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基幹システム刷新プロジェクトをスタートさせたヒロセ電機様。
業務改革やシステム導入など、改革に向けた議論をする中で直面した
さまざまな悩みをJSUG S/4HANAクラウド部会のメンバーに相談しました。
ヒロセ・海賀さん:プロジェクトを進める上で、皆さんが大切にしているポイントを教えてください。
JSUG福嶌さん:体制面から話をしますと、言わずもがな責任者やリーダーが重要ですよね。弊社の場合、ERPの導入に関しては推進責任者というポジションは、情報システム部門でなくユーザー部門の人になってもらいました。プロジェクトには「現場を変える」という強い推進力が必要になります。業務改革、BPRを進める強い信念を持った人間に推進、発信してもらうべき。技術者ばかりたくさんいてもダメだなと。さらに言うと、役員に近い現場責任者がベストですよね。
ヒロセ・関さん:当社のSCM推進委員会には、製造部門や営業部門から、本部長、副本部長、役員クラスに入ってもらっています。そこに全ての情報を集約し、最終的な意思決定をしてもらっています。それでも現場からは、「現状できているのに、刷新後はなぜできなくなるの?」といった話が出てくることもあります。
JSUG都筑さん:全ての要望を叶えるのは困難ですよね。大切なのは意思決定力。当社案件でも、経理担当課長などよく業務を理解している人に、毎日のように意思決定してもらいました。しかも、本来なら100%の材料が揃ったところで判断したいだろうに、50~60%の材料でバンバン決めてもらっていました。慣れない作業で辛そうでしたが、それでも意思決定を繰り返すことでプロジェクトは前進していきました。「本当にまずい状況になったらそこだけピンポイントで変更する」など、対処法を予めいくつか決めておけば安心し意思決定でき、「ああでもないこうでもない」といった時間ばかりが過ぎていく議論を減らすこともできます。
JSUG酒井さん:現場の課長クラスは、業務フローやルールに厳格で、真面目ゆえにコンサバで抵抗勢力になる場合がありますね。だからといって業務をあまり知らないその上司がリーダーになると現場はついてこない。トップダウンで「変えていこうよ」というメッセージを発信し現場の心理的安全を確保しつつ、盛り立てていくことも大事ですね。
JSUG久下さん:スムーズにプロジェクトを進められるように、当社では、プロジェクトにおける「錦の御旗」を作ることを提案しています。とある会社では、錦の御旗、つまりプロジェクトのミッションとして、「日本と中国のサプライチェーンを向上すべく、情報連携をスムーズにしていくこと」を掲げました。プロジェクトが進んでいく内に、議論がブレたり、追加開発の声があがったりした時、錦の御旗に戻ることでスムーズな意思決定ができました。
JSUG都筑さん:経営トップから発信してもらうのも効果的です。弊社のプロジェクトでは、経営トップ2人が「私達が意思決定をしている」というメッセージを出してくれました。「スケジュール厳守」「変えていくということこそ正義」「100点でなくて良い。問題があっても最後は経営側が責任を取る。だから前に進め!」といったメッセージを定期的に発信してもらいました。それでも最初の方は、「本当にやるの?」と社員は半信半疑だったようですが、後半戦になると、トップからの言葉の効力が出てきて「ここで決めていこう」と変わっていきました。
JSUG酒井さん:現場が腹落ちしたら早いですね。
JSUG福嶌さん:正直言って、完全に腹落ちすることは難しいです。ですが、トップがきちんと承認し、信念を持ってやってくれれば、社員はついていくしかない。だから体制もトップからのメッセージも重要ですね。
JSUG都筑さん:大きなプロジェクトを開始すると、まずは人をかき集める会社がある。しかしながら、頭数だけ集めて会議室にたくさんの人と資料が並べてみても、何も決まらない。結局は、勇気をもって人数を絞ることが大切。全業務をわかっている人なんかいない。全体像を押さえている人にメンバーになってもらい、一部の業務に詳しい人にはスポットで入ってもらうなどの工夫が必要ですね。
JSUG久下さん:当社が関わったあるプロジェクトでは、現場の古株社員がNGを出すことが多かった。今までの染み付いたやり方やルールの議論ばかりになっていた。そこで、次世代を担う若手や問題意識を持っている人をメンバーに変更しました。「これからの会社の業務設計はあなたたちに任せる」と、古株社員任せにならないように舵を切れた会社のプロジェクトは上手くいっていますね。
ヒロセ・関さん:うちは古株+現状の業務をよく知っている人をプロジェクトメンバーにしています。くわえて、プロジェクト名を「次世代SCMプロジェクト」とし、“次の世代”に向けたシステムであることも伝えています。
ヒロセ・鎌形さん:皆さんの会社では、次世代を担う幹部候補の人たちといえども、日頃から課題認識がありましたでしょうか?
一同:いや、それがそうでもないのですよね。
JSUG久下さん:「あなたたちが自由に考えて良いよ。」と言ってあげてはじめて、自由に泳ぎ出してくれるものですね。
JSUG友利さん:やり方としては、まずは次世代を担うような若手・次世代メンバーで考案する。これで業務が回るか、ご意見番である業務責任者チームに披露する。業務責任者チームでOKがでたら業務責任者チームから今の現場チームに伝える。この3チーム体制を前提に、まずは若手に考えさせるのが良いと提案しています。
JSUG酒井さん:「改革マインドを持った人をプロジェクトに求む」と通知を出しても、改革人材は集まらない。だから「あなたの部署で改革マインドを持っているひとは誰?誰なら現状を変えていける?」と個別に聞いてメンバー集めをします。
ヒロセ・関さん:若手中心のチームが良くても、彼らだけですべては決められない。フロントは若手にしても、バックに「今とこう変わるけど大丈夫か」とアドバイスできる係長クラス以上のメンバーをつける案もありますね。
JSUG酒井さん:ちなみに、うちは若手というと部長が出てきますよ(笑)。
ヒロセ・関さん:50歳を過ぎると難しいかもしれないですね。今後も10、15年頑張る人という意味では四捨五入で40歳ぐらいまでが適齢ですかね。
JSUG久下さん:50歳を超えると、「わしが居る間に変なことをしてくれるな!」という人いますからね。(笑)
ヒロセ・鎌形さん:勿論、年齢だけではないですが、問題意識をもっていたり、会社を変えようと普段から思っていたりする人をアサインしたいですね。若手とベテランを組ませて、改革側としてコンサバな人たちに負けないように、意見を押し返せることが大事かなと。
一同:そうですね。
JSUG酒井さん:あとコンサルを上手に使うことも重要ですね。意思決定などの議論で煮詰まった時、「こんな時、他社ではどうやっているの?」とコンサルに聞くといいですよ。他社事例を示しながら「それをやっているのは御社だけです。」と言ってくれる。すると、「うちもこんな特殊な運用廃止しようよ。」と議論を前に進めやすい。
ヒロセ・鎌形さん:確かに。それはいい起用の仕方ですね。
JSUG酒井さん:コンサルの指摘で、世間標準な普遍的なルール・常識だと思っていたことが、会社独自のものだったことに気付くことがありますね。
ヒロセ・関さん:S/4HANAに機能がない=世の中の会社の多くはやっていないことなのでしょうね。業界の慣習とか昔からの仕組について、立ち止まって考えことは重要ですよね。
JSUG都筑さん: 今までの当たり前は、見直す機会が無かっただけかもしれないし、先人がガバナンスのために設けたものかもしれない。システム刷新の機会に改めて、確認、見直すべきですね。
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