導入事例「ローランド株式会社」

ローランド株式会社
SAP ERPのアップグレードとともに
運用のアウトソーシング化でシステムインフラ運用負荷を軽減
電子楽器の総合メーカーとして、電子ピアノ、シンセサイザーなど多彩な商品を世界中に展開しているローランド株式会社。同社は、2008年に三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(MDIS)をパートナーに、SAP ERPをビッグバン導入した。2012年にはSAP ERP 6.0にアップグレードするともに、オンプレミスで運用していたインフラ環境を三菱電機グループのデータセンターに移行。ハウジング対応と運用保守をアウトソーシングすることで、システム運用を大きく効率化している。

製造業向けERPテンプレートを活用して短期間での本稼動を実現

藤田 一朗 氏

藤田 一朗 氏
ローランド株式会社
情報システム部長

1972年設立のローランドは、電子楽器の黎明期から世界の音楽シーンをリードしてきたトップメーカーだ。電子楽器・業務用音響・映像機器の「Roland」、ギター関連機器の「BOSS」など、同社ブランドの機器は世界中の音楽関係者から高く評価されている。

同社のビジネスを支えるIT基盤は、メインフレーム上に会計、生産、販売などのプログラムを個別に構築して運用されてきた。しかし2000年代に入り、システムの老朽化と複雑化が進み、運用管理の負担が顕在化。そこで同社は、リアルタイム処理による経営の可視化、内部統制の支援、サプライチェーンの最適化を実現するシステムとしてSAP ERPの採用を決定。2008年に会計、生産管理、販売管理、在庫管理、データウェアハウスの機能をビッグバン導入した。

導入に際しては、MDISのERPテンプレートMELEBUS(メリーバス)を採用し、短期間での本稼動を実現している。MELEBUSは、MDISの製造業向けノウハウが凝縮されており、ローランドが求める「見込み生産」や「半見込み生産」に標準で対応していたことが採用の決め手となった。情報システム部長の藤田一朗氏は「同じ製造業である三菱電機など多くの製造業で導入され、運用実績も豊富なことから、信頼性が高いと判断しました」と語る。

要件定義、開発工程では、個別最適化されていた業務プロセスを、SAP ERPに合わせて標準化しながら、同社独自の機能も追加していった。たとえば、ピアノなど機器の据付手配を含む受注処理、音楽教室対応の受注処理などの業務に対応。また、連休明けの受注量増大、品目別総平均実施のための標準原価差異振分け処理なども行っている。

ビジネス変化への柔軟な対応を目指してSAP ERPをアップグレード

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SAP ERP導入から数年を経て、ハードウェアおよびアプリケーションのサポート期限が迫ろうとしていた。そこでローランドは、サーバーをリプレースするとともに、最新のSAP ERP 6.0にアップグレードし、将来のビジネス変化にも柔軟に対応できる経営基盤の構築を目指す。「収益性の向上や業績安定化を実現するためには、経営基盤であるSAP ERPを安全に使い続けられるように維持していくことが重要です」(藤田氏)
アップグレードプロジェクトにも、提案力とシステムインテグレーション力の高さ、初期導入以降の継続したアプリケーション運用保守(AMO)の実績を評価し、MDISをパートナーに選定した。

一方、情報システム部門はBCP対策とシステム運用の柔軟性向上にも取り組んだ。静岡県浜松市に置くローランド本社のオンプレミス環境でのシステム運用においては、東海・東南海地震などを念頭にBCP対策を講じてきたが、2011年の東日本大震災を機にさらなる備えへの認識が高まる。同時に、システム運用の負荷軽減を図るため、ERPサーバーおよび関連サーバーを三菱電機情報ネットワーク株式会社(MIND)の東京データセンターに設置し、システムとインフラの運用をアウトソーシングすることにした。

システムインフラ運用基盤をデータセンターに移行

松村 誠一 氏

松村 誠一 氏
ローランド株式会社
情報システム部
運用管理グループ リーダー

恩田 美千夫 氏

恩田 美千夫 氏
ローランド株式会社
情報システム部
業務プロセスグループ リーダー

プロジェクトは2012年9月にキックオフし、2013年5月にアップグレードの作業を行った。システムの再構築に関しては、ローランドのインフラ担当、ベーシス担当、アプリケーション担当の3部門とMDISがそれぞれ連携し、協力体制のもとで作業を進め、計画どおりのスケジュールで移行を終えている。
アップグレードでは、リスク、コスト、ダウンタイムを最小化し、エンドユーザーへの影響を最小限に抑えることを目的とした。そのため、新たな機能追加などは行わず、現状のサービスレベルを維持する方針でプロジェクトを進めた。

第1ステップとなるハウジング作業では、セキュアなアクセス環境を目指し、ネットワーク環境の構築に注力した。システム部 運用管理グループでリーダーを務める松村誠一氏は、「ハードウェア類はすべてMINDのデータセンターに持ち込んで設置するため、それを見越した作業が必要です。そこでMDISのサポートを受け、他ベンダーのネットワーク機器類と、データセンターに配置された機器類との整合性を図りながら慎重に作業を進めました」と振り返る。

インフラ面においては、本番機、検証機、開発機すべてを仮想統合し、バックアップサーバーを含めて全4台に集約した。情報システム部 業務プロセスグループ リーダーで、インフラを担当した恩田美千夫氏は「従来の物理サーバー環境では何度も発生するシステムの構成変更で苦労してきました。そこで、稼動後にメモリーやディスクなどのリソースを柔軟に追加できるように仮想化でサーバーを統合しています」と説明する。
アプリケーションのアップグレード作業では、影響範囲を事前に把握するためのアセスメントツールを活用して移行作業を効率化。移行後の安定稼動を実現するために、既存の業務プロセスが円滑に進むことを確認する業務テストを入念に行った。情報システム部 係長で、アプリケーションの改修を担当した新村尚人氏は「膨大なトランザクションの中から重要なトランザクションを抽出し、優先順位を付けながら今までの業務シナリオが正しく遂行されることを確認しました」と述べている。

最終的な本番機への切り替えは、前バージョンのシステムとデータを新本番機に移行後、SAP ERP 6.0にアップグレードする段取りとした。システム停止が可能な期間は4日間だったため、5月のゴールデンウィークを用いて集中的に実施。重要度の高い移行作業は、事前リハーサルを2回実施して万全の対応を期した。「1回目のリハーサルでは移行データのボリュームとバックアップデータの取得時間を確認し、2回目は本番のタイムテーブルを想定してシミュレーションを行いました。テープ媒体を新幹線で運搬するデータ移行の手順を実際に踏んだり、バックアップデータを事前に取得してみたりすることで、本番切り替え時も安心して作業を進めることができました」と、情報システム部 係長で、ERPのベーシス作業を担当した市川真吾氏は語る。

システム運用負荷を軽減し情報システム部門のリソースをコア業務に集中

新村 尚人 氏

新村 尚人 氏
ローランド株式会社
情報システム部 係長

市川 真吾 氏

市川 真吾 氏
ローランド株式会社
情報システム部 係長

システム運用のアウトソーシングにより、情報システム部門の業務負荷は大幅に軽減された。アプリケーション保守から、ハウジングサービス、インフラ運用までが三菱電機グループによるワンストップ体制となり、問い合わせ対応の一元化も実現している。その結果、IT企画や事業戦略の構築支援などのコア業務に、人員やリソースを集中できるようになった。アップグレード後には情報システム部門の組織改革を行い、IT企画を担当する「業務プロセスグループ」を新たに立ち上げた。今後はこのグループを中心に、ITの視点から経営戦略を積極的にサポートしていく考えだ。

また、BCP対策を踏まえてデータセンターにサーバーを移行したことで、浜松本社が被災した場合でも事業が継続できる環境が整備されている。松村氏は「以前、大型台風により大規模停電に見舞われたときにサーバーが停止したことがありました。今後はそうした心配もなく、データの安全性が確保できます」と語る。

今後は、SAP ERPばかりでなくその他の情報系システムや周辺システムに関しても、ハウジングサービスやAMOサービスを活用して運用効率を高めていく方針だ。さらに、グループ全体のガバナンスを強化することも掲げている。 「今後は情報システム部の企画部門で将来のグランドデザインを描きながら、中期経営計画を踏まえて収益力の改善と基盤づくりを支援していきます」(藤田氏) 将来に向けIT基盤を強化したローランドは、今後もSAPシステムをベースに機能拡張を継続しながら、グローバルビジネスを拡大していく。

会社概要

ローランド株式会社

本社:静岡県浜松市北区細江町中川2036-1
創業:1972年4月
資本金:92億7,400万円(2013年3月31日現在)
売上高:連結723億1,000万円(2013年3月)
事業概要:電子楽器、電子機器およびそのソフトウェアの製造販売ならびに輸出入
http://www.roland.co.jp/

パートナー企業

三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社
三菱電機インフォメーション
システムズ株式会社