導入事例「トーハツ株式会社」

トーハツ株式会社
SAP® ERPにより業務の全体最適化を実現
PLMソリューションとの連携で設計から製造まで可視化
小型船舶のエンジン(船外機)や可搬消防ポンプ製品のトップメーカーであるトーハツ株式会社。同社は業務システムの全体最適化による原価低減と業務コスト削減を目指し、コベルコシステムのSAP ERP導入テンプレート「HI-KORT」を用いて製造から販売、購買、会計、在庫管理に至るシステムをビッグバン稼動させた。その後、設計業務を支援するPLMソリューションをSAP ERPと連携。設計プロセスの可視化による品質改善を進めている。

利益体質の企業体への転換を目指しERPの導入を検討

「社会貢献」を企業理念に掲げ、マリン事業と防災事業を展開するトーハツ。主力製品の船外機と可搬消防ポンプの分野では日本のパイオニアとして知られ、製品は世界120カ国以上に出荷されている。

同社が業務プロセスの見直しに着手したのは2005年だった。当時、本社の経理業務には手組みの会計システムを導入していたが、製造、販売、在庫・購買管理などは系統だったシステム化が行われておらず、本社が工場や各営業所から必要な数値情報を集約している状況だった。業務は個々に完結しているため、現場は不便さを感じていなかったというが、今後の事業成長には全体最適化が必要と判断し、ERPの導入を検討した。取締役 財務部長の塚田英一氏は次のように語る。

「目的の1つは管理情報の整合性を確保することです。データを一気通貫で見られるようにすることで、業務部門が数値に基づいた判断ができるようにしようと思いました。もう1つは管理会計の高度化です。データの管理精度を高めて原価低減や業務コストの削減を実現し、各部門の採算性を確立する狙いがありました」

基幹システムの構築に関しては、同社のシステム室が主導して業務プロセスを整理し、ERPパッケージのベストプラクティスを活用することを決めた。システム室長の内田毅氏は「極力コストをかけずに理想を実現する手段としてパッケージに業務を合わせる方針を固め、トップダウンで導入を進めることにしました」と振り返る。

製造、販売、購買・在庫、財務会計、管理会計の5モジュールをビッグバン稼動

ERPパッケージとベンダーの選定フェーズでは、RFPを作成して6社に提案を依頼。最終的に国産製品とSAP ERPを比較し、コベルコシステムが提案したSAP ERPを採用した。
「当社は船外機の海外輸出比率が高く、外貨に対応していることを重視しました。また、統合データベースによるデータ統合やリアルタイム分析といった機能も評価しました」(塚田氏)

パートナーにコベルコシステムを採用したことについては、提案時の熱意を評価したという。
「担当プロジェクトマネージャー(PM)が当社の目指す方向を正しく理解し、課題解決を実現する道筋をわかりやすく示してくれたことが決め手になりました。製造業向けテンプレートのHI-KORTを用いて導入することで、完成後の姿が具体的にイメージできたことも好印象でした。SAP ERPの豊富な導入実績、ノウハウに基づいた提案に期待しました」(内田氏)

導入プロジェクトは2006年4月にスタートし、旧システムとの並行稼動期間を経て本稼動を迎えた。プロジェクト期間は1年で、製造、販売、購買・在庫、財務会計、管理会計の5モジュールを同時に立ち上げるビッグバン稼動を実現している。
「業務パッケージの利用自体が初めてだったので、現場に精通した業務担当者とFIT&GAPを進め業務をパッケージに合わせていきました。アドオンは最低限必要な帳票や倉庫管理システムとの連携に抑えています」(塚田氏)

導入後はデータの整合性確保、ユーザーの操作教育と習熟レベルの向上、SAP ERPと連携した倉庫管理システムの運用の3点について、本稼動後に運用と並行して改善を加えていった。
「マスターデータをゼロから作った経緯もあり、数字が落ち着くまでには1年~2年かかりました。3年目以降は正確な情報が取得できるようになり、ユーザーも徐々にシステムに慣れていきました」(内田氏)

トーハツではSAP ERPの運用が軌道に乗った後、設計情報管理を含む製品ライフサイクル管理ソリューション(PLM)の導入に着手。コベルコシステムの提案を受けて、PLMパッケージであるAras Innovator® を導入し、2013年4月より稼動を開始した。

「従来の部品表(BOM)は当社独自のルールに基づきMicrosoft Accessベースで作成していたため、CADで作成した設計情報とBOMの情報、それぞれが個別に管理されている状態でした。設計変更が発生すると紙の設計図面で製造部門とやり取りしていたため、最新の正確な設計情報を共有することが困難でした。そこで、設計情報と製造情報をシームレスに連携することで、設計プロセス全体の可視化を図りました」(内田氏)

トーハツの採番ルールをAras Innovatorに移植する形で3カ月で環境を構築。さらにコベルコシステムのPLM導入ナレッジを用いてSAP ERPとの連携部分を短期間かつ低コストで開発した。その結果、CADで作成した設計部品表(E-BOM)は、Aras Innovator上で半自動的に製造部品表(M-BOM)に変換され、SAP ERP側と迅速に情報連携できるようになっている。

各業務担当者が同じ基準で共通のデータに基づいて意思決定を実施

SAP ERPの導入により、トーハツの業務の全体最適化は大幅に進んだ。担当レベルで把握していた数値情報を、誰もが見たい時に見られるようになり、販売、購買、在庫、生産の各担当者がそれぞれデータに基づいて意思決定を行っている。

「例えば、購買業務におけるコスト削減や在庫削減などの実績が即座に把握できるため、原価の低減や利益の向上に向けた活動がしやすくなりました。導入当初は懐疑的だった現場から、今では "SAP ERPがないと仕事が回らない"という声が聞かれるまでになっています」(塚田氏)

具体的な効果としては、見込み生産の製品在庫回転率が従来の3カ月分から2カ月分に向上し、在庫を低減できた。会計の月次決算の締め日も、従来の15営業日から3営業日へと大幅に短縮されている。業務効率の面では事務処理の作業効率が約30%向上し、営業部の人数が50名から35名に減る中で、より生産性の高い業務にシフトできるようになった。その結果、10年間で売上規模が1.5倍増加している中でも、要員を大幅に増やすことなく業務を処理できている。さらに、仕入先や販売先との間では帳票配信の仕組みを新たに導入。検収通知や請求書などの送受信が、従来のFAXや郵送からWeb配信に切り替わったことで、業務のスピードアップが実現した。

PLMソリューションによって設計業務の標準化も進み、個人依存からの脱却が実現した。設計プロセスが可視化されたことで、作業の遅延も速やかに把握して改善に着手できる。また、設計情報と製造情報の連携により、常に最新の製品情報が共有され、業務スピードも向上している。

「部門間で最新の部品情報を共有することで、製品構成のトレーサビリティが確保できます。設計変更の際も内容をタイムリーかつ的確に製造工程に反映することが可能になり、ガバナンスも強化されました。今後、3D CADで設計する案件が増えていくことで、初期工程の段階でプロセスを検証するフロントローディングによって設計品質が向上し、量産開始後の設計変更の低減も期待できます」(内田氏)

※フロントローディング:仕様策定や設計など初期の工程のうちに試作や量産など後工程で発生しそうな問題の検討や改善などにも前倒しで取り組むことで、品質の向上や工期の短縮などを推進する手法(IT用語辞典より)

SAP S/4HANA® への移行に向けて準備を開始

現在SAP ERPのECC6.0を使用しているトーハツでは、2025年のECC6.0のサポート終了に備えて、SAP S/4HANAへの移行も見据えて準備を進めていく考えだ。塚田氏は「必要に応じてサーバーのリプレースやSAP ERPのUnicode化や拡張パッケージの適用も進めていきます」と話している。

コベルコシステムは、現在もリモートによるオンデマンドのアプリケーション運用保守サービス(AMS)を通してSAP ERPとPLMの両面で安定稼動を支援している。内田氏は「提案力と技術力、そして粘り強いサポートの姿勢を評価しています。今後もSAP S/4HANAやデジタル化ソリューションなど、SAP製品の最新動向を踏まえたタイムリーな提案に期待しています」と語っている。

トーハツ システム図

図1:システム図 ※クリックして拡大

会社概要

トーハツ株式会社

本社:東京都板橋区小豆沢3-5-4
設立:1932年10月
資本金:5億円
事業概要:マリン事業、防災事業、その他の事業
https://www.tohatsu.co.jp/

※ Aras® およびAras Innovator® は、Aras Corporationの登録商標または商標です。
その他、掲載されている製品/サービス名称、社名、ロゴマークなどは該当する各社の商標または登録商標です。

パートナー企業

コベルコシステム株式会社
コベルコシステム株式会社