マルチクラウドの導入事例

SAPインフラの最適化を実現する
富士通のマルチクラウドソリューション(第2回)
SAP認定のクラウドサービスは年々増加しており、基幹システムをクラウドに移行する企業が増えている。しかし、日進月歩でサービス内容や価格体系が更新されていくなかで、自社にとってどのサービスがベストなのかを見極めることは容易ではない。富士通では、SAPシステムの構築/運用実績と多彩なクラウドインテグレーションの強みを活かして、お客様に最適なクラウドサービスを提案している。

[ケース2:三井ホーム株式会社]
全システムをAzureに移行し、事業の成長に対応するシステムの柔軟性を確保

三井ホーム株式会社 情報システム部メンバー

三井ホーム株式会社 情報システム部メンバー
(左から)野本 氏、長野 氏、小原 氏、菊元 氏

高度な木造建築技術の注文住宅事業で成長を遂げて来た三井ホームは、近年リフォーム事業の強化に加え、老人介護施設、幼稚園や保育園、店舗など、人が集まる空間に木のやさしさを提供する大規模木造事業を積極的に手がけている。

一方同社は、新たなシステムグランドデザインのもと、インフラの再構築、積極的なIT投資、ITマネジメントの確立を掲げている。「市場の変化に俊敏に対応するため、システムをクラウド環境に移行し、柔軟性や俊敏性を高めたいと考えました。また、システム統合によって全体最適を図り、ITガバナンスとセキュリティも強化します」と、執行役員 情報システム部長の長野正人氏は語る。

三井ホームはビジネス用途での使い勝手に優れていることと、既存のWindowsサーバー環境との相性を考慮してAzureを採用した。SAPシステムの移行にあたっては富士通をパートナーに選定し、導入前の「アセスメントサービス」で移行作業や性能について検証した。 「まずは現在のSAP環境がAzure上できちんと動くか確かめ、当社独自の冗長化構成やバックアップの実現方法も富士通のSEと共に検討しました。DR環境を作ることも目的の1つでしたので、Azureの機能を使ってどのようにDRサイトまでデータをコピーするかといったことを検証しました」と、情報システム部 システムグループ マネジャーの小原哲夫氏は語る。

アセスメントで想定通りの性能向上と冗長性の確保が実現できることを確認した後、2016年9月から移行プロジェクトを開始。既存のSAP R/3 を最新のSAP ERP(ECC6.0)EhP 7.0に、サーバー環境もWindows Server 2008からWindows Server 2012 R2、SQL Server 2005からSQL Server 2014までアップグレードする大がかりなものだった。SAPシステムと連携している顧客情報基盤やデータ連携フレームワークも合わせてAzure上に移行するため、アプリケーションのテストや周辺システムとの連携テストには時間をかけたという。

複数回の移行リハーサルを経て2017年8月、Azure上の環境に移行し、運用を開始。DR環境はAzureの西日本リージョンに設置し、必要な時に電源を入れて立ち上げるコールドスタンバイで運用する方針とした。

情報システム部 システムグループ 主任の菊元公彦氏は、富士通の移行支援について次のように語る。 「アセスメントを通じて課題の抽出とともにアップグレード手順を確認できたことは、クラウド化を進めるうえで非常に有効でした。富士通には豊富な構築経験があったため、問い合わせの回答も迅速で、当社独自の冗長化構成の実現に関しても安心してお任せできました」

全システムのクラウド化とともに全体最適を推進

SAP ERPの最新バージョンへのアップグレードとAzureへの移行により、システム全体のパフォーマンスが向上し、通常のトランザクション処理やバッチ処理で2倍から5倍の時間短縮が実現した。10~20倍の高速化が実現しているものもあるという。

コスト面でも大幅な削減が見込めると情報システム部 システムグループ長の野本晴由氏は語る。 「従来のデータセンターで運用を続けた場合、各種設備の維持管理、サーバー機器の調達・運用、電源まで膨大な費用が発生します。さらにDR環境となると、建物や設備も含めて2倍のコストは覚悟しなければなりません。これらを含めた10年単位のトータルコストを考えると、従来の3分の2まで圧縮できると考えています」

クラウド化によって従来のデータセンターで発生していたハードウェア故障などの不安要素もなくなり、バックアップ環境も即座に用意できるという。現在は、データセンターで運用しているその他のシステムを順次Azure上に移行している。2018年1月までにはすべてをクラウド化して、データセンターを廃止する予定だ。

「システムの運用やサポート要員の業務もクラウド化で軽減されるため、優秀な人的リソースをビジネスの成長や売上拡大に向けたフロントエンドの業務システムの開発に投入していきます」(長野氏)

クラウド基盤は「暮らし継がれる家」を提供する三井ホームの経営を支え、今後も同社のさまざまなイノベーションに貢献していく。

[ケース3:ウシオ電機株式会社]
AWSを活用してパフォーマンス向上と運用負荷軽減を実現

ウシオ電機株式会社 IT戦略部門メンバー

ウシオ電機株式会社 IT戦略部門メンバー
(左から)飯田 氏、小暮 氏、須山 氏、小川 氏

1964年の創業以来、「光」を切り口とした産業製品を開発してきたウシオ電機。同社は、IT基盤として運用してきたSAP ERPをクラウドに移行し、インフラリソースの最適化、運用管理の効率化と自動化によるコスト最適化に加え、パフォーマンスの向上、インフラセキュリティの強化、BCP対策の強化を図ることにした。

複数のクラウドサービスを検討した結果、採用したのはAWSだった。「決め手はSAPシステムの圧倒的な運用実績による信頼性です。サーバーのラインアップも高性能型からコスト重視型まで幅広く、コストの最適化にもつながると判断しました」と、IT戦略部門 IT活用推進部 課長補佐の小川善弘氏は語る。

また、移行と運用保守のパートナーに富士通を選定した理由について、IT戦略部門 部門長 ITソリューション推進部 部長の須山正隆氏は次のように話す。 「AWSのサービスの進化は非常に早く、領域も多岐にわたるため、ベンダーの力量が問われます。富士通はAWSに関する知識が豊富で実力も申し分なく、今後の進化にも追随できると判断しました。導入後の運用体制も重要で、富士通のコンサルタントからはこれまでの実績を踏まえ、将来を見据えたAWSの設計、運用のあり方、DR環境などの提案をいただけました」

移行プロジェクトは2016年9月にスタートし、2017年のゴールデンウィーク後に本番運用を開始。移行したサーバーはSAP ERPの本番/検証/開発環境、インターフェース、運用管理を含めた13台で、サイジングの結果サーバーを10台に集約した。

プロジェクトは、ウシオ電機と富士通の良好なコミュニケーションによって円滑に進んだとIT戦略部門 IT活用推進部 部長の小暮正樹氏は評価している。「事前のサイジングで、現状のシステムの稼動状況を把握したうえで適切なリソースを確保していただきました。プロジェクト開始後も毎週ミーティングを行い、課題対応、進捗管理、影響調査などの報告を受けながら、非常にスムーズに進んだ実感があります。本稼動に向けた最終判定会議でも、ユーザーテスト、総合テスト、移行リハーサルなどの結果をもとに確実な移行計画を立てて、本稼動まで進むことができました」

パフォーマンスの大幅向上で月次と夜間処理の時間を短縮

SAP ERPのAWS移行により、サーバー更新の手間から解放されただけでなく、AWSの運用を富士通にアウトソーシングすることで、IT要員の負荷も軽減されている。「富士通にリカバリ対応まで依頼し、運用マニュアルの整備や自動化を進めた結果、深夜や休日などの時間外対応から解放されました。問い合わせ窓口も一本化して、AWSに関する問題はすべて富士通に対応してもらえるメリットは大きいと思います」と、IT戦略部門 IT活用推進部の飯田達男氏は語る。

システム面ではハードウェア環境の強化とインフラリソースの最適化によりパフォーマンスが大幅に向上している。処理時間は、夜間バッチ処理で40%削減、オンライン処理で30%削減、全体で30%強削減された。具体例としては、以前は就業開始時間にまでずれ込むこともあった夜間バッチ処理が短縮され、処理が間に合わないという不安と間に合わなかった時のフォロー対応がなくなった。その他、AWSのシンガポールリージョンに新たにDR環境を構築し、BCP対策も強化した。インフラのTCOも大幅に圧縮される見込みだ。

さらに工場の製造ラインでは、製造実績情報、品質情報、設備から取得した各種センサーデータなどを蓄積・解析し生産品質に繋げるシステム基盤としてもAWSを活用している。スモールスタートができ、トラフィックやデータ量の増加に合わせてサーバーを拡張するのに最適なクラウドサービスを検討した結果、SAP ERP基盤と同様にAWSの採用に至ったという。

今後は、今回のクラウド化で対象外としたWindowsサーバーとSQLサーバーのアップグレードを、OSのサポートが切れる2019年までに実施することを検討している。加えて、現在もオンプレミス環境で運用している各種システムも順次AWS上に移行していく方針だ。

「光のイノベーション」を通じて、豊かな社会・生活の発展に貢献していくウシオ電機のビジネスを支える基盤として、クラウドの活用はさらに重要度を増していくはずだ。

会社概要

三井ホーム株式会社

設立:1974年10月
資本金:139億70万円
売上高:連結2,549億5,400万円(2017年3月期)
従業員数:2,179名(2016年4月1日現在)
事業内容:注文住宅・賃貸住宅・医院建築・大規模木造・商業デザイン・商品販売・海外・リフォーム事業ほか
www.mitsuihome.co.jp

ウシオ電機株式会社

設立:1964 年3月
資本金:19,556,326,316 円
売上高:連結1,728億円(2017年3月期)
従業員数:連結5,963名、単体1,703 名(2017年3月末)
事業内容:光応用製品事業ならびに産業機械およびその他事業
www.ushio.co.jp

パートナー企業

富士通株式会社
富士通株式会社