ToBeプロセスを志向した業務改革を実現するため
日立ハイテクがFPTジャパンと共に実施した
海外拠点のSAP S/4HANA Public Cloudロールアウトプロジェクト
ToBeプロセスを志向した業務改革をSAP S/4HANA Private/Public Cloudで実現する
全社プロジェクトとしてDXに取り組んでいた日立ハイテクは、ToBeプロセスを志向した業務改革として、それに相応しいシステムの導入を進めてきた。
本取り組み前に、同社では既にSAPシステムを導入していたが、オンプレのERPにアドオンを併用していたため、運用負荷も高く、バージョンアップにも影響を及ぼすという課題を持っていたのだ。こうした背景から、本社にはSAP S/4HANA Private Cloudを、海外拠点にはSAP S/4HANA Public Cloudを導入し、どうしても開発が必要な場合にはSAP BTP上でside by side開発を行うことで「クリーンな環境でのERP導入」を目指したのである。
海外拠点に対してSAP S/4HANA Public Cloudを選んだ理由は、短期間で導入と展開が可能であることと、SAP S/4HANAの機能を最大限に活用してFit to standardを目指すという、同社の方針にマッチしたからだ。あえてアドオンを開発できないSAP S/4HANA Public Cloudを選んだのも、標準化を前提としているからに他ならない。また、常に最新のテクノロジーを用いて業務を行うという、日立ハイテクが目指す「ToBeプロセスを志向した業務改革」に相応しいERPシステムという点だ。SAP S/4HANA Public Cloudは定期的なバージョンアップを前提としており、またそれと同時に提供される最新機能を速やかに利用することができる。
海外拠点を標準化するロールアウトプロジェクト
海外拠点へのロールアウトプロジェクトは、アメリカ、ヨーロッパ、中国、シンガポール、マレーシアなど、全体で16カ国への展開を行っており4年ほどで完了する予定である。
プロジェクトではまず、SAP標準シナリオのうち最初の拠点に向けてベースになるシナリオとコンフィグを確定させ、導入手順を整理、これ以降はこのWBSをベースに短期間での他拠点ロールアウトを目指した。
ロールアウトからはFPTジャパンホールディングス(以下FPTジャパン)が共に行った。最初にIT部門が組織などを定義し、サンプルデータを投入。その後ユーザに対してデモやディスカッションなどを行うとともに、ハンズオン形式でSAP標準シナリオの説明を行い、プロセスを習得させるという流れで行っている。
初期導入拠点であるアメリカなどでは長く掛かったものの、徐々にプロジェクト内にノウハウがたまり、後半に進むにつれて短くなった。一方で新しい仕組みになることにユーザは不安を持っているはずだとして、丁寧な教育を重ねている。
従来のERPシステムにはアドオンが存在したが、今回はノンアドオンを前提に標準化を進めたため、当然困難が予想されたが、さまざまな工夫でこれを乗り越え成功している。
成功の要因の一つはシステム主動でプロジェクトを進めなかったことだ。海外拠点で実際に業務を行っている人たちからすれば、「やりやすい業務方法」が確立されていたはずであり、これをいきなり変えると伝えても、納得は得にくいと考えたからである。まず各業務のトップに入ってもらい、「新しい日立ハイテクのやり方はFit to standard前提で本社も同様」ということを浸透させた。そしてアドオン審議にも多くの時間を割いている。業務部門のトップと共に、必要性をしっかりと議論していったのだ。
このようにDXプロジェクトとFit to standardという取り組み、考え方をマインドとして丁寧に浸透させた結果、プロジェクトは成功したのである。
プロジェクトを成功に導いたのはFPTジャパンの連携力とチャレンジ精神
FPTジャパンは、当初は稼働後のAMS運用に関わっていたが、保守運用を通して評価が高まり、ロールアウトプロジェクトへと範囲が広がったのである。FPTジャパンを選んだ理由は大きく4つ。まず日英、どちらの言語でもスムーズなコミュニケーションが行える点だ。これについて安田氏は「多数の海外展開を行う場合、日英どちらかでのコミュニケーションでは足りません。日英どちらもできるFPTジャパンには助けられました」と語る。
次にリソースの調整、特にプロジェクトの状況に合わせてふさわしい人材の増員が柔軟に対応できる点が評価された。今回のプロジェクトでも、クイックな増員やフェーズに応じたリソース調整などで大いに助けられている。
3つ目はFPTジャパン社内の連携が優れている点だ。今回のプロジェクトでFPTジャパンは、日本とベトナムのサイト、コンサルチームとデータ移行チーム、これに加えてForm/BTP開発チームが参加しているが、それぞれが局所的ではなく、全体感を持って取り組んだことを高く評価している。なおプロジェクト中に入れ替わったメンバーもいたが、引き継ぎが丁寧でスケジュールに支障をきたすようなことはなかったというから、組織間連携のみならず、チーム内での連携もスムーズであることがうかがえる。
最後に特に評価しているのは、FPTジャパンのチャレンジ精神だ。最新の技術分野を含む今回のプロジェクトにおいて、FPTジャパンにも当然実績のない分野もあったが、理解しながら一緒に進みたいと申し出ていたのだ。
最新テクノロジーを活用した取組みでは、それをサポートできるベンダーの発掘が困難なケースもあるが、今回はFPTジャパンの「新技術に取組む姿勢」に助けられたケースも多々あったと宮脇氏は語る。
「FPTジャパンは常にプロジェクト全体を見ています。その上で“今これを準備しなければ間に合わない”などの指摘をしっかりと伝えてくれ、また“終わらせること”に対する責任感も強い」と宮脇氏は振り返っている。
常にピークの状態で利用するためFPTジャパンと共に新たな取り組みを目指す
2024年度は、10月稼働予定の中国展開Wave1とインドネシア展開があり、その後は中国展開のWave2、インド展開など控えているが、これらに関しても引き続きFPTジャパンが支援する。
今年度で海外展開は完了するが、これで終わりではないと宮脇氏はいう。構築直後にピークを迎えるシステムではなく、最新のテクノロジーをタイムリーに適用しビジネスをサポートし続けるサイクルを確立するため、SAP S/4HANAのバージョンアップで得られる新機能を今後も積極的に活用していくからだ。なおSAP S/4HANAの新機能利用については、現在体制づくりをしている段階ではあるものの、中川氏は「年に2回、自動でバージョンアップするため、新機能が実装されたタイミングでユーザに紹介し、積極的に使っていきたい」と展望を語った。
新しい技術の利用もすでに視野に入っている。例えばSAP S/4HANA領域におけるAIの活用も検証を始めており、現在FPTジャパンとともにSAP Build Codeの評価に着手していて、AIアプリなどの開発にも取り組むとしている。
日立ハイテクは、常にピークの状態でシステムを利用するための、新たな技術を取り入れるパートナーとしてFPTジャパンを選んだ。両者の取組みは近い将来、新たな事例として紹介できるはずだ。
FPTジャパンのSAP S/4HANA Public Cloud FixPrice導入サービスをリリース
本件を含めSAP S/4HANA Public Cloudの導入経験を元に国内外の小規模拠点へ短期間、低コスト、FixPriceで導入するサービスをリリースしました。
詳しくは以下のリンクでご紹介します。
URL:https://fptsoftware.jp/services/it-services/sap/s4hana/cloud-public-edition-fixed-price-model/
導入企業
株式会社 日立ハイテク
設立:1947年4月12日
資本金:7,938,480,525円(2024年3月31日現在)
従業員数:連結15,083名、単独6,657名(2024年6月時点)