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「SAP S/4HANA」バージョンアップに対する課題を
最先端プロセスマイニングツールで徹底的に可視化
三菱電機エンジニアリング株式会社が目指す“変革へのファーストステップ”

SAPコンバージョンに向けた悩み「そもそも課題はどこにあるのか?」

 

身近な生活家電から宇宙開発にまつわるプロダクトまで、社会のあらゆるシーンで活躍する製品およびシステムの設計・開発を手掛ける三菱電機エンジニアリング株式会社(以下、MEE)は、現在稼働している基幹システムの次期バージョンアップに向けて、標準化による業務変革を目標として見据えた「業務改善ライフサイクル基盤(BPM)」の構築プロジェクトに取り組んでいる。

MEEは2022年にリアルタイムな経営情報の可視化と迅速な意思決定、業務プロセスの標準化・最適化、内部統制・コンプライアンスの強化等を目指し、一部領域においてSAP社の基幹システム「SAP S/4HANA」の稼働を開始させた。これにより、たとえば電帳法の対応においては販売・購買・会計領域のワークフローを共通システムとして再構築することで、業務負担を軽減させる仕組みを実現。また、多くの業務フローを標準化することで、月次決算に関わる日数短縮やガバナンスの強化など、一定の導入効果を得ることができたという。

現行ERPの導入は当初、アドオン開発を行わずに「Fit to Standard」の形を目指して進められた。しかし、同社では事業所ごとに生産するプロダクトや部品も異なるうえ、事業所の数も非常に多い。そのため、導入過程でやむなくアドオン開発も必要になった。加えて、同社ではSAPソリューション以外のシステムが担っている業務プロセスもあり、現行の基幹システムだけでは経営資源を完全に把握できない、という課題も生じていた。

このような状況の中、MEEを待ち受けているのが、2025年にサポート終了となる「SAP S/4HANA」のバージョンアップ検討だ。MEEとしては、「ERP導入時に構築した業務フローが適切だったのか、十分に活用できているのか、アドオン開発の内容は適正なのか」といった課題を洗い出し、運用コストの低減を含めたうえで、バージョンアップを検討する必要があったのだ。

MEEは、現行の基幹システムの運用を「評価」するために、まず業務部門へのヒアリングを中心に調査を開始。しかし、そこでは現行業務フローを前提とした改善要望が集まり、客観的な業務運用の評価は難しかった。

そのため、第三者に意見をもらうことも含め、業務評価を進める手法の調査に着手した。



大規模な改善が必要なのかを判断するために「SAP Signavio」の導入を決意

 

改善ポイントの洗い出しのため情報システム部の一之瀬貴宏氏は、「プロセスマイニング」の手法を活用することにした。「プロセスマイニング」とは、従業員が使用しているシステムやアプリケーションのログを分析し、業務プロセスを可視化することで、現状を把握して業務改善に活用する手法のこと。

そしてそのためのツールとしてSAP社が提供する業務プロセス管理ソリューション「SAP Signavio」(以下、Signavio)の導入を決断したのだ。

Signavioは、業務フローの改善や簡略化を支援するためのツール。ビジネスプロセス全体を可視化したうえで、ボトルネックとなっている部分を洗い出してくれる。同製品では、大きく分けて業務プロセスの「➀分析」「➁設計」「➂共有」の3つのモジュールが提供されており、MEEは、プロジェクトの第一段階として、「分析」モジュールの「SAP Signavio Process Insights」(以下、Insights)と「SAP Signavio Process Intelligence」(以下、Intelligence)の機能を用いて、課題抽出およびマイニングに向けて取り組んだ。

Signavioを採用した背景について、一之瀬氏は次のように語る。「ERP導入を乗り越え、ようやくSAPソリューションで業務を回せるようになりました。そんな状況のなか、全社規模の業務改善プロジェクトをもう一度立ち上げ、多大な工数を割いて改善点を見出していくというのは、望んでいたやり方ではありませんでした。求めていたのは、そうした大規模な改善プロジェクトが本当に必要なのか、そして現状の運用に具体的な課題が存在するのかを客観的に評価する手段です。そこでプロセスマイニングの手法およびSignavioの存在を知り、プロジェクトに最適だと判断しました」。

Signavioの導入および分析支援を行っているのは、日本企業では初となる「RISE wirh SAP」のプレミアムサプライヤーとして、数多くのSAPオファリングを提供している富士通株式会社。MEEが同社を選択した理由としては、他社がツールの使い方やプロジェクトの進め方の支援に重きを置いているのに対し、「富士通は分析自体をサービスとして提供している点が大きなポイントだった」と一之瀬氏は話す。また、MEEには本プロジェクトだけでなく、SAP社のベストプラクティスに基づいた業務フローの評価や、アドオン開発の精査も併せて実施したいという要望があった。その点、富士通にはSAPソリューションに対して高い実力を持つメンバーが参画し、プロセスマイニングと連動して業務評価や課題抽出を行うことができるのも、選定の大きなポイントになったという。



多彩な機能やコネクタ、アクセラレーターによって、短期間での課題抽出に成功

 

実際のプロジェクトでは、MEEのシステム内ログデータを活用して分析を行い、抽出されたデータに基づいて業務フローを可視化することで、現行プロセスにおける課題を整理する手法を採用。具体的には、可視化された業務プロセスをもとに客観的なデータを業務部門と連携し、課題抽出と改善策の検討をセッション形式で進めていった。

アプローチとしては、まずは簡易アセスメントとして、SAPの標準テーブルのログデータをInsightsに連携し、現行の業務パフォーマンスを迅速かつ簡易的に可視化。その情報をベースに、課題点についてディスカッションを行い、詳細な分析が必要な業務領域を選定した。

次にSAPの標準テーブルに加えて、アドオンも含めたログデータをIntelligenceに取り込み、プロセスマイニングを実施。そこで可視化された各プロセスの業務フローをもとに、サイクルタイム(例:伝票作成や承認にかかる時間)やプロセスのバラつきを把握し、ディスカッションを行うことで、根本的な課題を特定する。最後に抽出された課題を整理し、次期基幹システムの理想的な姿を検討していく、といった流れだ。



通常であればデータ収集から分析、改善案の作成までに多くの工数・時間がかかってしまう。しかし、Signavioを活用することで、Insights WSのPoCでは1カ月間という短い期間で必要な情報を取得することができた。その効果について、一之瀬氏は「業務改善プロジェクトを立ち上げる際、まずは指標となるKPIを設定しなければなりません。ですが、そもそもKPIを定めること、そのデータを収集し見えるようにするための準備に多大な労力が必要です。その点、Intelligenceのマイニングツールでは、豊富なコネクタやアクセラレーターを活用することで、何をKPIとすればよいのか、どこに課題があるかといった指標を素早く出すことができました」と評価する。

同時に、客観的で具体性のあるデータを取得できたことで、事業所との円滑なコミュニケーションが実現されたことも、Signavioを導入した大きな効果だとしている。



一過性でない、社内のライフサイクルとして業務改革を行える組織づくり

 

現在、販売・購買領域の簡易アセスメント・詳細分析が完了しており、今後は会計領域へと分析範囲を拡大していく予定。そして、これらの分析結果をもとに、業務部門と協力しながら課題解決策を選定し、最適な基幹システムやデジタル基盤の構築を目指している。また、この一連の取り組みを単発のプロジェクトで終わらせるのではなく、継続的に改善プロセスが回るライフサイクルとして定着させるために、仕組みやルール(組織体制も含む)の整備を進めているところだ。

中長期的な狙いとしては、情報システム部門がデータをリファレンスとした業務の可視化手法やスキルを身につけ、業務部門に対して課題を提起し、改善策を討議する能力を高めることも視野に入れている。これにより、現場部門と一体となって業務改革を円滑に推進できる体制を構築し、より強力な経営支援体制を実現することも目標としている。

今後もMEEと富士通による業務改革に向けたチャレンジは継続されていくが、一之瀬氏は両社のパートナーシップについて、次のように語る。

「Signavioから得られた内容は各部門と共有し、今後もKPIをもとに各プロセスを深掘りして分析し、業務改革を進める体制を整備していく予定です。

そうした活動を社内のライフサイクルとして根付かせていければと考えているので、富士通様にはそのサポートをぜひお願いしたいと思っています」

導入企業

 

三菱電機エンジニアリング株式会社


設立:1962年2月1日

資本金:10億円

従業員:5,496名(2024年4月1日現在)

売上:1,159億円(2023年度)

パートナー企業

 

富士通株式会社



URL:https://www.fujitsu.com/jp/sap

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