活動紹介「日本アイ・ビー・エム株式会社」

日本アイ・ビー・エム株式会社
"真"のデジタルコア再構築に向けて
日本におけるSAP市場は、SAP S/4HANAマイグレーションで活況を呈している。一方、SAPの語る「デジタルコア」再構築の意味するところは何か、5年10年、果ては20年先を見据え、企業にとって本当に意味のあるデジタルアセット創りができているのか?SAPユーザー企業、導入支援企業側問わず、その価値を冷静に見つめ直すことの意義は大きいと言える。

執筆:日本アイ・ビー・エム株式会社Watson IoT 事業部 理事 事業部長 村澤 賢一氏

本稿では、(1)「目指すべき次世代のエンタープライズアプリケーションの姿」について触れ、次いで(2)足元のプロジェクト・ワークにおける「テスト工程のあり方」にも言及する予定である。

目指すべき次世代のエンタープライズアプリケーションの姿

まず(1)について。皆さんは、「Accountability」の意味をどのように解釈されるだろうか。日本においては多くの場合、「説明責任」と訳し、用いられている。日々の事業活動・実務における「執行」と「結果」があり、その結果に対する「説明と、取るべき責任」がある。「Accountability」とは元来、「事業活動・実務の執行そのものと、その(説明)責任」にこそ真の意味がある。こう捉えると、事業の執行に対し責任を有する組織・役職者・担当者が、業務執行にあたり必要とする「相棒」としてのエンタープライズアプリケーションに求めるものが、単に「職務遂行上必要となる処理機能」の塊としてではなく、「利用価値の高い情報」を供する仕組みとして定義されるはずであり、それこそがSAPの語る「デジタルコア」再構築が本質的に意味するところであると筆者は理解している。図に示したのは、次世代エンタープライズアプリケーションの基本的価値定義である。

すなわち、事業活動・業務執行にあたり、「目の前の現実=今」をどう捉え、状況打開や、さらなる進展を図る上で必要となる「現場裁量の発揮を後押し・底支えする仕組み」としてのエンタープライズアプリケーションの姿である。少しその構成を見てみると、言うまでもなく、事業活動・業務執行上必要となる諸機能の基礎を成すOSS/BSSコアロジック群。業界横断機能の提供、または業界固有機能の提供に特化した各種クラウド/SaaS基盤(前者は、CRM領域や経費精算、間接財購買、人事領域などの諸機能を具備したSaaSサービス、後者は例えば自動運転支援環境としての「Connected Vehicle(つながる車)」用SaaSや、製造業における工場内でのAI/IoT 利活用を促進するためのSaaS機能群など)。

また、時々刻々と移り変わる「今」を捉え続け、Proofと知見を提供するIoTシステムとそれを構成するデバイス・センサー・クラウドのネットワーク。また、SNSをはじめとするソーシャルデータソースと、その利用を可能とするAPI群。加えて、昨今急速に環境整備が進む、BlockchainやPDS/VRMに代表される次世代の各種広域ビジネス基盤。これら諸基盤・機能群が連動し、事業環境変化への対応力と伸縮性を備えたアプリケーションバリューチェーンこそが、次世代のエンタープライズアプリケーションの基礎を成すものとなる点に関して、読者の皆様も疑いの余地はないものと考える。まさに、マルチクラウド時代のエンタープライズアプリケーションの姿である。上述の構成に加えて昨今注目度が一層増し、また適用に向けた試行が加速しているのが、AI(読者によって定義の差があると思うが、ここではAugmented Intelligence<拡張知能:完全無欠の人工知能ではなく、我々人間の意思決定や活動を支援するお助けマンとしての機能>)技術である。仮に上述の各種基盤・機能群が、事業活動・業務執行上、重要な意味を持つ「データ」の塊を生成・蓄積するものであるとするならば、AIに代表される新たなエンタープライズアプリケーション機能は、さしずめ予測・予知型経営を可能とする「可能性」と、その「確信度」を提供する経営基盤である。それらは、「現場裁量の発揮を後押し・底支えする仕組み」でなければならない。

このような視点こそ、5年10年のスパンで見て、企業にとって本当に意味のあるデジタルアセット創り、すなわち「"真"のデジタルコア再構築」のために必要な視座であると筆者は考える。

2018-activity-ibm-zu-01.png

次世代エンタープライズアプリケーションの基本的価値定義 ※クリックで拡大

テスト工程のあり方

次に(2)について。SAP導入/マイグレーションプロジェクトに従事されている皆さんの悩みの1つとして、「テスト工程の効率化」を上げることができるのではないだろうか。前述のとおり、SAP S/4HANAを軸とするデジタルコア再構築の活動は、従前より培った導入/マイグレーション・ノウハウに加え、マルチクラウド時代のプロジェクトの進め方と、AI・IoT・Blockchainなど関連最新技術の本番業務適用を、同時に推進する必要性もあり、複雑化している。また、テスト工程に影響を与える外部要因として、適用しているSaaSの機能改訂や、バージョンアップなど、サイクルの速い対応要件もあり、全体のコーディネーションが容易ではない。使い古されたテーマではあるが、テスト工程におけるテンプレート化/メトリックス分析/テスト自動化の取組みの重要性が一層増している。

テストプロセスのテンプレート化は、主にSaaS適用領域におけるテスト工程の効率化に寄与し、メトリックス分析については、ERPコア領域のみならず、HOST基幹系からOpen系・SaaS領域まで幅広に連携したテストの実行をとおした設計品質の検証が必要とされるデジタルコア再構築プロジェクトにおける共通基盤としての重要性があげられる。大規模プロジェクトにおいては、導入支援企業も複数社関与することも稀ではなく、かつひとたび環境整備を終えても、適用技術やSaaS サービスの進化を踏まえ絶えずAgileな更新・管理が必要となる次世代エンタープライズアプリケーション環境においては、テスト進捗/品質全体を可視化し、一貫性のあるテスト管理基盤が不可欠である。加えて、テスト実行におけるリソースの最適化やツール連携をサポートし、テスト自動化対応領域を最大化する仕掛けも非常に重要である。

加えて、「人」。プロジェクトではいうまでもなく多くのプロフェッショナルがプロジェクト実務に従事し、その活動全体を支えている。多くの場合、プロジェクトの途上でフィジカル/メンタル面での体調不良により、戦線を離脱せざるを得ない仲間の姿を見てきたはずである。なぜか。あるプロスポーツのトップアスリートの方がおっしゃるには、「人は頑張ることは簡単なのである。本当に頑張り過ぎてはいけない時に、本人がそれに気づき、また回りもその状況を認め、本人に頑張らせない仕組みを作り、休ませることが難しいのである」と。プロジェクトの現場で、全体目標達成に向け働くすべてのプロフェッショナルにも当てはまることだと思う。

IBMでは、京都の繊維メーカー、ミツフジ社と共同で、働くプロフェッショナル向けに、ミツフジ社のウェアラブル・デバイス「hamon®」と、IBMのInternet of Bodies基盤である「IBM IoT Worker Insights」を組み合わせた蓄積疲労管理基盤を整備し、この秋本格的なサービスを展開予定である。いつの日か、こういった仕組みを活用した、データに基づく疲労/体調管理が徹底され、すべてのプロジェクト従事者が活き活きとプロジェクト活動に従事し、プロジェクトが掲げるゴールテープを無事プロジェクトメンバー全員で切ることができる日を祈ってやまない。我々働くプロフェッショナルが身につけるべき「科学的ヘルスリテラシー」実践の場として、プロジェクトを位置づけることの必要性は高いと言える。

参考リンク
IoTは次のステージへ。ミツフジとIBMが狙うInternet of Bodies新戦略

パートナー企業

日本アイ・ビー・エム株式会社
日本アイ・ビー・エム株式会社