
SAP BTP領域の開発を含めた柔軟な伴走支援。
東海エレクトロニクスがCTCと挑む
クラウド環境での最適な運用術とは?
業務プロセスの最適化を目指し、クラウド版「SAP S/4HANA」を導入
電子デバイスや半導体デバイス、高機能材料の開発・販売をはじめ、ソフトウェアや組込モジュールの開発・提供、さらには社会インフラ向けシステムの設計・販売など、幅広い分野で事業を展開する東海エレクトロニクス株式会社および子会社である東海オートマチックス株式会社と東海テクノセンター株式会社は、SAP社のSaaS型ERP「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」を導入。2024年10月より稼働を開始している。導入パートナーは、徹底したFit to Standardアプローチでの成功事例を積み重ねる、株式会社シグマクシス。その運用・保守サポートを担当するのが、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)だ。CTCは1996年にSAPビジネスを開始し、長年にわたり開発・運用の実績を積み重ねてきた。その豊富な経験を活かし、上流工程から保守・運用まで一貫したサービスを提供し、多くの企業の安定したシステム運用を支えている。
東海エレクトロニクスは、従来の基幹システムとしてSAP ECC6.0を運用していた。しかし、2025年にSAP ECC6.0のサポート終了が予定されていることを受け、SAP S/4HANA Cloud Public Editionへの移行を検討。その背景には、システムの老朽化や個別最適といった課題があったという。
「当社では長年SAP ECC6.0を使用してきましたが、導入からかなりの時間が経過しており、当時の事情を把握しているメンバーが現在在籍していません。さらに、部門ごとに異なるオペレーションが定着しており、ノウハウを共有できない状況でした。そこで、まずはサポート終了を機に一度自社を取り巻くシステムを、現行メンバーでしっかり理解できるように再整備していく。そして、SAP S/4HANA導入時にFit to Standardアプローチを徹底することで、部門間におけるオペレーションの差をなくし、業務プロセスの最適化を目指そうという結論に至りました」(IT推進課課長・土井氏)
同社は2023年度から2025年度にかけて中期経営計画「Move for Future 2025」を掲げ、その中で「業務プロセス改革」と「情報インフラ強化」を重要な方針として策定。Fit to Standardを用いた業務の統一化と効率化は、企業の成長と競争力強化に向けて不可欠な戦略の一つだった。
PJを進めるうえでは、次のような点を特徴として、チームメンバーを構成していったという。
「基幹システムの変更という全社に影響するPJのため、営業本部長がPJ責任者、営業の役員がPMとしてプロジェクトに参画いただきました。営業の現場が主体となって推進できたことが、Fit to Standardの実現につながった大きな要因の一つだと考えています」(IT推進部部長・石田氏)
CTCが保守・運用を担当。柔軟な料金体系も魅力
東海エレクトロニクスでは、導入後に自社IT部門が主体となって運用・保守を行っていくにあたり「SAP ECC6.0の知識を持つ者は一定数いたものの、パブリッククラウド版のノウハウが不足していた」と当時の課題を振り返る。たとえば、SAP S/4HANA Cloud Public Editionでは、半年ごとのバージョンアップが必須となる。システムが常に最新の状態に保たれるメリットがある一方、ノウハウを持つ運用担当者がいない場合、アップデート対応が遅れるケースも少なくない。そのため、東海エレクトロニクスもバージョンアップに対応できるサポート体制も重視しながら、コストの最小化、組織変更に関する対応工数の削減を念頭に、運用・保守を担うパートナーとして、豊富な実績を持つCTCに依頼し、サポートを決断した。
また、SAP S/4HANA導入に際し、東海エレクトロニクスは「Side-by-Side」方式で業務機能を追加・変更を実施。基幹システムにアドオンを加えず、クリーンコアを維持する方針を採用した。そのため、一般的な運用支援にとどまらず、Fit to Standardを前提とした統合クラウドプラットフォーム「SAP BTP」領域の開発を含めた伴走型サポートを提供するCTCは、まさに最適なパートナーであった。
お客様の成功や成長を伴走型で支えるCTCの「SAP S/4HANAカスタマーサクセスサービス」では、SAP BTP領域を含む幅広いサポートを提供し、軽微な開発にも柔軟に対応する。契約時間は10時間、20時間、30時間、40時間から選択でき、3カ月ごとに見直しが可能。さらに、月間契約時間の50%を上限とする仕組みにより、企業の運用スタイルに寄り添った柔軟な契約を実現している。この体系について土井氏は「時間単位で精算できるのは、柔軟性という意味で非常に魅力的だった」と評価する。
また日々の運用では、障害調査やアップグレードの影響調査、月末・年度末処理に関する問い合わせ対応をはじめ、支払い条件や購買グループ、営業グループの追加といったパラメータ設定にも対応。標準機能に関する不具合についてSAPへ直接問い合わせを行うOSSサポートも用意されており、よりスムーズな運用を実現できる。さらに2月と8月のアップグレード時には、事前に範囲を決めたうえでテストを実施し、必要に応じてAPIの置き換えや修正などの変更対応を行う。そしてSAP BTPを活用した追加機能の開発や帳票開発といった小規模な開発にも対応できる点も、慣れないシステムを運用する面で非常に頼りになる。石田氏は、CTCの伴走支援サービスに関して、次のように評価する。
「今回はSide-by-Side開発を実施し、SAP BTPの『Integration Suite』を採用しました。その中で当社からCTCにお願いしたのが、すべてのSAP BTP開発を任せるのではなく、当社の担当者も開発できる環境を整えてほしいという点です。その結果、IT推進部でも実際に開発に携われる体制を整備する
ことができました。これは、SAP S/4HANAだけでなく、SAP BTP領域の知見を豊富に持つCTCだからこそ実現できたと考えています」


「Integration Suite」を活用し、自社でSAP BTP領域の開発を進める東海エレクトロニクスが採用したSAP BTPの機能「Integration Suite」は、SAP社をはじめとするさまざまなシステム間の統合を実現するツールだ。同社はIntegration Suiteを活用することで、受発注や外部倉庫管理で使用するED(I 電子データ交換)機能のほか、購買伝票を一括で取り込める機能などを、自社で段階的に開発を進めている。Integration Suite導入による効果について、IT開発課課長・青木氏は次のように語る。
「たとえば旧システムでは、外部連携時にエラーが発生しても、エラーの発生自体しか把握できませんでした。しかし、Integration Suiteではエラーが発生している箇所を正確に特定できるようになり、開発時の調査が格段にスピーディになりました。さらに、機能の変更を行った際にバージョンが自動的に更新されるため、管理の手間が大幅に削減され、運用の効率化にもつながっています。今後は、現在利用しているSAP以外のツールも、SAP BTP内に統合できるようにしていきたいと考えています」
CTCによるSAP BTP領域を含めた運用サポートにより、自社にノウハウがない状況でも、SAP S/4HANAの安定した活用を実現している東海エレクトロニクス。同社はCTCとの協業に対して大きな期待を寄せているようだ。
「CTCは伊藤忠商事グループのシステム関連企業として、他のベンダーよりも『商社のシステム』に対する深い理解をお持ちだと考えています。これまで伊藤忠商事グループ全体で多くのSAPソリューションを取り扱ってきた実績もあり、その豊富な知見を活かし、さまざまな観点からアドバイスをいただけることを期待しています」(石田氏)
※SAP、SAPロゴ、記載されているすべてのSAP製品及びサービス名はドイツおよびその他の国におけるSAP SE(又は SAPの関連会社)の商標もしくは登録商標です。
※記載されたその他すべての製品およびサービス名は、それぞれの企業の商標です。
導入企業

東海エレクトロニクス株式会社
創業:1945年10月1日 設立:1955年5月24日
資本金:30億7,539万6千円
社員数:380名(連結)(2024年3月期)
パートナー企業
