導入事例「住友化学株式会社」

住友化学株式会社
アマゾン ウェブ サービス(AWS)上で
世界最大規模のSAP ERPの本番稼動を実現
住友化学は、大手総合化学メーカーとして石油化学部門、エネルギー・機能材料部門、情報電子化学部門、健康・農業関連事業部門、医薬品部門など幅広いビジネスを展開している。国内外に数多くの拠点、グループ会社を抱える同社は、ITの攻めと守りを積極的に高めるため、AWS上へのSAP ERP移行を決断。SAPS値20万という大規模な処理においても、オンプレミスと比べて遙かに優れたパフォーマンスを確保している。

業務革新とワークスタイル変革に向けた攻めのITへのシフト

土佐 泰夫 氏

土佐 泰夫 氏
住友化学株式会社
IT推進部 理事

2016年3月、住友化学は2018年度までの中期経営計画を発表した。その中では「IoT時代の業務革新とワークスタイル変革」に取り組むという基本方針が示されており、これを実現するために、IT部門として以下の3つの方針に沿って、攻めのITへシフトする必要があった。

  1. IoT時代の環境変化に対応したデジタル化による抜本的な業務革新を実現する
  2. 制御系システムを含めたサイバーセキュリティ対策をさらに強化するとともに、システム維持運用を安定的かつ最適なコストで行い住友化学グループのビジネスを支える
  3. システムを安定的に維持運用する『守りのIT』のみならず、住友化学グループのビジネス拡大、業務革新に資する『攻めのIT』を実行するための体制整備、人材育成を行う

一方で、従来の『守りのIT』にもサイバーセキュリティ面などの強化や、より堅牢で安定したシステム環境の整備も求められていた。また、M&Aによる積極的なビジネス拡大の方針もあり、変化にスムースに対応するにはITシステムを迅速に統合し企業規模の拡張にも柔軟に対応できるITインフラ基盤が必要だった。「グローバル化への対応、企業としてのコンプライアンスの確保は、今やIT無くして実現できません」とIT推進部 理事の土佐泰夫氏は言う。

将来のSAP S/4HANA移行を念頭にAWSを選択

住友化学は、『守りのIT』の効率化で得られる時間やリソースを、新たな『攻めのIT』へ投入するためにクラウドを活用すべきだと考えた。「クラウドであれば、常に最新技術が反映されたシステム基盤を利用できるとともに、IoTやAIなどとの整合性も高く、新技術導入のタイミングを逃すこともなくなります。さらに、場所やデバイスを問わずセキュアなアクセス環境を利用できるため、グローバルレベルでの情報連携もスムースに実現できると判断しました」(土佐氏)

同社が1997年から順次導入してきたSAP ERPが更新時期を迎え、当初はオンプレミス環境でのサーバー更新を検討。しかし、5年おきに発生するハードウェア更新には手間とコストがかかる上、クラウド化をさらに5年後の更新時期に行うと時代に取り残されてしまうリスクがあるとの判断から、新たなIT基盤としてAWSを選択した。

また、グローバルな情報可視化、顧客・取引先とのシステム・情報連携、事業/組織再編時のスピーディーな対応を見据えて、SAP S/4HANAをAWS上で利用することを決定し、海外の現地法人から順次導入を開始。既存のSAP ERPを随時AWSへ移設し、順次SAP S/4HANAに更新する計画が立てられた。社外にデータを置くことについては、「高度化する攻撃に対して、さまざまなセキュリティ認証を得ていて実績もあるAWSに任せたほうが安全で、むしろオンプレミスよりもセキュリティレベルは上がると考えました」(土佐氏)

AWSの採用理由として、SAP ERPおよびSAP S/4HANAの運用実績に加え、グローバルに拠点があり、地域ごとにインスタンスを分散配置できることも重視された。住友化学は、サービス停止やメンテナンスなどのサーバー運用の必要性と、EU地域における個人情報保護法対応などを考慮し、世界中のタイムゾーンをヨーロッパ、米国、アジアパシフィック(日本)の3つの地域に分け、本番環境のインスタンスの分散配置を決定。その上で、全体のコントロールと監視を日本に集約している。本社および日本国内のグループ会社31社が共同利用するSAP ERPについては2016年4月からAWS移行のプロジェクトが開始され、一部の国内グループ会社や北米、EU、インドなどのグループ会社を対象にグローバルテンプレートを活用するSAP S/4HANA on AWSの導入も並行してスタートした。

3日間の移行で世界最大規模のSAP ERPの本番稼動を実現

住友化学が国内で運用しているSAP ERPは、世界でも最大規模のものだ。モジュールは人事、会計、サプライチェーン、設備保全や分析ツールのSAP BWまで及び、国内システムだけで約5,700人のユーザーが利用している。当初はハードウェア更新タイミングでの移行を予定していたが、AWSなら最新技術の迅速な導入、自由でセキュアなデータ共有、ビジネスの変化への迅速な対応、セキュリティレベルの向上などのビジネスメリットに加え、ランニングコストが下がり⼗分なコストメリットもあるため、時期を前倒してSAP本体を2016年12月、周辺を2017年7月に行うことになった。

12月の3日間の連休という短時間で移行を完了するために、現行サーバーのデータベーストランザクションログをAWS側に定期的に転送し、データベースレベルの同期をあらかじめ行うログシップ方式でのデータ移行を実施。さらに、移行時に⼗分なネットワーク帯域を確保するためAWS Direct Connectの帯域を一時的に1Gbpsまで拡張した。さまざまなAWSサービスを適宜活用して移行を完了し、2016年12月26日よりAWS上で世界最大規模のSAP ERPの本番稼動が開始した。(なお、切替日程に余裕があった別プロジェクトの過去データ移行にAWS Snowballを活用した実績もある)

「国内のSAP ERPでは大量のバッチ処理が動いていました。SAPS値20万という大規模な処理をAWSで動かしたところ、ジョブの処理時間はオンプレミス環境の半分程度になっています。想定していたサーバースペックを少し落とした上でも、期待を大きく超える結果でした」(土佐氏)

これまでのオンプレミス環境では難しかった災害対策も実現。Amazon AMIおよびAmazon S3を使ったリージョン間コピーの機能を利用し、遠隔地のデータセンターに災害対策環境を構築した。

「AWSからの技術的な支援は大きなプラスになりました。エンタープライズサポートからのタイムリーなアドバイスや、AWSのTAM(テクニカルアカウントマネジャー)からリザーブドインスタンスの提案などもあり、短期間でかつコストを下げて移行プロジェクトを実施できました」(土佐氏)

また、AWSの仕組みを理解することが今後ITの方針を検討する上で重要と考え、運用管理の業務を行う住友化学システムサービスのメンバーも含め、AWSの教育プログラムに10名以上の技術者が参加している。

「IT部門の仕事は時代とともに変化しており、技術者自身も変わっていく必要があります。AWSの活用の広がりが、IT部門のメンバーの意識も変えている、と感じています」(土佐氏)

新テクノロジーへのシフトを踏まえてクラウドサービスを積極的に活用

住友化学では、ヨーロッパ、日本でのSAP ERPのAWS移行と並行して2016年10月には日本の子会社1社、2017年11月には北米のグループ会社で、グローバルテンプレートシステムを利用するSAP S/4HANA on AWSの稼動を開始しており、今後はヨーロッパ、インドにおいても順次SAP S/4HANA on AWSの稼動を予定している。

「IoTやAI、RPAを使わないと、競争に遅れることになるでしょう。すでにいくつかのPoCの取り組みを始め、本格展開の検討も進めていますが、すべてを自前で用意するのではなく、クラウド上に良いサービスがあれば積極的に利用していきたいと考えています」(土佐氏)

システム概要図

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会社概要

住友化学株式会社

設立:1913年
資本金:896億9,900万円(2017年03月31日現在)
売上高:連結1兆9,543億円
従業員数:連結32,536名(2017年03月31日現在)
事業内容:石油化学、エネルギー・機能材料、情報電子化学、健康・農業関連事業、医薬品
http://www.sumitomo-chem.co.jp/

パートナー企業

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
アマゾン ウェブ
サービス ジャパン株式会社