え方を理解していただきましたね。すぐに「じゃあ新たにかかるコストはいくらだ?」とかもいわれなかったですね。今のシステムをずっと維持・運用していったら、コストは掛け算で何倍にもなって膨らんでいくとか、ほかにもこんなに弊害が出ますというのを説明し、理解いただいた上で、その解決策がSAPシステムの導入ですと話しましたね。

IE次長:経営陣の理解とかリーダーシップはどんな感じだったんですか?

JSUG福嶌:SAP導入プロジェクトのリーダーは経理次長に就任してもらい、最高総責任者として副社長に入っていただきました。リーダーには現場への積極的な導入を後押ししてもらったり、経営層への説明は副社長が行ったりして、結構やりやすかったですね。

IE次長:経営層に味方とか応援団がいてコミットしてもらうのが1つコツということですね。
JSUG福嶌:はい。ただ考え方はしっかり持っていないと、いくら副社長がいるからといっても中身がないと稟議が通らない。ちゃんと考え方を整理して、みんなポリシーを持って共有しておく感じですね。

JSUG加藤:現場の導入プロジェクトは、我々情報システム部だけで仕組みの導入というのをやったわけでありません。むしろ、ユーザー部門、経理次長にプロジェクトのリーダーになっていただいて、SAPシステムに合わせて現場の業務プロセスも含めて改革していきました。現場の抵抗もありましたけれども、経理からも次長以外にも実務をよく分かっている経理社員をコアメンバーとしてプロジェクトに出して頂いて、その人達が業務プロセスの変更を自ら考えて、現場は説得をして、広めて変えていきました。

IE次長:参考になりますね。やはりユーザー側のリーダー、現場ユーザー同士の納得感が大事ですよね。

JSUG加藤:情報システム部門が主体で何かやっていくと、「現場知らないくせに」みたいに言われちゃうのでね(笑)。





お話しいただいたのはECC6.0を入れたタイミングで標準化のプロジェクトを推進したということですか。

JSUG福嶌:そうですね。SAPの検討自体は2009年ぐらいからプロジェクトを始めて導入完了したのは2012年です。

JSUG加藤:できるだけシステムのコア部分はアドオンせずに標準化していますけど、全くゼロというわけにはいきませんでした。SAPでは特に建設業界向けのアウトプットが弱かったり、ユーザーインターフェースの操作感とかちょっと入力ミスが発生しやすいところとか、そういったところはアドオンしています。

IE次長:アドオンは極力しないけど、必要な箇所にはお金をかけていくって発想は一つ共通認識になっているんですね。私たちも極力アドオンはやらないと決めていますけど、一定数はあるんですね。

JSUG福嶌:ちなみにアドオンが必要なときはアドオン審議会をやっています。本当に必要なのか議論する場を設けていますね。

IE次長:私たちも10年前の導入時には、デフォルトの入力画面が分かりにくいということで結局アドオンで作り変えました。私たちも全国合わせると最低でも数万の入力があるので、間違いが多くなって本部はすごいことになりました。当時、事務局をやっていて痛感したのはITリテラシーやスキルの差、それにハンコ文化など、これを乗り越えてDX化するには大きな労力を割いてもう1段上の社員教育とか意識レベルの変革が必要だと思っています。何かいい対策はありますか?

JSUG加藤:大和ハウスの場合は各事業所・支店の方に全国100カ所の経理の部署を置いています。また、拠点によっては経理だけでなく、入出金や小払い精算とかは現場での営業管理職がやっている事もあるので、似ている状況でしたね。




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