ビジネスエンジニアリングが考察する
VUCA時代における企業間連携の「今」と近未来に向けた
サステナビリティな関係構築のために取り組むべきこと:前編
VUCA時代と呼ばれる昨今、サプライヤーとの関係性はより一層重要視されています。そんな中、SAPテクノロジーを活用して企業間連携の強化を目指す企業も増え、私たちビジネスエンジニアリング(以下B-EN-G)も、ERP導入や周辺ソリューションとの組み合わせで製造業のお客様のサプライチェーン課題を解決するべく、共に取り組んでまいりました。
今回は「SAP Innovation Day」で行った講演を前後半にわけ、前半として、B-EN-Gが見た「これまで」と「今やるべきこと」として「サプライチェーン・コラボレーション」を中心に紹介いたします。また後半では、「少し先の未来」として、欧州で始まった企業間ネットワーク「データスペース」がどのような影響を及ぼすのかについて、SAPジャパンとともに考察します。
SCM高度化に向けた日本企業と欧米企業の取り組みの違い
変化の激しい時代が到来し、サプライチェーンマネジメント(以下SCM)はさまざまな課題に直面しています。例えばグローバルレベルでの不確実性の高まりや、モノ売りからサービス売りへの転換などがあり、「いつかやらねば」という課題が「いますぐやらねば」に変わりつつあるのです。解決には、マスカスタマイゼーションの加速に伴う多品種少量形態へのシフトや、経験則では予見できない市場変化や供給網混乱の常態化への対応、そしてSCM人材の不足に向けた生産性向上などがあり、まさに待ったなしの状況といえます。
こうした状況に対し、多くの日本の製造業がSCM改革に取り組んでいます。まず組織の改革として各経営指標に対する役割や責任・権限を見直しや、SCMに対する各部門別のKPIを再設計などが行われ、またプロセス面でも、属人化された業務の廃止や、プロセス標準化に加えて用語の統一を推し進めています。
ソフトウェアにおいても改革は行われています。例えばシステムの導入により業務精度の向上を目指すことや、低価値な作業をITで自動化する、AIや機械学習で新たな気づきを得るといった試みです。最後にフィジカル面でも、人の作業をロボットに置き換え安全性を確保したり、品質や安全を保証するためにトレーサビリティ管理を実施したりと、さまざまな改革に取り組んでいるのです。
しかしグローバルに目を向けると、取り組みに大きな違いがあることがわかります。日本企業が社内に向けた改革に取り組む一方、欧米の先進企業は社外に向けた改革を中心に取り組んでいるのです。例えば社外とのエコシステムを構築したり、サプライチェーンリスクを可視化したり、また複数のシナリオプランプロセス、特に下振れプランを実現していたり、さらにサプライヤーとの共有やコミットにおけるリードタイムの短縮を実現するといった取り組みを行っています。ガートナーが2010年から毎年発表しているサプライチェーンのトップ25企業に、かつて製造業大国といわれた日本企業の名前がないことは、こうした取り組み方の違いも原因の一つだと私たちは考えています。
もちろん日本企業はこうした状況を、ただ指を加えてみているだけではありません。すでに進められている3つの先進的な試みをキーワードとともに紹介しましょう。
まず、Parallellです。パンデミックや災害時に起こる需給ブレイクに対し、人海戦術に頼らずに競合に勝てる仕組み作りで、名前が示すように、並列業務を確立することでEnd to End SCMシステムの構築を目指します。次にConnectです。調達業務をクラウドツールで運用し、調達業務における取引先とのシームレスな連携=Connectを実現し、価格交渉やサプライヤー開拓といった高付加価値業務へのシフトを目指します。3つ目はData Driven=データ活用です。SCMのシステム化やデジタル化によって蓄積したデータを活用し、「千里眼」と「未来視」を実現しつつあります。
SAP Business Networkを活用した「内から外へ」の具体的な施策
これまで紹介したように、社内に向けての改革だけでは真のEnd to Endのビジネスプロセスを確立することは難しいといえます。例えばERPを導入して社内の最適化は済んだものの、社外との連携部分については手を付けられていないといった日本企業は少なくありませんが、一方でビジネスの多くは社外にある情報で成立しているため、早急な対策が必要なのです。
改革を内から外へと進め、変化に強いサプライチェーンを実現するためには、ERP導入による会社業務の改革に加え、外部コラボレーションの強化を実現する必要があります。まず自社業務の改革はSAP S/4HANAが担い、計画から実行までのさまざまな業務プロセスを標準化してデジタル化を推進することで、サイロ化を解消し生産性を向上させます。一方の外部コラボレーションの強化を実現するのが、SAP Business Networkです。
SAP Business Networkはサプライチェーン・コラボレーション(以下SCC)を実現し、サプライヤーとの連携も含めた業務標準化やデジタル化を進め、情報伝達の自動化や迅速化、そして無駄な作業の排除を実現します。購買・計画・在庫・品質プロセスにおいてもサプライヤーと連携できるほか、SAP Integrated Business Planning(SAP IBP)やSAP Aribaソリューションとも連携できるため、バイヤーとサプライヤーとのシームレスな相互連携を実現可能です。
もし外部コラボレーションを従来のEDIで実現しようと考えると、さまざまな問題に直面します。例えばEDIは導入に開発が必要で、当然運用も必要となります。サプライヤーごとにIDを登録するといった実装作業も必要であり、ERPや他システムとの連携にも開発が必要です。一方のSAP Business Networkは、広範囲なプロセスが標準で提供され開発の必要はありません。サプライヤーの追加も無料でのID登録が可能で、SAP標準コネクタによるERPとの連携や、SaaSによる外部システム連携なども備わっています。これに加え、SAP Business Networkは800万社の参加する世界標準のサプライチェーンネットワークですから、これに参加できることも「内から外へ」を考えた場合に大きなメリットとなります。
サプライチェーンを取り巻く「少し先の未来」キーワードは「データスペース」
B-EN-Gは、SAP Business Networkに私たち独自の導入方法論を組み合わせ、スピーディーにバイヤー企業とサプライヤー企業のサプライチェーン・コラボレーション環境を構築できます。サプライチェーン・コラボレーションの構築により、サプライチェーンのトップ25企業に日本企業が入る日も近 いと考えています。
まだ企業の外側の改革が済んでいないとお悩みであれば、ぜひB-EN-Gにご相談ください。共にサステナビリティな関係構築を考えていきます。
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