導入事例「株式会社近鉄百貨店」

導入事例「株式会社近鉄百貨店」
経営ダッシュボードをSAP Cloud Platform上に構築
アジャイル開発で迅速な稼動を実現
近畿圏を中心に10店舗を展開する株式会社近鉄百貨店。同社は経営陣やマネージャー層向けに、営業情報をタイムリーに把握して素早いアクションにつなげるための経営情報ダッシュボードをSAP Cloud Platform上に構築した。株式会社クニエの協力のもと、アジャイル開発によりわずか3カ月で稼動を実現。ダッシュボード画面で売上実績を一覧できるようになり、ビジネスの大局を見据えるためのさまざまな「気づき」が得られている。

実績情報を一覧できる経営ダッシュボードの有効性

藤本 忠雄 氏

藤本 忠雄 氏
株式会社近鉄百貨店
総合企画本部
経営企画部 部長

近鉄百貨店が2014年3月に新装オープンし、日本最大級の売場面積を持つ「あべのハルカス近鉄本店」は、国内外から集まる人々で賑わう人気スポットとなっている。そして2017年11月に創業80周年を迎える同社は2015~2017年の中期経営計画のもと、将来の持続的成長に向けたグループ事業基盤の再構築に取り組んでいる。拡大するインバウンド市場への対応や、地域中核店におけるリモデルの強化などが重要課題だ。さらに、基幹システムの再構築やEC事業など、IT面からも新たな施策に乗り出している。

一方、業務に合わせて構築してきたITシステムのなかでも、日々の営業情報や経営情報を可視化する分析系システムは、複雑化が進んでいた。同社の総合企画本部 経営企画部 部長の藤本忠雄氏は次のように振り返る。

「2009年に顧客情報と商品情報をデータウェアハウス(DWH)上に集約し、さまざまな分析ができる新営業情報システムを導入しました。約2,000人の社員が商品企画や営業活動などの業務に活用していますが、細かい情報まで見過ぎて、むしろ大局的な見方ができなくなっているのではと懸念していました」

毎朝、出社した社員が新営業情報システムで数値をチェックし、販売の現場に細かな指示が降りていくため、その対応に追われて現場の業務が増えていく傾向にあった。また、経営層に前日の実績などを報告するには、担当者が必要なデータを集めて紙ベースの営業日報を作成しなければならなかった。

「細かな情報にとらわれて現場の負担が増え、残業や早朝出勤につながるような動きは見直していかなくてはなりません。そこで、まずは大まかに前日の実績や予算達成度を把握できるよう、一覧性に優れた経営ダッシュボードを導入することにしました」(藤本氏)

ユーザー起点の考え方に基づくデザインシンキングの活用

近鉄百貨店は経営ダッシュボードをPaaS型クラウドサービスのSAP Cloud Platform上に構築することを決断した。「オープンなクラウド環境を活用することで、特定のベンダーに縛られることがなくなり、将来的な拡張も含め、今後のシステム戦略に役立ちます。メンテナンスやセキュリティの面からもクラウドはコストメリットが高いと判断しました」と藤本氏は話す。

同社は管理会計にSAP ERPを長年使用しており、システム構築についてSAPに相談を持ちかけたところ、パートナーとして紹介されたのがクニエだった。

「当社はクラウドサービスの導入が初めてだったこともあり、SAP Cloud Platformの豊富な経験を持つクニエの実績に着目しました。特に印象深かったのが、アジャイル開発によって3カ月でダッシュボードを構築するという提案です。要件定義、設計、開発、テストという従来のウォーターフォール型の開発経験しかなかった当社にとって、実装とテストを繰り返しながらコスト軽減と短期開発を目指すアジャイル開発は、チャレンジのしがいがあるものでした」(藤本氏)

同社の経営ダッシュボード構築プロジェクトは2017年7月から要件定義を開始し、開発やテストを経て10月23日に本稼動を迎えている。要件定義の過程では、画面デザインの設計に、サービス利用者を起点として検討を重ねるデザインシンキングの手法を用いたことも新たな試みとなった。現場に近い営業推進、経営企画、IT推進の3部門から5人が参加し、クニエのコンサルタントと共にホワイトボード上でアイデアを共有、議論しながら、表示項目や画面デザインを設計していった。

ダッシュボードの大まかな完成イメージが固まり、開発工程に移行してからは、画面開発フレームワークSencha(センチャ)を用いてモックアップを作成し、何度も修正を加えながら分かりやすいUI/UXを実現。SAP Cloud Platformと既存のDWHや周辺システムとの連携には、専用ツールのSmart Data Integrationを用いることで開発期間を短縮している。「アジャイル開発によって約3カ月で構築できました。ウォーターフォール型で開発していたらその2倍以上の期間がかかっていたでしょう」と藤本氏は振り返る。

プロジェクトにおけるクニエの支援について、藤本氏は次のように評価している。

「百貨店業界の動向に詳しいメンバーを加え、当社のことも熱心に勉強してシステムの全体像を理解しながら先を見据えた提案をしてくれました。アジャイル開発では1回1回のコミュニケーションが重要になりますが、出来上がりのイメージを共有しながら作り上げることができました。開発拠点は大阪と東京で離れていたものの、距離的な違和感もなく開発の進め方や考え方の面で学ぶことも多くありました」

出社してすぐに前日までの状況を確認

経営ダッシュボードは現在、役員、全社員が社内や店舗内のPCから見られるようになっており、とくに経営層や管理職の数百名がアクティブに活用している。ダッシュボードからは、全社における前日の営業実績と当月の累計売上のほか、営業実績については予算達成状況まで一目で把握できる。各店舗についても、売場別の状況や来店客数/購入客数など、次のアクションにつながるように工夫が加えられている。画面表示のレスポンスは、SAP HANAデータベースによって高速処理されるため操作に関するストレスはまったくない。

「表示する情報を絞り込み、細かい数値はあえて見せないようにしているので物足りないと思う人もいるかもしれません。しかし、まずは朝一番に前日の実績と予算達成状況を確認するという意識を社内に浸透させる意味では、効果が大きいと思っています。詳細なデータはこれまで同様に新営業情報システムで分析できますから、普段見る情報の粒度がどこまで必要なのかを自ら考えるいい機会にもなります。経営ダッシュボードは、ビジネスにおいて『新たな気づきを得る』ためのものであることを引き続き訴えていきます」(藤本氏)

ダッシュボードの導入により、経営層向けの営業日報の作成を廃止する動きも出ており、さらに活用が進むことで現場の負荷が軽減されていくことが期待されている。

SNSやオープンデータも網羅して経営情報の可視化を推進

近鉄百貨店は今後、全社統一のDWHを構築して、SNSや気象情報といったオープンデータも取り入れながら経営情報の可視化を進めていく。閲覧端末も今後はスマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスに対応させていく予定で、経営層が社外からも実績を確認して、よりスピーディーな意思決定が可能になるはずだ。

ITシステム全体については、現在進行している基幹システムの再構築と並行して販売データや来客データなどをリアルタイム化し、お客様のニーズに即したサービスをより迅速に提供していく。その他に、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用したロボットによる事務作業の自動化や、AIを活用したマーケティングオートメーションなど、新たな技術を取り入れながらさらなる成長を目指していく構えだ。藤本氏は「SAP Cloud Platformにより、さまざまなシステムと連携する環境が整いましたので、これまで以上に顧客接点にITを活用して、新しいチャレンジを進めていきます」と意欲的に語った。

システム概要図

システム概要図

会社概要

株式会社近鉄百貨店

設立:1934年9月
資本金:150億円
売上高:連結2,664億7,700万円(2017年2月期)
従業員数:連結2,362名(2017年2月末現在)
事業概要:百貨店業、卸・小売業、その他事業
www.d-kintetsu.co.jp

パートナー企業

株式会社NTTデータ
株式会社NTTデータ

株式会社クニエ (NTT DATA Group)