導入事例「株式会社日立製作所」

株式会社日立製作所
32カ国400社(612拠点)に導入したグローバル財務会計システムを統合し、一斉稼動を実現
社会イノベーション事業をグローバル展開する日立グループは、連結経営を支えるIT基盤のグローバル化を進めており、国際会計基準への対応や連結会計の早期化という課題に直面していた。そこで、32カ国400社の財務会計システム統合を決断。難易度の高い大規模プロジェクトであったが、SAPユーザーとしての長年の経験、SAPソリューションプロバイダーとして培ってきたノウハウを活かして一斉稼動を実現した。統合によって連結経営IT基盤を強化し、内部統制の管理効率化やITコストの軽減に寄与している。

グローバル経営強化を見据え国際財務報告基準(IFRS)に対応

和田 耕治 氏

和田 耕治 氏
株式会社日立マネジメント
パートナー
取締役
財務サービス事業部長

渡邉 弘士 氏

渡邉 弘士 氏
株式会社日立マネジメント
パートナー
財務サービス事業部
副事業部長 兼
システムソリューション部 部長

売上高約10兆円、従業員約33万人を擁する日立グループは、2015年中期経営計画で「成長の実現と日立の変革」を掲げ、事業をグローバルに拡大しながらイノベーションを進めている。直近の海外売上比率は50%を越え、連結子会社の数は70%以上を海外が占めている。海外拠点の増加とともに、システムのグローバル連携が課題として浮上してきた。

日立グループでは、2000年に日立製作所(国内)でSAP ERPを採用した財務会計システム「hi-Fronts」を構築し、順次、国内関連会社に展開してリアルタイム会計処理を実現した。その後、2008年に中国、2010年にアジア、欧米にも「hi-Fronts」を展開。その結果、各地域における内部統制は強化され、業務の効率化も進んだが、地域単位でシステムを構築ならびに運用していたため、勘定科目や財務プロセス、権限等が地域単位でのローカルな統一にとどまっていた。

しかしグループ経営を推進していくには、グループ会社の会計情報を素早く集約し、連結決算を早期化することが必須だ。「日立グループの財務プロセスは複雑で、国内外約1,000社の連結決算日程をいかに短縮するかが長年の課題となっていました」と、株式会社日立マネジメントパートナー 取締役 財務サービス事業部長の和田耕治氏(プロジェクト当時:財務部門における財務系システムのプロセスオーナー)は振り返る。

加えて、新興国に拠点を拡大していくためにはコンプライアンスの強化も重要となる。日立グループでは2006年度に米国版SOX、2008年度に日本版SOXを導入していたが、グループ全体の内部統制レベルをさらに高める一方で、内部統制の整備に対する負荷を軽減する必要もあった。

経営陣もシステム基盤の重要性を理解していた。株式会社日立マネジメントパートナー 財務サービス事業部 副事業部長 兼 システムソリューション部 部長の渡邉弘士氏(プロジェクト当時:財務部門におけるプロジェクトマネージャー)は次のように語る。「2011年度からグループ横断で始めたコスト構造改革『日立Smart Transformation Project』において経営トップから要望が上がったのは、海外展開時に即座にビジネスが始められる環境を用意すること、そしてグローバル化が進んでもオペレーションコストは増大させないことでした」

このような要望に応えるため、グローバル共通の連結経営IT基盤を構築することを決断した日立製作所は、日本・中国・アジア/欧米の3システムを統合し、さらに国際財務報告基準(IFRS)を適用するプロジェクトを立ち上げた。プロジェクトの目的を、株式会社日立製作所 ITビジネスサービス本部 経営情報システム本部 経営情報システム部 部長の小林俊介氏(財務系システムのトランスフォーメーションエンジニア兼、IT部門におけるプロジェクトマネージャー)は次のように語る。「グローバル統合によって、勘定科目や企業コードといった各種コードを統一し、グループ全体の事業経営指標を横断的に可視化することを目ざしました。また、システム開発・保守・運用をコーポレートが一元的に集中管理することで、グループ全体のITコスト、システム監査コストの低減を図りたいと考えました」

グローバル統合を見据えた開発方針の明確化

小林 俊介 氏

小林 俊介 氏
株式会社日立製作所
ITビジネスサービス本部
経営情報システム本部
経営情報システム部 部長

米家 信行 氏

米家 信行 氏
日立製作所 産業・流通ビジネスユニット
エンタープライズパッケージ
ソリューション本部
SAPビジネスソリューション部
主任技師

財務会計システムをグローバルに統合するにあたり、日立グループが定めた開発方針は、システムアーキテクチャをグローバル共通領域と地域固有領域とに大別し開発資源を適切に配分することであった。具体的には、グローバルに共通するSAP ERPの標準機能と各国共通のアドオンは、プロジェクトチームが主体となって統制および開発を行った。一方、地域固有の要件については、地域統括本社が主導で管理し、各国の法制改定を速やかにキャッチし、開発に繋げ対応している。

プロジェクトチームが担った共通部分の開発では、勘定科目、財務業務プロセス、権限管理、企業コードを統一した。その中で最も苦労したのが勘定科目コードの統一だったという。
「各社に勘定科目の調査を依頼し、その情報を精査していきましたが、従来は地域ごとのシステムであったため、科目の粒度、コードの体系等について一部使用ルールが異なっていました。また今回IFRS基準と各国ローカル基準の要件を満たす勘定科目が必要だったため、統一するのに約2年を要する大変な作業となりました。さらに、勘定科目は単体決算以外にも連結決算用に使用する勘定科目とコードルールを一致させました。従って、連結決算で必要な科目を意識しながら整備を進めました」(渡邉氏)

共通アドオンについては、入力データのチェック項目、帳票類、内部統制支援、さらには各社の上流システムや連結決算システムとのインターフェースの統一を行った。
「インターフェースを統一した意義は大きく、会計データの起点となる販売管理や購買管理といった上流システムから、後方の連結決算システムやデータ利活用システムまで、地域ロケーションや事業セグメントに依存することなくシームレスに連携できることによって、セグメント管理強化と連結経営の両立、IT投資の集約に繋がりました」(小林氏)

一方、各国の会計制度や税制など、地域固有部分の開発については、プロジェクトチームを中心に、地域統括本社の財務部門とIT部門、さらにはSAPシステムをお客様に導入している事業部門であるエンタープライズソリューション事業部が加わり対応した。日立製作所 産業・流通ビジネスユニット エンタープライズパッケージソリューション本部 SAPビジネスソリューション部 主任技師の米家信行氏(プロジェクト当時:アジア/欧米地域への展開を主導したプロジェクトリーダ)は、「2010年から2013年にかけて、当時、現地法人からは固有要件に対応して欲しいという要望も多数あがってきましたが、コミュニケーションを密にしながら理解を求め、プロジェクトにて一元的に策定した開発ポリシーに基づき、アドオン数は必要最小限に抑制しました」と語る。

グローバル財務会計システムを統合し一斉稼動を実現

財務系システムの推進内容

(クリックすると拡大します)

2013年までに32カ国400社に導入したグローバル財務会計システム「hi-Fronts」は、2015年4月にグローバル統合し、新しいグローバル財務会計システム「hi-Fronts G」を一斉に稼動を開始した。勘定科目の体系をすべてIFRS基準で統一したうえで、SAP ERPの複数元帳(New-GL)に切り替えている。

リスクの高い「一斉切り替え」を選んだ理由について、渡邉氏は「2015年4月を境にグループ全体でIFRS基準に切り替える大方針があったためです」と説明する。それでも実施に至るまでには、2014年7月にシンガポールと中国、10月に日本でパイロット稼動させた後、全地域の四半期決算データを2度にわたり新しいグローバル財務会計システム「hi-Fronts G」に取り込み、四半期決算のリハーサルを実施して正常な数値が出力されるかどうかを確認している。「400社分の既存データを移行してチェックする作業には大きな労力を要しましたが、新システムへのデータ移行ツールを作って万全を期しました」(和田氏)

さらに、移行後のシステム活用をスムーズにするため一定のトレーニング期間を設けたことに加え、ワークショップを通じた情報共有やエンドユーザーの理解度テストなどを随時実施しながら、システムの浸透を図ったという。まさに、グローバル統合は一朝一夕に実現できたわけではなく、そこに至るまでの各国・地域の単位での展開を通じて蓄積した数多の実績と経験知、事前準備により、一斉稼動時は大きなトラブルもなく、順調な滑り出しを迎えた。

32カ国400社という大規模な統合となった今回のプロジェクトの成功要因は、トップダウンで意思統一を図ったことが大きい。「CFOがIFRSへの移行を掲げていたこともあり、財務部門とIT部門が一体になって進めていこうという土壌が生まれました」(和田氏)

また、グローバル統合以前の海外展開に際して培った「地域軸」と、日立グループの「事業セグメント軸」を組み合わせてバランスを取りながら進めたことも功を奏した。「以前の財務会計システムは、地域統括本社が中心となり地域軸にて展開していましたが、今回の一斉稼動プロジェクトでは事業セグメントという新たな軸を併用、つまり地域統括本社のサポートと親会社のガバナンスを併せて実践することによって、大方針である2015年4月の一斉稼動を遵守することができました」(小林氏)

連結決算の日程短縮とデータ整合性の確保が実現

サービスインから約1年を経て、グローバル統合の効果として、IFRS対応による内部統制の管理効率化や財務業務の標準化が実現している。連結決算でデータを集計する際には、本社側で会計基準を変換して揃える必要がなくなり、データの整合性も確保されている。連結決算の日程も短縮され、経営幹部への報告が従来に比べて短期間で出せるようになったという。和田氏は「システムは導入して終わりではなく、入れた後にどのように活用していくかがカギになります。そのためにも、過去値を比較したり、財務上の異常値を発見しながら財務諸表の信頼性を高めていくことがこれからの課題です」と語る。

現在プロジェクトは運用フェーズに移行しているが、運用保守作業の高効率化や自動化に取り組むとともに、既に事業部門がお客様に提供している「Global AMO」のスキームとリソースを活用するなどしてTCOの持続的低減に取り組みながら、地域統括本社と連携し、サービスを実現している。

蓄積したノウハウを整備してお客様のグローバルシステムをサポート

今回のグローバルシステム統合プロジェクトは完了したが、今後は蓄積したノウハウや運用体制を活用しながら、現在も未導入の地域や子会社への新規導入や事業再編対応を進めていく計画だ。一斉稼動の副産物として、遠隔サポートの方法論やノウハウを確立できたため、今後、導入先の拠点ごとにオンサイトで人的リソースを割りあてる必要はなくなっているという。

今後も日立グループでは、最新のテクノロジーを活用することで業務のあり方を変え、テクノロジーで処理できる部分を拡大しながら、人間が行うべき業務を支援していくという。その中で、次世代エンタープライズシステムである「SAP S/4HANA」の導入に向けた準備も進めている。「SAP S/4HANAによってさらに明細情報を保持し可視化することができ、すべての財務諸表のチェックができるようになるとの仮説を立てており、現在、実機を用いたPoC(Proof of Concept : 概念実証)の実施を計画しています」(小林氏)

一方で、今回のプロジェクトで蓄積したノウハウは、お客さま向けのソリューションとして整備し、日立グループと同様に海外展開の課題を抱える企業をサポートしており、既に実績も有している。米家氏は「SAP Best Practicesをベースに実務的な業務シナリオや日立グループへの展開で蓄積した各国固有の要件、法定帳票などの日立独自のナレッジも追加したテンプレート『HITRY/Global』、『Global AMO』などの各種ソリューションを活用しながら、お客様のグローバルシステム構築をサポートしていきます」と力を込める。

経験豊富な多数のSAPコンサルタントを有するソリューションプロバイダーであり、SAPのグローバルユーザー企業でもある日立製作所は、今後もグループ一丸となって独自のチャレンジに挑み、テクノロジーの可能性を追求していく。

hitachi-fig-02.png

日立のSAPソリューションマップ

会社概要

株式会社日立製作所

設立:1920年2月1日(創業1910年)
資本金:4,587億9,000万円(2016年3月末現在)
売上高:連結 10兆343億500万円(2016年3月期)
事業概要:情報・通信システム、社会・産業システム、電子装置・システム、建設機械、高機能材料、
オートモティブシステム、生活・エコシステム、金融サービスなど
http://www.hitachi.co.jp/

パートナー企業

株式会社日立製作所
株式会社日立製作所
  • JSUG入会のご案内JSUGNET利用登録について
  • JSUG事例 FactDB
  • JSUGの理念