導入事例「株式会社堀場製作所」

株式会社堀場製作所
2年間で海外12カ国14法人にSAP ERPの11モジュールを
グローバルワンインスタンスで展開
世界シェア80%を有するエンジン排ガス測定装置をはじめ、血液検査装置、pHメーターなどの分析・計測装置を手がける株式会社堀場製作所(以下、堀場製作所)。積極的なグローバル戦略を進めてきた同社では、5つの事業部間の連携を強化し、さらなるグループ一体の経営を促進するため、基幹システムのグローバル統合を実施しました。導入パートナー、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、IBM)の協力を得てグローバルテンプレート構築とロールアウトを進め、本社を含む13カ国18法人での本稼動を実現しています。

基幹システムのグローバル統合による経営の一体化

中峯 敦 氏

中峯 敦 氏
株式会社堀場製作所
執行役員
業務改革推進センター
センター長

1953年に設立された堀場製作所は、約1,000種類の製品ラインアップを有する総合分析・計測機器メーカーです。現在、世界27カ国に49社を展開し、約7,000名の従業員体制で分析・計測システムを提供しています。2016年春には滋賀県の琵琶湖西岸に開発・生産拠点「HORIBA BIWAKO E-HARBOR」を完成させ、主力製品の開発と生産機能を集約します。

早くからグローバル市場を視野に入れていた同社は、1970年代から米国の会社設立を皮切りに海外に進出。その後米国とドイツに子会社を設立し、1990年代にはフランスの分析装置メーカー2社を立て続けに買収するなど、戦略的なM&Aを推進してきました。2000年代に入ると、海外の生産/販売・従業員比率が過半数を突破し、HORIBAグループの連携強化が経営課題となります。

そこで同社は、5つの事業部門(自動車・環境・医用・半導体・科学)と3つの地域(アジア・欧州・米州)をセグメント化した「マトリックス経営」を推進し、バランスの取れた収益構造を目指すことにしました。

そのためにはITシステムの統合が必須と判断し、それまでメインフレームで個別運用していたシステムを改め、SAP ERPの導入を決定。2007-2008年にかけて国内4社(本社、子会社3)と海外4社(中国2社、ドイツ、イギリス)の8社で稼動を開始しました。

その後も海外グループに展開していく計画でしたが、SAP ERPのパッケージ標準に合わせることなく各国の要件を積み上げ、システムが肥大化してしまったことで、困難に直面します。堀場製作所のビジネス領域は幅広く、事業内容、拠点によって受注生産型もあれば量産型の製品もあるなど、業務プロセスのパターンが多岐にわたります。そのため、拠点ごとの個別最適で設計したシステムでは業務統合ができないという課題が発生しました。さらにリーマンショックによる経営環境の悪化も重なり、多額のコストと時間がかかる海外展開はいったん凍結されます。

それでも、ビジネスの拡大を続けていく中で業務/データ/システムの標準化が不可欠という判断から、同社は2011年にグローバルシステム基盤統合を再開しました。執行役員で業務改革推進センター センター長の中峯 敦氏は「過去の反省を活かし、SAP標準をベースにグローバルで統合された業務管理とともに、今後のビジネス変化にも柔軟に対応できる基幹システムの確立を目指しました」と語ります。

業務、データ、システムの標準化を後押ししたIBMのサポート体制

橋本 純平 氏

橋本 純平 氏
株式会社堀場製作所
業務改革推進センター
プロジェクト担当マネジャー

「New GEO(Global ERP for One Company)」と名付けた導入プロジェクトは、2011年秋からスタートします。導入パートナーには、数社の提案を検討した中からIBMを選定しました。業務改革推進センター プロジェクト担当マネジャーの橋本 純平氏は、選定理由を次のように説明します。

「IBMの提案はSAP標準を尊重しつつ、HORIBAグループの事業に欠かせない固有のプロセスはグループ標準のテンプレートで対応するというものでした。グローバルプロセスの標準化が難しい場合はデータ環境の統合だけに留めることも視野に入れていた中で、IBMからは『プロセス標準化は私たちが成功させます』という確かな提案がありました。日本IBMをトップに、米州、欧州、アジアのIBMグループから支援が得られるグローバル導入のノウハウ・プログラム管理術と、豊富な導入経験、コンサルタントの高いコミュニケーション力と英語力により、プロジェクトがスムーズに推進されることに期待を持ちました」(橋本氏)

こうして始まったNew GEOプロジェクトは3カ月の分析フェーズを経て、グローバルテンプレートの設計に入ります。その際、実現の可能性を議論するために、グループのアジア、米州、欧州の拠点に調査票を送付し、各社の要件を収集しました。さらに、各国のキーメンバーが日本に集結してミーティングを10週間実施し、IBMのコンサルタントを交えて業務プロセスの整理とシステム化の範囲を検討しました。

「各拠点の要望を採り入れながら進める検討フェーズは想像以上に長い期間を要しました。しかし、各国のキーマンが直接顔を合わせて議論を戦わせたことで意識の共有が生まれ、それ以降の工程では同じ方向に向かって進めることができました。会議をすべて英語で行う中で、高い語学スキルを持つIBMのサポートがあったことも助かりました」(橋本氏)

わずか2年で海外12カ国14法人への展開を完了

奥山 芳樹 氏

奥山 芳樹 氏
株式会社堀場製作所
業務改革推進センター
業務改革推進部 副部長

堀場製作所はテンプレートの設計/構築を経て2013年4月から海外拠点へのロールアウトを開始しました。ロールアウト時は、グローバルテンプレートのカスタマイズ要件の抽出と適否判定、プログラムの作成、データ移行、テスト、運用プロセス、ユーザー教育など、導入で必要となるアプローチをひととおり標準化し、導入期間は難易度の高い場合を除いて8カ月で統一しました。

ロールアウトは、システム化のニーズが高い欧州拠点を先行し、最大5つの拠点で並行導入を行いながら、2015年4月までの2年間で欧州の科学事業、自動車事業、医用事業、アジアでは韓国、中国、インド、米国・カナダの合計12カ国14法人に対して、SAP ERPの11モジュール(SD、CS、MM、PP、PS、QM、WM、HR、FI、CO、DMS)を展開しました。BIソリューションにはSAP BusinessObjectsを採用。他システムとの連携にはETLツールのSAP Data Servicesを活用しています。

海外拠点へのSAP ERP導入のポイントは、堀場製作所本社のIT部門とIBMによるコアチームがテンプレートを入念に作成し、展開スケジュールの雛形まで標準化したことです。これにより、IBMのローカルチーム(US、フランス、ドイツ、韓国、中国、インド)はその枠組みに従って展開を進め、短期導入を実現できました。ローカルチームが導入を進める中でも、要件の決定権はすべてコアチームが握ることで高い標準化を維持しながら、オンサイトのサポートによりコストとスケジュールを管理しました。

ただし、グローバルテンプレートは、柔軟性を持たせるために事業間の共通要件のみをカバーし、拠点の個別要件についてはロールアウト時にそれぞれで吸収していく方針で、業務プロセスが標準とは異なるグループ会社への展開時には、ギャップの解消も必要になりました。

「特に、医用検査装置を手がけるフランスの子会社では、医事・薬事関連の法規への対応、消耗品・試薬品などの大量生産への対応、さらに特有の商習慣への対応など、テンプレートだけではカバーできない要件が多数ありました。そのため想定以上の追加や改造が発生しましたが、コアチームの日本IBMがフランスの子会社やIBMのローカルチームと折衝し、問題の解決に導いてくれました」(中峯氏)

図版:New GEOプロジェクト 導入スケジュール

図版:New GEOプロジェクト 導入スケジュール(クリックすると拡大します)

特性が異なる5事業のワンインスタンス統合を実現

海外展開を終えた2015年4月からは、国内で稼動していたSAP ERPの再構築プロジェクトに着手しました。国内の導入は、堀場製作所のIT部門が中心になって進めましたが、要件定義までは個別要件が増えないようIBMのサポートのもと、プロジェクト管理についてのアドバイスを参考に土台を作ったといいます。また、最後の難所となるデータ移行についてもIBMから1名がリーダーとして残り、円滑なGo Liveにつなげています。2016年1月に国内拠点のサービスインを迎え、海外と合わせて計13カ国18法人のグローバル統合が実現しました。日本での再構築について、業務改革推進センター 業務改革推進部 副部長の奥山 芳樹氏は次のように語ります。

「既存システムに慣れた日本のユーザーからも個別対応の要望は多く寄せられましたが、グローバル標準化を維持する姿勢を徹底しています。そして、海外展開時のスキルトランスファーによってIBMから取得した標準化の手法、カスタマイズプログラムの作成ノウハウ、コンサルティング技術を活用しながら導入を進めました。国内を自社で対応したことによって導入コストが圧縮でき、稼動後のコスト軽減にもつながっています」

New GEOプロジェクトにより、特性が異なるHORIBAグループの5つの事業と、18法人のワンインスタンス統合が完成しました。それによって主要なサプライチェーン(特注生産、注文仕様生産、注文生産、受注生産、見込生産)への対応が1つのシステムで可能になり、サービスモデルの統合が実現しています。その結果、中長期経営計画で掲げてきた「マトリックス経営」の基盤が整備され、大きな一歩を踏み出すことになりました。プロジェクトを終えて、橋本氏はIBMを次のように評価しています。

「途中IBMさんと厳しい議論をする局面も多々ありましたが、最終的にはコンサルタントの能力の高さ、当社のビジネスに踏み込んで意見を言う提案力、グローバルのチーム力とそれをまとめるマネジメント力のおかげで、難易度の高いプロジェクトを完了することができました。今後さらにレベルの高い地域を横断するシームレスな支援を期待しています」

IBM Watson Analyticsでプロジェクト原価を分析

堀場製作所は、現在2020年までの5年間を対象とした新・中長期経営計画「MLMAP2020」のもと、売上高2,500億円、営業利益300億円の達成と、新分野・新市場への展開、企業成長の加速の実現を目指していくことを打ち出しています。IT面からは、開発、設計、生産、マーケティング、販売、購買物流、サービスと、幅広い業務にわたって収益の向上に直接貢献するIT活用を促進していきます。

そのうちの1つが分析力の向上です。その一環として、コグニティブ技術を活用して「データ分析」を簡単に可能としてくれるクラウド型ツール「IBM Watson Analytics」を用いたパイロット分析を実施。プロジェクト原価をWatson Analyticsで分析することにより、財務データを分析しているだけでは見えてこない原価低減/利益増大要素を割り出しました。結果はすでに業務部門にフィードバックされています。

「CRMによる営業支援、予実管理の精緻化、さらには製造部品の個々のデータを利用して寿命を割り出す品質管理の向上など、確定データを作るための業務にAnalyticsの利用を拡大し、担当者が即座に判断を下して行動に移せるようにしていきたいと思います」(中峯氏)

さらに次のステップとして統合ビジネス/データ/IT基盤であるSAP ERPを基盤に、よりビジネスに貢献するITを目指し、モバイルやIoTなどの先進技術を活用した取り組みを進めています。今後も、新たなビジネスやサービスの創出に向けた堀場製作所のチャレンジは続いていきます。

会社概要

株式会社堀場製作所

創業:1945年10月17日
資本金:120億1,100万円(2015年3月31日現在)
売上高(連結):1,708億9,800万円(2015年度)
事業概要:自動車計測機器、環境用計測機器、科学計測機器、医用計測機器、半導体用計測機器の製造販売。分析・計測に関する周辺機器の製造販売。分析・計測に関する工事、その他の建設工事ならびにこれらに関する装置・機器の製造販売
http://www.horiba.com/

パートナー企業

日本アイ・ビー・エム株式会社
日本アイ・ビー・エム株式会社