RISE with SAPの価値を最大限に高め
SAP S/4HANAの最新機能を刈り取るための
アビームコンサルティングの提唱する3ステップ
アビームコンサルティングが考えるビジネス変革の3ステップ
データドリブン経営、サステナビリティ経営など、多様な情報を駆使して新たな価値を創出するためには、スピーディな経営判断を行える基幹システムが必要であることは言うまでもありません。SAP社が提唱する「Intelligent Sustainable Enterprise」が、まさにこれを体現している企業の姿です。私たちアビームコンサルティングは、この姿を実現するための一つの手段がRISE with SAPの導入だと考えています。SAP S/4HANA Cloud基盤を確立し、アップグレードにより最新機能を享受し続けられ、今後のビジネス変革に必要不可欠となるAI活用もスコープに入っているためです。
一方でRISE with SAPは、従来のSAP S/4HANAオンプレミスで培ってきたノウハウだけでは導入や運用が難しく、乗り越えなければいけない3つのステップがあります。即ち、コンバージョンの実施、クリーンコアの実現、SAP AIの活用です。
アビームコンサルティングでは、2021年1月に登場したRISE with SAPに移行するプロジェクトを開始し、同年11月に本稼働をさせ、既に3年近いシステム運用の経験を持ちます。私たちが上述の3つのステップで直面した課題とその克服は、これからRISE with SAPを目指される企業にとっても有用な情報となるはずです。本誌で、その当社事例をご紹介したいと思います。
Step1:コンバージョンとダウンタイムの削減
SAP S/4HANAへのコンバージョンは、ビジネスに直接影響を及ぼしかねないシステムのダウンタイムを伴うため、許容された期間内に全作業を完了する必要があります。多くの企業では、このダウンタイムの長さが課題になり、様々なアプローチを組み合わせて削減に取り組みます。
例えば「システムコンバージョン」や「シェルコンバージョン」といった決められた導入手法の中から最適な方法を選ぶアプローチや、パラメーターチューニングや手順の精緻化/合理化で作業時間を短縮するプロジェクト独自のアプローチ等です。RISE with SAPへの移行時には、これらの取り組みに加えて従来には無かったクラウドならではの留意点を考慮しなければいけません。それはコンバージョン作業の役割分担を徹底するためのオペレーション観点のアプローチです。
従来のオンプレミス環境では、実際にコンバージョンを実施するのはSAP社ではなく、顧客やパートナー企業でした。しかしクラウド環境のRISE with SAPでは、SAP社のスタッフが担当するインフラオペレーションもあるため、役割分担の理解と、作業タイミングの認識合わせが重要となります。つまり、予めコンバージョン全体のスケジュールをSAP社の「ECS(Enterprise Cloud Services)チーム」と共有しておく必要があります。
これらは、オンプレミスにおけるSAPシステムのコンバージョンに慣れていたとしても気がつけない問題であり、認識合わせにずれが生じると、コンバージョンのタスクが止まってしまい、それがダウンタイムにつながってしまう可能性があります。
私たちアビームコンサルティングは、SAP社と協働して早くからコンバージョンプロセスの改善に取り組み、サービスリクエスト上で使用可能な新たなサービスメニューを開発してきました。また、私たちはドイツにあるSAP本社の開発チームや、インドにあるECSの運用チームとも直接コミュニケーションができる体制があるため、スピーディな問題解決もプロジェクトに活用しています。このように、あらゆる方面からダウンタイム削減に取り組んでいます。
Step2:クリーンコアの実現
SAP社が提唱するクリーンコア戦略には、「拡張性」「データ」「統合」「プロセス」「運用」という、5つの側面があり、この中で特に私たちが重視しているのが「拡張性」です。その理由はアップグレードの実施に密接な関係があるためです。
SAP S/4HANAの機能拡張を考えた場合、従来はアドオン開発やモディフィケーションが一般的な手段となっていました。しかし、こうした標準オブジェクトへの変更はSAP S/4HANAのアップグレードの妨げになるため、事前に影響分析や改修、そしてテストなどの実施が必要となり、多大な時間とコストが掛かる原因となっています。SAP社は最新バージョンへの迅速なアップグレードを推奨していますが、実情を考えると保守期限ギリギリまでアップグレードを控える企業も少なくありません。
RISE with SAPにおけるSAP S/4HANAのアップグレードは、コンバージョン作業と同様にSAP社のスタッフが実施しますが、アドオン開発やモディフィケーションが存在する場合、アップグレード作業がSAP社だけでは進められず止まってしまいます。アップグレードの保守期限までの保留は、SAP S/4HANAの最新機能や法改正、セキュリティへの対応などが含まれるバージョンを適用できない期間が長くなってしまいます。そこで大切となるのが、クリーンコア検討です。
定期的なSAP S/4HANAのアップグレードをスムーズに行うためには、システムがクリーンコア基準を満たしているかが重要です。アップグレード作業はSAP社に依頼することができるため、クリーンコア基準を満たしていれば、私たちはその結果確認以外に手を動かす必要はなくなります。これは理想の姿ではありますが、そこに少しずつでも近づけることは、結果的に私たちの維持・保守工数を減らすことにもつながります。まずはクリーンコアダッシュボードを用いてクリーンコア基準の達成度合いを測り、アップグレードを阻害する箇所を特定します。特定した箇所に対してSAP社が提唱するどの拡張方式を適用していけば、業務を損なうことなくクリーンコアを達成できるかを検討していきます。
Step3:SAP AIを活用したビジネス変革
SAPのAIは、IaaS、PaaS、SaaSとして多種多様のサービスの中に組み込まれて提供されていますが、初期投資を抑えながらAI活用を検討する際に着目したいのが、PaaS(BTP)とIaaS(ISLM)の組み合わせ活用です。例えば、BTPの中にはAI-OCRとして機能するサービスがあり、いろいろな業務の手入力作業を効率化してくれるサービスがあります。サブスクリプションで始められるためコストを抑えて利用が開始できます。ISLM(Intelligent Scenario Lifecycle Management)は、S/4HANAに搭載されている機械学習の機能です。Fioriアプリケーションとしてプレビルトのシナリオが複数提供されており、追加コスト無しで始められます。BTPとISLMを組み合わせて、例えばO2Cの業務プロセス全体でSAPのAIを組み込んだ活用が検討できます。AIに限った話ではありませんが、ビジネス変革のためには、このように最新テクノロジーを知り、適所で活用していく試み(PoC)が有効なアプローチです。
SAP S/4HANA Cloudへのコンバージョン、クリーンコア、SAPのAI活用に焦点を当てながら、ビジネス変革を目指す当社の取組みを、Step1~3に分解してご紹介してきました。これはRISE with SAPの価値を最大限に高めるための一つの事例でもあります。
アビームコンサルティングは、今回ご紹介できなかった先端トレンドやテクノロジー導入を業界に先んじて実践しており、得られた知見や経験をコンサルティングサービスに取り入れています。SAPを有効活用した次世代基盤の構築でお悩みがありましたら、ぜひ私どもにご相談ください。