コグニティブ×クラウドを活用した導入事例

コグニティブ×クラウドを活用した導入事例
変革を促進する基幹システムは、柔軟かつ俊敏であるべき。
実現の鍵はコグニティブ×クラウドを活用した自律型ERP
ある日突然業界の垣根が溶解し、市場が蒸発するような環境変化が頻繁に起こっている。守りを固め、攻めを強化するには、情報を洞察に変え、予測に基づき先手を打って自社を変えていかねばならない。この時、システムは変化の制約となるのか、変化を促進するのか、この違いは大きい。「変化を促進するシステム」はいかにして可能なのか。先進企業の取組事例を元に、今姿を表しつつある「自律型ERP」と、それを支えるコグニティブ×クラウド技術を考察する。

もはや安全な場所はない

「シリコンバレーがやってくる(Silicon Valley is coming)」。2015年春、JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモンCEOが「株主への手紙」に記載した一言である。Fintechの衝撃と、それを迎え撃つ覚悟を端的に示した言葉として広く知られるものとなった。ロボアドバイザーによる低コストな資産運用。SNSなどあらゆる情報を活用した瞬時の融資判断。これらは確かに大変な脅威だ。しかもその脅威は、これまでの「業界」の外側から突然やって来て、瞬時に市場を奪う。もはや「ゆでガエル」になる猶予さえ与えられない。

この現象はあらゆる業界で起こっている。世界最大の配車サービス会社は、車を所有していない。世界最大の宿泊業者は、宿泊設備を保有していない。両社は、ソースコードだけで業界の壁を溶かしてしまった。「自分の業界は関係ない」。このような思考停止状態こそ気をつける必要がある。なぜなら、この"ウーバーライゼーション"(Uberization:ウーバー化)は、旧来の論理の外側からやってくるからだ。

「静的」なシステムから「動的」なシステムへ

サービスインに向けて最高の完成度を目指して作り込み、仕様は本番稼動後にフリーズする。安定稼動こそが、かつてのシステム開発の成功であった。つまり「静的」なシステムである。
ウーバー化に立ち向かうためには、このやり方はもはや通用しない。システムはビジネス環境の変化を前提とし、変わり続けるものとして構築し、稼動後も迅速に新要件、新技術を吸収しながら成長し続ける必要がある。すなわち「動的」なシステムである。
発想としては理解できるが、どうすればよいのか?一言で言うならば、「コグニティブ×クラウドによる自律型ERP」である。変化に対してルール・ベース・ロジックを張り巡らせる「自動化」とは異なり、「自律型」はもっと柔軟である。システムが変化を学び、自ら対応する柔軟性を「コグニティブ」で実現する。そして、環境変化によるデータ量や負荷の変動を吸収しながら、スマートフォンのアプリのように新たな技術、機能を取り込む俊敏性を「クラウド」で獲得する。このコンセプトをERPに取り込むことで、現在活用しているERPは、「自律型ERP」へと進化することができる。
先進企業では、既にさまざまな取り組みをはじめている。本稿では数ある取り組みの中から、業務の自律化と運用の自律化の2つの事例をご紹介する。

ケース1: 業務の自律化"コグニティブ・キャプチャー"

近年、コグニティブ技術によってOCRの認識率が向上し、実用レベルで効果を出しつつある。
流通業A社は、ERPを軸に業務標準化に取り組んできた。入力依頼標準フォームへ記入すると、帳票はスキャンされ、以降のオペレーションは全てオフショアで行う。ここまででも効率化の果実は十分に得てきた。しかし、結局は入力をする人が変わっただけで、人力であることは変わらなかったのである。

A社は、このオフショア作業の極小化に着手した。スキャンされた定形帳票データがOCRにより解析され、読み取ったデータが自動的に適切なシステム項目へ格納される。最終的なシステム登録の手前では目視確認を入れているが、作業は圧倒的に省力化された。

A社の次のチャレンジは非定形帳票OCRである。取引関係帳票など、自社で標準化できない請求書や領収書などに対してもOCRを適用し、適切な項目を自動判断して取り込ませる。ここでコグニティブ技術が柔軟性を提供することで、A社では帳票の新規追加などで都度システム変更やユーザー教育をする必要性から解放され、「自律型ERP」への一歩を歩みだした。

コグニティブ・キャプチャー概念図

図1: コグニティブ・キャプチャー概念図

ケース2: 運用の自律化"コグニティブAMS"

「動的なシステム」を阻害する要因はシステムそのものとは限らない。ユーザーからの問い合わせやバッチ処理のオペレーションなどいわゆる「運用保守業務」の量は無視できない。ERP構築プロジェクトに参画した有能な社員が、システムの第一人者となり、結果として運用保守の中心メンバーとして、継続的な改革を期待される役割を担うことは多いだろう。しかし、そのような重要な任務の割に、問い合わせやユーザー管理等の定常業務が重荷となってしまい、将来のビジネスに貢献するための戦略的な活動に時間を十分に割けなくなっていることはないだろうか。

製造業B社では、この運用保守の自律化を始めている。IBMのAMS(アプリケーション・マネジメント・サービス)には、現在25種類の「コグニティブAMS」メニューが存在するが、その中からまずは2次ヘルプデスクを自動応答でカバーする取り組みに着手した。汎用的なERP知識はあらかじめクラウドに存在している学習済みのものが活用できる。これに加えてB社プロジェクト固有の問い合わせを学習していくことにより、応答は洗練されていく。

将来はエンドユーザーからの直接応答への対応も視野に入れている。機械翻訳を組み合わせればグローバル対応も視野に入る。24時間365日のグローバルサポートを考えると効率化の効果も高いが、それ以上に、ユーザーの問い合わせに即答できることでユーザーのビジネスが止まらないことの価値も大きい。効果が実感できるまでにはまだ時間を要するが、「守り」ではなく「攻め」のシステム変革へと、社員が集中するための基礎固めは着実に進行している。

コグニティブAMS概念図

図2: コグニティブAMS概念図

自律型ERPへ向けた次の一歩を

近年コンシューマITにおいては、Fitbitのように、身につけているだけで活動を記録してくれる活動量計が支持されている。業務基幹システムの方向性もこれに似ているようだ。System of Record(SoR)と言われ、企業活動を正確に記録管理する事を主なミッションとしているERPは、人手を介さずとも変化に順応しながら企業活動が記録蓄積されていく「自律型ERP(Autonomous ERP)」になるだろう。自律型ERPは、コグニティブによって変化を学習し順応する柔軟性を、クラウドで変化への迅速な対応を実現する。最も大切な「人」は、インプットや運用などの「作業」から解放され、動的にITを組み換えながら新しいビジネスを生み出していく「攻め」の活動に集中することができる。

重要なのは時間軸である。時間との勝負になるこの変革を進めるためには、回り道を覚悟して経験を一から積み重ねていくアプローチでは手遅れになりかねない。迅速に成果をあげていくために、個別領域だけではなく多様な取り組み領域の中から最短距離で自律型ERPへ至るロードマップを描くなど、多くのプロジェクトを実践してきたIBMの知見を活用してほしい。

パートナー企業

日本アイ・ビー・エム株式会社
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