導入事例「日東電工株式会社」

導入事例「日東電工株式会社」
経理、人事総務、調達、ロジスティクスの業務プロセスの
アウトソーシング(BPaaS)でビジネスの拡大と高付加価値のサービス提供を実現
ビジネスの成長とグローバル化、生産性の向上は多くの企業が直面するビジネス課題であり、ERPが重要な役割を担う分野でもあるが、その実現方法は多岐に渡り、昨今の技術革新を背景に全く新しいアプローチを試みる会社もある。2018年に創立100周年を迎える日東電工株式会社(以下、Nitto)は、自社の経理、人事総務、調達、ロジスティクスの業務プロセスを標準化し、さらにそれらの業務をアウトソースすることで経営資源を中核事業に集中化している。

変化に即応するための経営速度の向上

表 利彦 氏

表 利彦 氏
日東電工株式会社
経営インフラ統括部門
専務執行役員 CIO

Nittoは、経営資源の中核事業への集中を図るため、経理、人事総務、調達、ロジスティクスの業務プロセス改革を行い、クラウドサービスを活用した業務プロセスのアウトソーシングであるBPaaS(ビジネス・プロセス・アズ・ア・サービス)を採用した。構想開始から導入/本番稼動まで半年というスピードで実現し、新たな経費精算システムと間接材/設備購買システムは2017年1月より順次稼動を開始。また、IBM大連でのBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスも1月から一部開始し、順次拡大している。

オプトロニクス、インダストリアルテープ、ライフサイエンスなどの多様な分野において、国内外のグループ約100社で事業展開するNittoでは特にバックオフィス業務にばらつきがあり、会社全体として経営速度を上げ、ビジネス結果を向上させることが課題だった。 「金額による効果を示す以上に、経営が方向を変えたり、ものすごく早く変化する環境に合わせてすぐに動ける機動性と、柔軟に規模拡大に追従できることを目指しています。そのための原資は間接購買業務から出せないかと考えました」と経営インフラ統括部門 専務執行役員 CIOの表利彦氏は語る。

ビジネスを取り巻く環境は、経済的、技術的、政治的に急激に変化している。明日にも急転換を強いられる可能性がある事態に備えて自らを変革する必要があった。「この辺のスピード感と規模感を一気に上げるような経営基盤の変革には、標準化が重要になります」と語る表氏によると、Nittoは標準化が「苦手」だったという。同社に限らず、自社で独自に考案したプロセスや、製品で成長、成功を遂げている日本企業にとっては、海外からやってきた画一化手法は相容れないだろう。しかも、創業100年もの歴史を持つ老舗企業であればなおさらだ。しかし、変わりゆく環境と将来への強い思いが改革への決断を促した。

変革の指針は"筋肉質のビジネス基盤"の確立

浅沼 利明 氏

浅沼 利明 氏
日東電工株式会社
経理財務統括部 財務部長

今回の試みでは、コスト削減だけではなく、将来の成長を支える"筋肉質のビジネス基盤"をグローバルで確立することが必要となり、次のような全社としての方針に基づいて、改革をスタートした。

  • バックオフィスのような非競争要因の業務は外部専門サービスを積極的に活用する
  • グローバルで業務を標準化するために、実績あるクラウドシステムを活用する

実は、2016年前半のNittoはあまり景気がよくなかったという。

「2年半ほど前にCIOに就任した際にシステム刷新の必要がありましたが、それにはまず業務変革をしなければなりませんでした。そのため先に組織は作ったのですが、昨年たまたま景気が悪くなったことで、社長直下で『構造改革プロジェクト』が立ち上がり、一斉に4本くらいのピラーを立てて、プロジェクトが走り始めました。ピラーごとに専門の部署がある一方、組織横断的に動くのでやりやすいものでした」(表氏)

社長の命に基づいて開始されたプロジェクトではあったが、全員が初めての取り組みだったため、まずは従業員のマインドセットを変えることに一番注力したと経理財務統括部 財務部長の浅沼利明氏は語る。「業務変革や、自分から変わろうとする意識改革の必要性を周知することはプロジェクトと並行して実施しました。1年くらいかかりました」

また、業務の標準化プロジェクトのパートナー企業を検討の末、同社も含めた日本企業でのERP導入実績があるIBMを選定した。また、IBMは自ら標準化改革を実践してきており、その経験も評価して、同様の変革をより迅速に実施できるとの期待があった。「今は各チームの考え方も変わってきており、ほとんど動き始めました」(浅沼氏)

クラウド製品とIBMのBPaaSで間接業務をアウトソース

導入するアプリケーションは「いくつかを選定し、その中で一番当社に合い、早く導入できて、かつ将来的に必ずデファクトになるというシステムを選んでIBMに提案しました」と、表氏は振り返る。既存の事務の基幹システムに追加して、SAPの調達・購買クラウドSAP Aribaと、Concurの出張・経費管理クラウドConcur Travel & Expenseを採用した。これらのクラウドサービスを活用した業務プロセスのアウトソーシングBPaaSを日本IBMが請け負った。

SAP Ariba:支出の100%可視化と統制を実現しつつ、社員のコア業務へのシフトを実現するために、IBMのプロセスにおけるベストプラクティスとSAP Aribaのソリューション、ベストプラクティスを融合させることで、調達から購買のエンドツーエンドでの業務の効率化を日本の大手製造業において、かつ国内市場では初めて成功させた。カバーする間接材の範囲は、ITやMRO(Maintenance, Repair and Operations)のみならずサービス、マーケティングから通信などあらゆるカテゴリーに及ぶ。

Concur:各事務所に配置したスキャナーにSuica1 やICOCA2 等の交通系ICカードをタッチすることで乗車履歴が取り込まれ、Concurへ自動連携、精算時の手入力を省くことが可能。また、これまで経費精算のために事務所に戻る必要があったが、モバイルアプリを活用することで、今では移動途中でも経費申請・承認ができるようになり、生産性が改善されている。海外航空券の購入においてはConcurによる旅費ガイドラインの徹底遵守により、20%削減の実績が出ている(2017年4-6月実績)

日本IBM:グローバルで培ったクラウド・サービス導入のスキルや知見、業務変革の経験を活用し、構想策定に関するコンサルティングから、要件定義、システム構築までを一貫して実施、また業務プロセスのアウトソーシングBPaaSを提供することで、Nittoの成長戦略に沿った業務プロセスの変革を支援、経営資源の中核事業への集中を実現する。

「標準化は苦手だった」というNittoがデファクトスタンダードのクラウドソリューションを選んだのには大きな理由がある。 「デファクトを採用すれば、必ず周辺のサービスがAPIで連携され、データ連携が可能になるので、色々な拡張サービスの可能性に触れることができます」と表氏が語るように、さまざまなニーズに応じて即座に機能を拡張できることが重要だった。

真の改革は「変わった後がおもしろい」

業務プロセスをアウトソースすることには抵抗を感じる社員も少なからずいた。「業務の外出し」イコール「人員削減」というイメージがあるからだ。しかし、アウトソースすること自体が目的ではなく、その先に、より付加価値の高い業務への一層の注力があり、社員の再配置が行われている。「(アウトソースに)抵抗があった部分でも、実施してみることによって、次に新しいことを進められることがわかってきます。それに合わせて自分たちも変わっていく、というように回り始めれば、最初に表が申し上げた、機動的に動ける組織になっていくのではないかと期待しています」(浅沼氏)

業務変革はコスト削減だけではない。「いまだに誤解されていて、業務変革がネガティブだと思っている人がいます。リストラと勘違いしているのですが、我々はリストラは全くやっていません。人の就業は必ず保証しています。変わった後の方が実はおもしろいのです」(表氏)

今後の展望

今後Nittoでは、戦略的な出張・経費管理や調達管理により、間接業務の簡素化・効率化を実現するとともに、分析機能による間接費管理の高度化により、課題の早期発見と正確な意思決定を可能にし、経営基盤の強化を図る。

「今後は当然、AIやロボティクスなどの新しいテクノロジーをどんどん採用する予定です。これまではそういったテクノロジーの採用を考える業務ではありませんでしたが、今後手が空いた社員はそちらを考えながら、圧倒的に新しいテクノロジーを駆使して経営に貢献できるような業務メンバーになってもらえれば一番嬉しいですね」(表氏)

注1.「Suica」は、東日本旅客鉄道株式会社の登録商標です。
注2.「ICOCA」は、西日本旅客鉄道株式会社の登録商標です。

会社概要

日東電工株式会社

設立:1918年10月
資本金:267億円
売上高:連結7,677億円(2017年3月期)
従業員数:連結29,617名
事業概要:粘着テープなどの包装材料・半導体関連材料・光学フィルムなどの製造/開発
www.nitto.com

パートナー企業

日本アイ・ビー・エム株式会社
日本アイ・ビー・エム株式会社