導入事例「株式会社日立物流」

株式会社日立物流
SAP ERP本番機をAWSに移行しサーバー費用を32%削減、BCP対策も確立
総合的な物流サービスを提供している株式会社日立物流は自社データセンターの運用コスト増大への対応策として2014年からアマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)への移行に着手し、16の国と地域で204のシステムをAWS上のAmazon Elastic Compute Cloud (EC2) Windowsを中心に運用している。2016年12月には、SAP ERP 6.0の本番機をAWSに移行。オンプレミス環境と比べてサーバー費用を32%低減し、サーバー起因による障害発生もなく、安定稼動を続けている。

グローバル物流システム強化と早期立上げを目指してAWSに移行

田代 肇 氏

田代 肇 氏
株式会社日立物流
IT戦略本部
デジタルビジネス推進部
部長補佐

3PL(システム物流)、重量・機工、フォワーディングの3つのコア事業を通じて企業のサプライチェーン最適化 を支援する日立物流。現在はコア事業を強化しながらIoT、AI、ロボティクスなど、先端技術の物流分野における実用化に向けてスマートロジスティクス(自動化/省力化)を推進している。

同社がクラウド化に着手したのは2014年で、利用実績もなく詳しいエンジニアも社内には全くおらず「他社と比べて周回遅れだった」とIT戦略本部 デジタルビジネス推進部 部長補佐の田代肇氏は振り返る。当時はeコマースの台頭や人口減などでマーケット構造が変化し、荷主のグローバル化が進行。同社も世界を意識したビジネス戦略を明確に打ち出し、IT組織もグローバルへの対応・強化が必須だった。

同社では当時、世界10カ国で利用している在庫管理システムGlobal WarehouseManagement System(GWMS)を日本のオンプレミス環境から提供し、DR環境も国内で構築していた。しかし、自然災害などが原因で日本のオンプレミス環境に影響が発生した場合、最悪海外拠点の出荷が停止してしまうリスクを再評価し、システムの提供場所を3極(アメリカ、アジア、中国)に見直すことを決断。

また、DR環境も含めたオンプレミスのサーバーの既存費用と比較しコスト低減も図りたいと考えた。さらに1.5年以内での3極立ち上げ、BtoBレベルのサービス品質という要件を加えて検討した結果、AWSを採用。

「当時、すべてのニーズを満たしていたクラウドサービスはAWSだけでした」(田代氏)

ポジティブマインドへの転換で導入に立ちはだかる壁を克服

吉田 佑一郎 氏

吉田 佑一郎 氏
日立物流ソフトウェア株式会社
ICTソリューション本部長

AWS環境の構築はグループ会社の日立物流ソフトウェアが担当することになったものの、エンジニアからは「本当にアプリケーションが動くか責任が持てない」という声が上がり、日立物流社内からは「SAPのようなミッションクリティカルなシステムは載せられない」という意見も根強かった。

そこで取り組んだのが、技術者のマインドセットの転換だ。日立物流ソフトウェアICTソリューション本部長の吉田佑一郎氏は「自社でAWSをやらないなら他社を使うという強気な姿勢を示したところ、いずれやるなら最初から絡まないと後々の保守が大変、クラウドが本流になっていくと他の仕事も減っていくという危機感が芽生えました」と語る。ポジティブマインドに変えるため、AWS固有の難解な単語を技術者が知っている技術/単語に置き換える工夫もした。

従来までの「障害を防ぐ構成」から「障害が起きても大丈夫な構成」への転換を図り障害発生への不安を払拭したところ、「仮想化技術を知っていれば何とかなる」という声も出始めた。実機が目の前にないと何かと不便という意見にも、ほぼすべての操作がマネジメントコンソールからできるAWSならオンプレミス環境より便利と説得したという。

「しぶしぶ始めたAWSへの移行ですが、実際やってみると仮想化の知識が役立つ、障害は起きない、どこからでも操作ができて便利だ、ハードウェアの故障を心配しなくていいのは楽だといった声がエンジニアから上がり始めました」(吉田氏)

クラウドの特性を活かした運用ポリシーでコストを低減

石川 博之 氏

石川 博之 氏
株式会社日立物流
IT戦略本部
経営システム統括部
部長補佐

こうしてGWMSのAWS移行を始めた日立物流は、3年かけて東京、バージニア、シンガポール、北京、シドニーへの展開を終了。並行して日立物流グループ共通システムであるSAP ERP(FI、CO、HR)とSAPの周辺システム(経理系、人勤系、本社系)の移行にも着手。当初はマルチクラウド戦略のもと、事業系のGWMSなどはAWS、SAP含めた基幹系は他社クラウドを想定。

しかし、開発・検証環境の評価を行った他社クラウドよりAWS環境の方が安定していることを評価して、SAPも本番機はAWSで稼動させることとした。3カ月かけて設計、構築、テストを実施後、2016年12月末にWindowsServer/SQL Serverベースで稼動しているSAP ERPの本番環境をAmazon EC2Windows環境上へ移行した。

SAP ERPに関しては、クラウドならではの特性を活かした運用ポリシーを定めることでサーバー費用の削減効果を最大化している。1つ目がサーバーの稼動時間の調整だ。開発/検証系と待機系サーバーは、通常の営業日は午前2時〜7時、休業日は午前2時〜翌営業日の午前7時の時間を停止し、稼動率を抑制。

次に、サーバー構築時のスペックに余裕があった環境ではAWSのインスタンスタイプを見直し、利用料を低減。さらに、既存サーバーのリース解約時期を見直し、ランニングコストの低減を図った。
これらの施策によってクラウド化の投資額は3年以内に回収できる見込みが立った。実際、月額のサーバー費用は、オンプレミスで運用していた2015年3月と比較して、移行後の2017年10月以降、32%低減されている。

移行後は、運用負荷が大きく軽減された。「AWSのサーバー監視サービスによって異常時にはアラートメールが発信され、障害を未然に防止できます。異常を検知した際の情報共有もAWSのヘルプデスクとのチャット連携が可能で、障害対策時間の短縮につながっています。サーバースペックに起因する障害もインスタンスタイプの変更と再起動で対応できるため、対策時間が短縮しました」と、IT戦略本部 経営システム統括部 部長補佐 石川博之氏は語る。AWS移行後はサーバー起因による大きなシステム停止もなく、安定稼動を続けている。

5つのリージョンで204個のインスタンスが稼動中

日立物流では現在、5つのリージョンで204個のAmazon EC2 Windowsインスタンス(仮想サーバー)を中心に稼動し、利用拠点は16の国と地域にわたる。サーバーを新設する際はクラウドファーストとし、お客様の了承が得られないケースやAWSでサポートしていないOS利用などの例外を除いて、AWSを採用している。

高可用性については、データベースのAmazon Relational Database Service(Amazon RDS)を複数リージョンで保存するMulti-AZで配置。DR環境は、1つのリージョンの環境を別のリージョンにバックアップとして保存するクロスリージョンにより、5つのうち1つがダウンしてもバックアップ先のリージョンでカバーできるようにした。

今後はAWS以外のサービスも含めたマルチクラウド化を進め、ノウハウの蓄積とエンジニアのスキル向上を目指す。また、インフラの自社保有と外部委託の2つを仕分けながら、「持つIT」から「使うIT」への転換を目指していく方針だ。

技術面では増加するインスタンスの管理手法の確立に向けて、管理ツールの導入を検討中だ。技術組織の体制もクラウド対応に向けて整備していく。「クラウド化は単なるインフラ形式の変化でなく、業務のやり方が変わると捉え、クラウド専門チームや独立した技術研究チームの設置も視野に入れています」(吉田氏)

日立物流では、今後もクラウドファーストのポリシーのもと、「グローバルサプライチェーンにおいて最も選ばれるソリューションプロバイダ」として世界に貢献していく。

システム概要図

システム概要図 ※クリックで拡大

会社概要

株式会社日立物流

創業:1950年2月
資本金:168億200万円 (2018年3月末現在)
売上高(連結):7,003億9,100万円 (2018年3月期)
従業員数(連結):47,784名 (2018年3月末現在)
事業内容:国内物流事業、国際物流事業、その他事業
http://www.hitachi-transportsystem.com/

パートナー企業

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社