導入事例「住友重機械工業株式会社」

住友重機械工業株式会社
テスト自動化開発のノウハウを3カ月で習得し
システム導入やSP適用時の回帰テストを効率化
総合機械メーカーの住友重機械工業株式会社は、グローバル経営管理強化を図るためSAP Business Suite powered by SAP HANAの導入を進めている。今後のロールアウトやパッチ適用を見据え、テスト管理・自動化ツールのSAP Quality Center by HPによるテスト自動化開発、要員のスキル習得に同社が活用したのが、住友セメントシステム開発株式会社(以下、スミテム)の「要員育成型QC開発支援サービス」だ。

回帰テストの効率化に向けテストツールの運用体制を整備

細川 真理 氏

細川 真理 氏
住友重機械ビジネス
アソシエイツ株式会社
情報システム部
ビジネスプロセス変革グループ GL

住友重機械工業(以下、SHI)は、SAP HANA Enterprise Cloud上にSAP Business Suite powered by SAP HANAを導入し、本社と国内12拠点で新会計システムを稼動させた。さらに他の国内拠点、海外のグループ会社にも展開するほか、会計以外の生産管理系システムなどにも順次展開していく予定だ。

比較的新しい製品であるSAP HANAにはサポートパッケージ(SP)が頻繁にリリースされる。SHIグループのIT戦略を支える住友重機械ビジネスアソシエイツの情報システム部 ビジネスプロセス変革グループ リーダーの細川真理氏は「当初から、ワンインスタンスでシステム化を進めていく方針がありました。新しい会社をシステムに追加する場合やSPやEhPを適用する場合、影響範囲が大きく回帰テストが必要ですが、すべてを手動でテストするのはほぼ不可能であるため、自動化を検討する必要がありました」と振り返る。

SHIでは2014年にテスト自動化ツール「SAP Quality Center by HP」をスミテムの支援を受けて導入した。その時点でインフラや利用方針・開発規約などは整備されていたが、工数の見積り、テスト仕様書の記載項目の決定、開発工程の管理、テスト対象アプリケーションの自動化検証などが十分でなかった。また、ツールを使いこなす要員の確保も課題だった。

そこで同社は、自動化の推進と要員の育成に乗り出した。住友重機械ビジネスアソシエイツ 情報システム部 ビジネスプロセス変革グループ 主事の鈴木宏誌氏は「マネジメントはSHIが行い、フィリピンのグループ関連会社で開発と運用を実行したいと考えました。まず、SAP GUI for Windowsと、SHIで独自開発したWebシステムの業務テストの自動化をスコープとして、実装しながら課題抽出と工数計測を行うプロジェクトを立ち上げました」と語る。

自動化開発のマネジメントを含む26項目のスキルトランスファーを実施

鈴木 宏誌 氏

鈴木 宏誌 氏
住友重機械ビジネス
アソシエイツ株式会社
情報システム部
ビジネスプロセス変革グループ 主事

SHIは会計システムに1回目のSPを適用する2015年末を見据え、スミテムの「要員育成型QC開発支援サービス」を採用した。「当社のプロジェクトで取り組みたい課題の解決に適したサービス内容と、SAP Quality Center開発の豊富な実績・ノウハウが決め手になりました」(鈴木氏)

「要員育成型QC開発支援サービス」は、初回のテスト自動化開発をスミテムが全面的に支援し、導入企業の開発要員にスキルトランスファーを実施するサービスだ。経験豊富なスミテムのコンサルタントが支援しながら開発を進めることで、品質の高い自動テスト資産が構築できる。また、作業方法・手順を確実に習得することで、2回目以降の開発を自社要員のみでも効率的に実施できる。

2015年7月から始まったプロジェクトにはSHIから鈴木氏、フィリピンの関連会社から2名が参加し、3カ月にわたって自動化開発とスキルトランスファーが行われた。作業はスミテムで実施したため、SAPシステムの導入プロジェクトで利用していた仮想デスクトップサービス(Amazon WorkSpaces)を用いて、社外からテスト対象アプリケーションとSAP Quality Centerの開発環境にアクセスできるようにした。

「マネジメント面、インフラ面、設計手法、開発手順などの26項目について、マンツーマンに近い形で支援をいただきました。講義やOJTについては、『理解できない/一部理解できない/自己解決できる/第3者に説明できる』の4段階で理解度をチェックしました。『第3者に説明できる』レベルを目標とした項目は、一度の説明で目標レベルに達しないこともあったので、繰り返し説明を受けたり、実際の開発作業の中で理解を深めました」(鈴木氏)

今回は特に、今後の社内への引継ぎも考慮に入れ、自動化開発の詳細な操作手順書の作成と同時に自動化開発を行ったため負担も大きかったが、要員の努力で乗り切った。

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スキトラ理解度チェックシート

自社に合った自動化開発方法に調整し、コスト算出のための基礎データも収集

自動化開発のポイントは、開発をスムーズに進めるためのインプットを整備することと、効率的な開発でコストを抑えることだ。

例えば、回帰テストにおける業務シナリオのテスト自動化開発の場合、インプットの1つであるテスト仕様書はアプリケーション担当者がシステムフローに沿って作成するが、その詳細度は担当者の経験に拠るところが大きい。一方、自動化開発の担当者はアプリ担当者に比べると業務の知識に乏しいため、テスト仕様書の詳細度によっては正しい実装ができず、この溝をいかにして埋めるかがポイントとなる。

「テスト仕様書を詳細化してフィリピン側に引き渡すのか、あるいはそれはある程度までとして、自動化開発の最初のステップである操作記録作業までをアプリ担当者側で行うのか。双方がかけられる工数にも制限があるのでSHIの状況から最善な方法を探りました」(鈴木氏)

また、開発コストの低減も重要だ。今回のプロジェクトでは、自動化開発の各工程のコストを詳細に把握することと、開発支援ツールを使用してどの程度工数が圧縮できるのかの検証を行った。

例えば、参加メンバーが同じアプリ操作を記録する作業を行い、作業時間の平均値を出して工数とした。属人性を排除したデータを採取するために必要なプロセスだ。

各工程に必要な工数を算出後、さらなるコスト圧縮を図るため、スミテムの自動化開発支援ツール「QC-ACCEL」も利用した。スクリプトの自動編集や情報の一括登録機能などにより工数削減効果が得られるため、このツールの利用も開発手順に盛り込んだ。

プロジェクトを経て得られた自動化開発の効果

SHIは、3カ月のプロジェクトを通してテスト自動化開発の体制を確立した。自動化開発の体制をさらに強固なものにするには、スキルを習得した要員から他のメンバーにスキルトランスファーを行う必要があり、現在はそのステップを実施中だ。元々は外部に依頼せざるを得なかった自動化開発のトレーニングも、プロジェクトを経た今なら社内要員のみで完結できる。

また、今回のプロジェクトで得た自動化開発各工程の実測値は、今後のテスト開発工数算出の根拠として活用できる。「テスト自動化にどの程度コストがかかり、どれくらい回帰テストがあれば自動化によるコストメリットが出るのか判断できる材料が揃いました。メリットがあると判断できれば、回帰テストの機会自体も増えるし、システムの品質向上にも繋がると考えています」と細川氏は期待を寄せる。

技術面では、自動化対象のスコープが拡がった効果も大きい。例えば、テストシナリオの途中にSAPシステムのバックグラウンド処理が含まれていても、手作業を挟むことなくテストが自動的に実行できるようになった。

「当初、『自動処理→バックグラウンド処理→自動処理』という流れのテストシナリオの自動化は諦めていましたが、スミテムからバックグラウンド処理を自動化するノウハウを得られたのは嬉しい驚きでしたね。今では、さまざまなテストシナリオを一気通貫で自動化できるようになりました」(鈴木氏)

SAP以外にもスコープを拡大しテスト全体の工数を圧縮

SHIでは今後、テスト自動化スコープを拡大していく方針を掲げている。2015年12月に会計領域のSP適用に向けた自動テストを行い、生産管理系の領域でも今後自動テストを実施する計画だ。また、アプリケーション面では、SAP以外の業務系システムについてもWebアプリケーションを中心にテスト自動化の開発やマニュアルの整備を続けていく。

現在もグローバル事業の拡大を続けるSHIのSAPシステム活用は、まだ始まったばかりだ。今回獲得したテスト自動化のノウハウは、SHIグループのシステム運用に大きく役立つに違いない。

会社概要

住友重機械工業株式会社

創業:1934年11月1日
資本金:308億7,165万円(2015年3月31日現在)
売上高(連結):6,671億円(2014年度)
事業概要:機械コンポーネント、精密機械、建設機械、産業機械、船舶、環境/プラントの研究/開発/製造/販売
http://www.shi.co.jp/

パートナー企業

住友セメントシステム開発株式会社
住友セメントシステム開発株式会社