導入事例「株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン」

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン
IT基盤のフルクラウド化を決断
SAP ERP基盤としてMicrosoft Azureを採用
ゴルフ用品販売、ゴルフ場予約、ゴルフメディアの領域からワンストップでサービスを提供する株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(以下、GDO)。同社が2016年より推進する中期経営計画では、ビジネススピードをさらに加速するとともに、それに追従するためのIT基盤整備も必要となる。そこで選択したのが、SAP ERP環境にMicrosoft Azureを採用したIT基盤のフルクラウド化だ。

ビジネススピードに追従するためクラウドの活用を検討

渡邉 信之 氏

渡邉 信之 氏
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CTO 経営戦略本部 本部長

白尾 良 氏

白尾 良 氏
株式会社ゴルフダイジェスト・
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インフラマネジメント室 室長

東京都品川区に本社をおくGDOは、インターネットを利用したゴルフ場予約から、ゴルフメディア、ゴルフ用品販売とサービスを拡大してきた。CTOで経営戦略本部 本部長の渡邉信之氏は、現在の取り組みについて次のように語る。

「国内市場の低迷が予測される中では、海外市場を視野に入れた展開や新規事業が不可欠です。また、小売全体におけるEC市場はまだ成長余地があるため、既存事業についても強化していかなければなりません。そこで、今を第二創業期と据えてゼロベースから事業を再スタートする中期経営計画『GDO NEXT from Scratch』を進めています。ビジネススピードの加速に追従できるよう、IT基盤も見直しました」

GDOのIT環境は、フロントシステムにWebアプリケーションやDB、課金システムといったシステムを集約し、在庫管理や入出荷の制御といった機能を備えるSAP ERP(基幹系システム)とリアルタイムに連携している。従来はこれらをオンプレミスに構築した約300インスタンス規模の仮想化環境で運用してきた。しかし、今後のビジネススピードに追従するにはオンプレミスを利用し続けることは難しいと考え、クラウドの活用を念頭に置いて新たなIT基盤を検討した。

インフラマネジメント室 室長の白尾良氏は、クラウドへの期待について説明する。
「オンプレミスでは限られた人数でハードウェア側も管理せねばなりません。クラウドは拡張性だけでなく、定常運用リソースの削減にも期待できました。リソースに余裕が生まれれば、新たなITの企画や開発など『攻めのIT』へ投じることが可能です」

クラウドサービス事業者の得手不得手を踏まえ、マルチクラウドを選択

八巻 竜太 氏

八巻 竜太 氏
株式会社ゴルフダイジェスト・
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ビジネスデザイン室

GDOは、全システムを対象とするフルクラウド化を決断。フロントシステムと基幹系システムにはリアルタイム通信が必要で連携性が高く、一部でもオンプレミスに残すと、定期開発や新規開発などで要するタイムロスが、クラウド側に悪影響を及ぼすと懸念された。そのため、難易度が高くともフルクラウドが最善という判断のもと、プラットフォームの選定を開始。ビジネスデザイン室の八巻竜太氏は、マルチクラウドという選択肢を設けて比較検討したと語る。

「クラウドサービス事業者ごとに得手不得手があります。IT基盤を最適な形に発展させていくには適材適所のプラットフォームを採用すべきと考え、SAP ERPの導入支援後も取引を継続しているアビームコンサルティング株式会社(以下、アビームコンサルティング)にプラットフォームの提案を依頼しました」

クラウド上での構築には、SAP ERPへの深い理解とクラウドに関する知見が求められるが、MM(在庫、購買管理)やSD(販売管理)といったロジスティクスが絡む案件を、自信を持って支援できるベンダーは多くない。アビームコンサルティングからはマイクロソフトが提供するAzureと、AWSでの構築の2種が提案された。フロントシステムにAWSの採用を既に決定していたため、AWSでの構築は管理性を重視したものとなる。一方、GDOで稼動するSAP ERPはバックエンドにSQL Serverを利用しているため、Azureは親和性とコスト面で大きなメリットがあった。また、アビームコンサルティングの技術検証でSAP ERPが問題なく動作することを既に実証できていたため、Azure案で進めることが決定した。

プロジェクトは、現環境の移行ではなくSAP ERPのバージョンアップを伴う「新たな環境の構築」として開始。アビームコンサルティングにアプリケーションの構築とデータ移行を、パナソニックインフォメーションシステムズ株式会社(以下、パナソニックIS)にインフラ側の構築を依頼し、2017年2月のサービスインをターゲットとして作業を進行。構築後のインフラ運用をパナソニックISに委託し、定常運用のリソース削減も目指した。

インフラの設計と構築においては、ミッションクリティカル性がきわめて高いシステムをマルチクラウドに分散したことにより、システム間通信の低レイテンシと可用性の両方が課題だった。AzureとAWSの間で絶えず情報がやり取りされるため、帯域とセキュリティを確保すべく、接続にExpressRouteを使用。また、エクイニクスが提供するCloud Exchange上に2台設置したL3スイッチでAzureとAWS間の接続を冗長化することで、安定性と性能の双方を担保。構築に際して、マイクロソフトから情報提供やPowerShellのサンプルスクリプトの提供などの支援を受け、スムーズに進行できたという。

クラウドの拡張性を活用して移行時間を最小化

フルクラウドによる新たなIT基盤は当初の計画どおりカットオーバー。バージョンアップを伴う環境構築のため、旧環境と新環境を並行稼動させて瞬時に本番環境を切り替えることはできず、旧環境からデータを移行する間システムを停止しなくてはならなかった。このような本番環境の切り替えには通常48時間ほど要するが、同プロジェクトでは22時~翌日10時のわずか12時間で作業を完了している。

「不具合の発生リスクなども加味すると、短期間での切り替えは大きなチャレンジでしたが、アビームコンサルティングとパナソニックISに懸念点と準備すべき事項を事前に整理いただき、大きなトラブルなく進めることができました。また、テスト環境や高性能な中間機などを、クラウドの拡張性を活用することで随時スクラップ&ビルドしたことも、移行時間を最小化できた1つの要因です」(白尾氏)

フルクラウド化によって、GDOはビジネススピードに追従できるIT基盤を獲得した。例えばWebサイトやアプリケーションの反応速度を高める場合、これまではアプリケーション側へのチューニングしか方法がなかったが、フルクラウド化によって物理環境側の制約が解消され、IT部門で対応できる範囲が拡大している。

「Azureへの切り替え後、アプリケーションレベルではオンプレミスよりも安定してサービスが稼動していることは、AzureとSAP ERPとの親和性の表れといえます。Azure環境の管理をパナソニックISへ委託したことで、我々のリソースを大幅に削減しつつ、安定性を向上させています。今後、クラウドならではのスケーラビリティを最大限活用しながら『攻めのIT』やコストの最適化を進めていきます」(渡邉氏)

DWHや機械学習でのPaaS活用も見据えてフルクラウド環境を最適化

白尾氏は今後、PaaSの活用も視野に入れて、最適化を進めて行くと意気込む。
「ビジネスを拡大しながらITに要する負荷とコストは維持という姿が、システム運用の理想形と考えています。安定性を維持しつつ、環境の最適化を進めていく上では、現在IaaSで構築している環境をAzure SQL DatabaseといったPaaSに置き換えていくことが有効でしょう。また、機械学習やAIといった先進ITについても、PaaSを活用すれば容易に実装できます。特に機械学習については、現在社内でも活用可能性について研究を進めており、今後Azure Machine Learningを活用する可能性は大いにあります。今後も、他社にはない『マイクロソフトらしさをもったサービス』をどんどん拡充していただきたいですね」

設立から約20年を迎えるGDOは、従来の枠組みにとらわれないビジネスの創造に取り組んでいる。フルクラウド化は、10年、20年先に続く事業の発展を支える基盤となるはずだ。

>Microsoft Azure領域のシステム概要図

Microsoft Azure領域のシステム概要図

会社概要

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン

設立:2000年5月1日
資本金:1,458百万円(2017年6月末現在)
売上高:193億09万円(2016年通期)
従業員数:534名(2017年6月末現在)
事業内容:インターネットで、ゴルフに関するメディア運営、用品販売、レッスン、ゴルフ場予約事業を展開し、ゴルフのワンストップサービス(見る・買う・行く・楽しむ)を支援
http://www.golfdigest.co.jp/

パートナー企業

日本マイクロソフト株式会社
日本マイクロソフト株式会社