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コベルコシステムのHI-KORTを活用し、SAP S/4HANAを構築
神戸製鋼所 エンジニアリング事業のデジタル化基盤を
大規模なFit to Standardで整備

エンジニアリングセグメントERP刷新プロジェクト

 

神戸製鋼所エンジニアリング事業部門(以下神戸製鋼所)は、基幹システムのデジタル化が遅れていた。海外企業の多くが、すでに基幹システムのデジタル化を進めていることや、データ活用が可能であることと比較すると、旧態化していることは否めなかった。焦りを感じていたちょうどその頃、海外企業との取引において、デジタル連携が必須となる場面を目の当たりにしたこともあり、基幹システムのデジタル化は喫緊の課題となったのである。

こうした背景から始まったのが、エンジニアリングセグメントにおけるERP刷新プロジェクト、通称「エンジERP刷新PJ」だ。プロジェクトは2021年に開始されたが、それ以前の2019から2年間、エンジニアリング事業部門全体のデジタル化に向けた構想策定フェーズを入念に行った。この間、経営層および現場部門に対して業務改革とデジタル化推進の意味を「腹落ち」させ構想策定を実施した後、業務部門・IT部門一体となった形でプロジェクトを推進している。



プロジェクトの成功のポイントは入念に行った構想策定フェーズ

 

神戸製鋼所がベンダーとして選んだのはコベルコシステムだが、グループ会社だから選定したわけではないと石本氏はいう。構想策定フェーズで決定した基幹システムの刷新方針において、SAP S/4HANAの採用と、汎用業務をシステムに合わせる標準化、いわゆるFit to Standardを実施することに決定していたため、ベンダー選定はSAPシステムのプロフェッショナルに任せたいと考えていた。これに基づき神戸製鋼所はRFPを発行し、集まった提案を選定。このなかで評価基準に比べて良い提案であることと、SAPプロジェクトに関する豊富な実績があることから選ばれたのがコベルコシステムだったのだ。そしてコベルコシステムはプレ要件定義から参画し、プロジェクトのサービスインまで、3年間伴走した。

プロジェクトは成功を収めた。これまで会計と調達業務でSAP ECC6.0、その他の領域は自社開発のスクラッチシステムを利用しており、業務プロセスの標準適用率は6%程度に留まっていた。しかし本プロジェクトを通して、新たな基幹システムでは会計・調達に加えて、営業やプロジェクト管理にまで領域を広げたうえで、コベルコシステムの製造業向けSAP S/4HANAテンプレート“HI-KORT”をベースに80%もの標準化を達成している。

標準化の成功要因について石本氏はこのように語る。「成功の要因は構想策定において経営層から現場までが一体となって進めたことです。関係者への課題ヒアリングを通してAs isとTo beのギャップを一つずつ理解しながら進めた結果、各々が当事者意識をもって“なぜ基幹システムを刷新するのか”という目的を共有することができました。また各現場で部分最適が進みすぎていることで、デジタル化のために必要な全体最適を妨げてしまっているという問題点を、構想フェーズでしっかりと可視化できたことで、業務標準化という大きなハードルを超えられました」


 

もうひとつの成功要因コベルコシステムと「人」

 

プロジェクトにとって重要な要件定義、そして外部・内部設計を行っている頃、プロジェクトの前に立ちはだかったのが、新型コロナウイルスだ。コミュニケーション手段が制約され、プロジェクトの遅延も覚悟していた。

しかしコベルコシステムは、オンラインでの打ち合わせと現場での打ち合わせを組み合わせるなど、試行錯誤を重ねながら神戸製鋼所と十分なコミュニケーションを図った。

また、旧基幹システムの運用・保守を担当していたアウトソーシング部門とも常に情報連携をしながら進めたことで、大きく遅延することなくSAP S/4HANAへの移行が実現した。こうした密なコミュニケーションの積み重ねを通じてコベルコシステムを「人」として大いに信頼できたと石本氏は振りかえる。

もちろんシステム構築の品質においても大きく評価している。例えば受け入れテストにおいて見つかった不具合は、軽微なものがわずか5件だった。「高品質な基幹システムが構築出来たのは、コベルコシステムがSAPシステム導入において多くの実績を持つ、プロフェッショナルであったことが大きい」と石本氏は語る。

またプロジェクトの進捗管理を行っていた坂口氏は、「要件定義フェーズから一貫して進捗管理の抜けや漏れがなく、常にオンスケジュールであったことから、“引き続きよろしく!”とだけ伝えることがほとんどでした」と、笑顔で語った。

改めてプロジェクトの成功要因を尋ねたところ、「経営層から現場まで目的を腹落ちさせ、トップダウンで実施したこと、業務部門とIT部門が一体となって実施したこと、そしてSAPシステムの専門家であるコベルコシステムと密接なやり取りでプロジェクトを進められたことです。社内も社外も成功要因は“人”ですね。」と石本氏は話す。信頼できる「人」が集まった結果、当初掲げた品質・コスト・スケジュールを外すことなく、計画通りにエンジERP刷新PJを完遂できたのである。



現れ始めてきたデジタル化や高度化の成果

 

本プロジェクトは、検証や教育フェーズを経て2024年4月に稼働を開始している。なおこの新たな基幹システムは社内において通称「Kobelco-SAP」と名付けられた。

運用・保守については、これまでエンジニアリング部門と本社・電力事業部門で個別に実施していたが、本プロジェクトを経て、これら部門のシステムがワンインスタンスとなったことに伴い、体制を変更。2年間かけて計画を立案し、部門横断でコベルコシステムが担う体制にしたことで、稼働後も大きな満足感を得ている。本番稼働後は、新たな業務プロセスとシステムに慣れる時間が必要であったものの、月次決算や四半期決算といった業務を行うにつれ、5ヶ月が立った頃には使う側の練度も上がった。

業務プロセスのデジタル化の土台が完成したことで、プロジェクト管理や業務管理の効率化・高度化といった効果が出始めている。基幹システム刷新の目的の一つでもある「クイックな意思決定の実現」について坂口氏は「経営に関わる数値を見たいとなった場合、これまでは経理に依頼してデータを作成してもらい、数日掛かっていました。旧システムでは散在していたデータがSAP S/4HANAに一元化されたことで、いまでは自分でシステムを使い10分で出せます。目的は確実に実現しつつあります」と、実感を語る。

「変化のめまぐるしい昨今において、従来通りのやり方ではついていけません。いかに生産性を上げてアウトプットできるかという点では業務を変えていく必要があります。今回のプロジェクトは単なるシステムの刷新ではなく、業務プロセス全体を変える潮流を生み出すという効果もあったと思います。」(坂口氏)



コベルコシステムの伴走はステージ1からステージ2へ

 

石本氏は今回完成した新たな基幹システムを、身体で言えば体幹であると表現する。強い体幹を実現できたからこそ、今後は手足となるデジタライゼーションを実現できるのである。

そして神戸製鋼所は、今回のプロジェクトをステージ1と位置づけ、すでにステージ2に進んでいる。具体的にはEPC(設計、調達、建設)やO&M(操業、保守)といった分野について、デジタル化を進めているのだ。このステージ2に関してもSAP S/4HANAとのデータ連携などを行う際には、コベルコシステムの技術力を発揮してもらえるだろうと期待を寄せる。



導入企業

 

株式会社神戸製鋼所


創立:1905年9月1日

設立:1911年6月28日

資本金:2,509億円(2024年3月31日現在)

従業員数:連結 38,050人(2024年3月31日現在)

     単体 11,534人(2024年3月31日現在、出向者を除く)

パートナー企業

 

コベルコシステム株式会社



URL: https://www.kobelcosys.co.jp/

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