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基幹システムをSAP S/4HANAで
刷新した古河電工グループのOneFITプロジェクト
DX化を加速すべき理由とは?


属人的運用とブラックボックス化、業務・機能の連携もできなかった

 

古河電工グループが取り組んだ「OneFITプロジェクト」。このプロジェクトはどのような背景から進められたのだろうか。まずグループ内の各部門では、業務やシステムが個別に存在し、独自のルールや属人的な運用に任されていたという。また同グループでは、スピード感をもって部門ごとに運営をサポートしてきた。その結果、システム・ツールが部門ごとに存在する形となり、運用保守は煩雑化、ブラックボックス化されてしまったものもあったという。

「当時の業務、およびシステムのあり方では、組織変更や分社化・統廃合などの環境の変化に、柔軟かつ迅速な対応が困難でした。一言で言えば、古河電工のグループ経営を支援する仕組みとしては不十分だったのです」と内澤氏は振り返る。実際、業務とシステムの課題は多岐にわたっていた。まず業務課題には「属人的かつ複雑な業務の顕著化による不透明感」「制度・ルールが未整備で柔軟かつ迅速な対応ができない」「情報の存在有無が把握できず、人海戦術で情報収集」などがあった。

システム面では「外貨対応における機能不足を人海戦術で補う」「グループ間の取引情報がシステム間の連携不足で把握できない」「経営情報が一元管理できていない」「経理・購買・販売でシステム連携がなく情報収集は手作業」「コード体系が標準・統一化されておらず、集計や比較が困難」などの課題があったという。 



12事業部門の業務プロセス統合という難問に富士通のノウハウが活きた

 

これらの課題を解消すべく開始されたのが「OneFITプロジェクト」だ。その中で販売・購買・経理・原価の領域である基幹業務の刷新を図ったのが、OneFITプロジェクトフェーズ3( 以下OneFIT-Ph3)である。製品特性の異なる12事業部において、業務プロセスを統合するべく、2018年に開始された。新基幹システムには、SAP S/4HANA(RISE with SAP)を採用。その理由は、業務の標準化やベストプラクティスの活用、そしてアドオン開発の最小化を考慮した結果だという。また理由の1つには、これまでもパートナーとして共に歩んでいた、富士通の提案も大きかったという。「富士通さんから、非鉄業界である弊社の特徴や課題認識を理解した上で提案をもらいました。そして富士通の導入経験を元にしたプロジェクト施策が、弊社の方針とフィットしたことも大きい」と内澤氏は語る。

なおOneFIT-Ph3では特徴的な2つのソリューションを導入している。SAP for Mill ProductsとSAP Aribaだ。古河電工グループでは、組み立ての終わった成形品といった商品ではなく、銅を成形した重量単位での販売や、電力ケーブルやファイバーなどの長さ単位で販売する商品が存在する。こうした商品は、たとえば500mのケーブルが2本と1000mに分かれたケーブルが1本残っていたとしても、合わせて2000mといった売り方はできない。SAP S/4HANAではこうした個々の長さの管理はできない。そこで導入したのがSAP for Mill Products というわけだ。

次に間接材購買機能の利用を目的に導入したのがSAP Aribaだ。SAP S/4HANAとの連携性、直接材と間接材を統合したサプライヤコミュニケーションの強化、そしてグループでの購買を集約化できるゲートキーパー機能の実現を期待しての導入だったという。




 

プロジェクトは継続中だが新基幹システムの効果を実感

 

OneFIT-Ph3は富士通とともに進められ、販売領域への導入が継続中ではあるが、すでに一部の効果は見えはじめている。たとえば外貨対応や法令対応の強化、機能間連携の実現やSAP S/4HANAで一元化したデータ活用などだ。とくにデータの集約を実現できたことで、見える化による気づきや集計業務効率化の効果は大きいという。

新基幹システムの構築と運用が始まったとはいえ、OneFIT-Ph3はまだ終わったわけではない。引き続き各領域では、いっそうの効率化と強化を目指しているのだ。例えば販売領域では販売形態が大きく異なる通信・エネルギーインフラや電子部品、自動車部品や金属材料など、さまざまな領域のコード体系や販売プロセスの標準化を実現し、業務プロセスの効率化を達成したが、今後はさらなる効率化を目指し、社会や取引先に対する古河電工グループの価値を最大限に高めたいという。

経理領域でも、会計業務の標準化や会計情報の一元化を進め、今後はグループ会計方針の浸透と徹底を図ることで、経営基盤の強化を目指しているという。SAP AribaとSAP S/4HANAの統合を実現した購買領域では、グループ内での購買業務の共通化をさらに推進。業務の最適化とガバナンス強化に向け、調達情報の一元管理も進められている。



プロジェクト成功の秘訣は、全員が当事者であったこと

 

業務の標準化や新基幹システムの稼働について、成功を収めたというが、その秘訣はどこにあるのだろうか。豊沢氏は「新基幹システムが稼働できたのは、各部門の方も含め、関係者全員が自分ごととして、最後までやりきってくれたことです」と語る。OneFIT-Ph3では、一部のグループ会社を巻き込んだ標準化も含まれている。一般に「全員が当事者」となるのは難しいものだが、2つの工夫で実現したという。

まず事業部門参加型活動体制の構築だ。プロジェクト開始当初から活動を知ってもらうことを目標に、事業部門合同セッションを実施。これはプロジェクト開始から数えて32回も行われた。また事業部門別に販売WGを実施し、業務の整理や業務変革のテーマを周知するとともに、商品コードWGと称したSAP S/4HANAのマスタを定義する活動体制を構築したのである。

2つ目はエンドユーザのプロジェクト参画と窓口対応だ。旧販売システムの利用者は、グループ全体で1000人を超え、プロジェクトメンバーだけでのサポートは難しい。そこで稼働1年前には、それぞれからSAPに関わる「SAPパートナー」を選出、プロジェクトに加わってもらったのだ。こうした取り組みにより、新基幹システムの稼働という課題の壁を低くできたのである。

さらに黒澤氏はこうも振り返る。「業務メンバーは、前もってSAP S/4HANAに関する知識を取得しました。また富士通に当社経理業務の把握をしてもらった結果、比較的はやく業務とシステムとを絡めた検討が行えたことも成功のポイントでしょう」

システムの導入にあたっては、富士通の持つ導入や業務改善のノウハウ、導入テンプレートなどが大きなポイントとなったという。今後も富士通には力を貸して欲しいと黒澤氏は語った。

 


DXで古河電工が体験した危機感、いま行わないリスクを見極めるべき

 

DXや基幹システムに刷新したいという企業は多いが、その一歩が踏み出せない企業も少なくない。内澤氏はこうした企業に対し、同社で体験した危機感から心配の声を上げる。同社では業務やITに関するベテラン社員の退職が進み、結果、暗黙知で動いていた業務の問題が顕在化していたという。また老朽化したシステムの保守は難しく、対策を急がなければ業務が止まる恐れもあった。「特に老朽基幹システムの刷新は、いま行わない場合のリスクをより具体的に見極めるべき」と、内澤氏は語ってくれた。




導入企業

 

古河電気工業株式会社

創業:1884年

設立:1896年6月25日

売上高(2022年3月期):930,496百万円(連結)/ 292,424百万円(単体)

従業員数(2022年3月末):50,867名(連結)/ 4,201名(単体)




パートナー企業

 


富士通株式会社

URL:https://www.fujitsu.com/jp/sap


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