経営戦略を支えるシステム高度化事例

次世代SAPテクノロジーの活用に取り組む企業を
富士通の豊富な知見を活かして包括的にサポート(第1回)
近年急激に進化を遂げるSAPのデジタルイノベーション基盤を、自社の経営目標に沿ってどのように活用していくべきか、多くの企業が模索している。富士通では豊富なSAPシステム構築/運用実績をベースに、次世代テクノロジーを積極的に取り入れている企業を包括的に支援している。今回は将来的なデータ活用を見据え、SAPのテクノロジーを取り入れて経営戦略を支えるシステムの高度化に取り組む3社の事例を紹介する。

ケース1:三井物産株式会社
SAP HANA Enterprise Cloud上に国内最大規模の連結会計システムを導入

愛川 智士 氏

愛川 智士 氏
三井物産株式会社
経理部 決算統括室
室長補佐

鯉沼 里美 氏

鯉沼 里美 氏
三井物産株式会社
CFO統括部 業務プロセス管理室
チームリーダー

日本を代表する総合商社として66の国と地域、6つの事業分野でビジネスを展開する三井物産株式会社。現在、2020年を最終年度とする中期経営計画「Driving Value Creation」のもと、新たな価値の創造に取り組む同社において、連結決算業務を担う経理部にも「攻め」への転換が求められている。グローバルに広範なビジネスを展開する同社の経営資源を、より有効に配分することで経営に貢献していくというミッションだ。

経理部 決算統括室 室長補佐の愛川智士氏は「2015年に経理部とCFO統括部で立ち上げたワーキンググループがベースとなり、2016年より決算進化プロジェクトを発足し、決算資料を『作る』従来業務から脱却し、データを『使う』体制にシフトすることでビジネスや経営への貢献を目指すことにしました」と語る。

データを「作る」から「使う」体制にシフトするためには会計基盤の強化が欠かせない。しかし、全世界で約500の連結対象会社の決算を管理する連結決算システムは、20年以上の間に改修を重ねて複雑化していた。「度重なる会計基準の変更やユーザーのさまざまなリクエストに応じてきた結果、仕組みが複雑化し、新たな経営施策や要求に迅速に応えることが難しくなっていました」と、CFO統括部 業務プロセス管理室 チームリーダーの鯉沼里美氏は振り返る。

スクラッチで構築したシステムはバッチ処理に時間がかかり、見たいデータがすぐに見られない。開発や運用の属人化も将来に向けた不安要素となっていた。そこで、連結決算のパッケージ製品を導入し、連結会計業務全体の標準化、効率化を図ることにした。

マルチベンダーの連携体制を富士通がリード

荘司 正人 氏

荘司 正人 氏
三井物産株式会社
CFO統括部 業務プロセス管理室
室長補佐

三井物産は、制度連結から管理連結までカバーする国内外のパッケージシステム製品を複数比較した中から、SAP Financial Consolidationを採用した。CFO統括部 業務プロセス管理室 室長補佐の荘司正人氏は選定の理由を次のように語る。

「パッケージでありながら当社独自のロジックも反映させやすく、必要な数字が取り出しやすい柔軟性の高さを評価しました。管理連結の機能も優れており、将来的な拡張に対応できることを期待しました」同社は基幹システムに長年SAP ERPを利用し、データベース基盤もSAP HANAに移行済みのため、SAPシステムとのデータ連携も重要だった。

「特に、海外ではSAP Financial Consolidationユーザー間の情報共有が活発です。当社も連結決算のデータをグローバル経営に役立てるノウハウを得たいと考えました」(鯉沼氏)また荘司氏は、導入パートナーに富士通を指名した理由について「既存システムの構築/運用支援実績が20年近くあり、当社の連結会計業務を熟知してくれているという信頼感がありました」と語る。

プロジェクトは2016年4月から開始し、2018年6月に第1ステップとして制度連結の機能を稼動させた。プロジェクトは富士通をプライムとするマルチベンダー体制で実施。三井情報、日本IBMとともに、富士通がアプリケーションや基幹システムとの連携などプロジェクト全体をコントロールし、SAPジャパンからもSAP Financial Consolidationに関するノウハウの提供を受けながら進めたという。

「自由度の高いSAP Financial Consolidationの特性を活かして当社独自の機能でも必要なものは実装し、旧システムの複雑な資本連結の自動ロジックもほぼ再現しています。自動仕訳の機能を整理して不要なロジックは整理してすっきりさせる一方、今まで手動で対応せざるを得なかったセグメント別や商品別の多軸集計機能をSAP Financial Consolidationに取り込みました。報告用の入力フォームも100シート近くから60シートに削減して効率化を図っています」(荘司氏)

今回のプロジェクトの特徴は、SAPのクラウド基盤であるSAP HANA Enterprise Cloud(HEC)上にSAP Financial Consolidationを構築している点だ。世界でも事例が少なく情報が不十分な中、三井情報、SAPジャパン、富士通の連携で難局を乗り切ったという。

「先例が少ないことで、壁に直面するたびに自分たちで解決せねばなりませんでした。ただ、技術面ではSAP関係者の協力を得ることができ、全体として円滑に解決することができました」(鯉沼氏)

さまざまな壁を乗り越え、連結決算システムとしては国内最大級のプロジェクトを2年2カ月で実現したことは特筆に値する。荘司氏は「富士通にはアプリケーションの設定、テスト、不具合の改修から移行ツールの提供、基幹システムとのつなぎこみまで全般の支援をいただきました。その中で、最後までやり切る強い意志と、それを実現する馬力を感じました」と評価している。

早期の連結全体の大勢把握が可能に
決算早期化も期待

2018年6月の本稼動後、初めての連結決算に臨んだ同社はおおむね滞りなく処理を完了。具体的な効果測定はこれからだが、いくつかの成果も見えてきている。
まず従来は1日に2-3回、毎回1時間以上かかっていたバッチ処理は、システムの高速化で30分毎の起動が可能となった。バックグラウンドで処理が実行されているため、バッチ処理の間もシステムの更新を止める必要がない。また、インポート機能を活用し、これまで各部署で処理していた一部の報告フォーム・仕訳入力業務を、経理部で一括対応できるようになり、業務の集約化も進んでいる。

連結決算速報値を出すまでの期間も短縮する。「従来は、全社の入力が完了した後にバッチ処理を実行していたため、毎月20日前後にならなければ連結全体の数字が見られませんでした。SAP Financial Consolidationの導入ですべての報告が完了していなくても、基本財務諸表データが揃う10日前後には、バッチ処理によりその時点での集計値が見られるようになり、早い段階で連結決算の大勢をつかむことができます」(愛川氏)

今後のさらなる決算の早期化に期待が高まっているという。さらに、パッケージ化によりシステムのブラックボックス化が解消されてデータの抽出がしやすくなり、ユーザーの要望に応じて必要なレポートを迅速に提供できるようになっている。

SAP Financial Consolidationの管理連結への活用と機能の強化

さらに今後は、管理連結への活用を進めていく。「データの活用という面ではまだこれからで、営業部門やグループ会社にもSAP Financial Consolidationのデータを使ってもらえるように働きかけていきます」(愛川氏)

経理部門でもSAP Financial Consolidationへの習熟度を高め、必要に応じて機能強化を続けていく予定だ。SAP ERPとSAP Financial Consolidationのデータを組み合わせた分析環境の提供などの取り組みも進む方針だ。

「ユーザーからの要請に応える柔軟性に優れ、今回のプロジェクトからはIT面でもさまざまなノウハウが獲得できました。今後、国内のSAP Financial Consolidationの導入企業が増えて、情報交換をしながらSAPに対して要望を挙げていけたらと思います」(鯉沼氏)

グローバルに広がるネットワークにより、環境変化に耐えうる収益基盤の確立とダイナミックな経営資源の配分を目指す三井物産の取り組みは今後も続いていく。

次世代SAPテクノロジーの活用に取り組む企業を富士通の豊富な知見を活かして包括的にサポート(第2回)

会社概要

三井物産株式会社

設立:1947 年7月
資本金:3,414 億8,164 万8,946円(2018 年3月31日現在)
従業員数:42,304 名(連結、2018 年3月31日現在)
事業内容:金属、機械・インフラ、化学品、エネルギー、生活産業、次世代・機能推進の6つの事業を展開
https://www.mitsui.com/

パートナー企業

富士通株式会社
富士通株式会社

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