導入事例「芝浦メカトロニクス株式会社」

芝浦メカトロニクス株式会社
個別受注生産に対応した
製造業向けテンプレートを活用し
SAP ERPによるプロセス標準化を実現
「デジタル時代のインフラプロバイダー」を旗印に、フラットパネル、半導体などの製造装置で世界の最先端を走る芝浦メカトロニクス株式会社。個別受注を中心とする同社は、生産性の向上とコスト構造の改革を目指して、分散管理していた業務システムをSAP ERPで統合した。生産から販売、会計に必要なモジュールのビッグバン導入を実現した裏には、トップダウンによる導入方針の明確化と、コベルコシステム株式会社の製造業向けテンプレート「HI-KORT」があった。

システム運用の効率化を目指しパッケージによる標準化を決断

芝浦メカトロニクスの現在の事業体制が整った時期は、芝浦製作所と東芝メカトロニクスが合併した1998年にさかのぼる。「メカトロニクス技術」、「プロセス技術」、「要素技術」の3つをコアコンピタンスに、開発から製造、サービスまでのトータルソリューションを提供する同社の基幹システムは、母体となった会社のものを踏襲して個別管理されてきた。個々の業務に合わせて最適化されていた各システムも、管理数が増えることでインターフェースの管理やバージョンアップなどの運用負荷が増大。また、システム間の連携が複雑化し、データの整合性確保という課題が生じていた。

一方、経営面では国内外の競争激化に対応するため、生産性の向上が常に求められる。大型の製造装置を手がける同社の場合、顧客からのオーダーに基づく個別受注が中心で、生産性向上にはユニット単位で仕様を統一化し、標準生産方式の比重を徐々に高めていく必要がある。また、調達や生産管理などに介在する間接コストを削減し、収益の改善を図る必要にも迫られていた。

そこで同社は、パッケージを利用したシステム統合と標準化を決断。プロジェクトのミッションについて技術本部 情報システムグループ 主査の望月斉圭氏は「従来の業務プロセスを見直し、将来を支える統合システムの構築を目指しました」と説明する。

個別受注生産に対応する製造業向けテンプレートを採用

新基幹システムの構築に際して芝浦メカトロニクスが定めたポリシーは、従来の業務プロセスを見直し、全社で標準化することだった。そして、複数のパッケージ製品から選ばれたのが、グローバルのベストプラクティスを保有するSAP ERPだ。製造業60社以上のノウハウを凝縮したコベルコシステムの製造業向け統合テンプレート「HI-KORT」を活用し、短期間の構築と開発コストの削減を目指した。

「HI-KORTは、個別受注を中心とした当社のビジネスに適合するテンプレートでした。コベルコシステムとは当社が要求する機能の実現性に対する質問のやり取りを実施し、満足できる回答が得られたので、パートナーとして最適と判断しました」(望月氏)

採用したSAP ERPのモジュールは、プロジェクト管理(PS)、生産管理(PP)、在庫管理(MM)、販売管理(SD)、サービス管理(CS)、会計(FI/CO)など、生産から販売、会計にいたる必要機能を網羅。さらに人事給与(HCM)、案件管理のSAP CRMと情報分析ツールのSAP BusinessObjectsを加えてビッグバン導入を目指した。

業務部門のキーマン参画によりプロセスの標準化を推進

2010年5月にキックオフした新基幹システムの導入プロジェクトは、「ビジネス設計」「実現化」「移行検証」「稼動準備/定着化」の4フェーズに分けて進められた。要件定義を中心とした「ビジネス設計」フェーズでポイントになったのが、業務プロセスの標準化だ。長年かけて築いたプロセスを改めてパッケージに合わせるには、業務部門の協力が欠かせない。芝浦メカトロニクスはこのハードルを、トップダウンによるプロジェクト推進によって乗り越えた。また、業務部門より業務に精通したキーマンを選出し、そのキーマンが、専任メンバーとしてプロジェクトに参画。これによってFIT&GAPの抽出がスムーズに進み、キーマンが間に入ることで業務部門と妥協点を見いだすことができたという。

また、アドオン開発を最小限に抑えるために、業務をシンプル化して機能の追加項目を絞り込んだ。必要なアドオンについては、プロジェクトメンバーやコベルコシステムのプロジェクトマネジャーを含めたワーキンググループで優先順位を決定。最終的には役員も参加するステアリングコミッティでアドオン判定を実施し、投資対効果に見合った機能を優先して追加した。「ワーキンググループで情報を共有したおかげで、お互いが譲り合う状況が生まれ、必要な機能を優先的に追加することができました」と望月氏は語る。一方で個別受注生産特有の製番管理機能については、SAP ERP上のデータすべてに製番情報を紐付けし、製番単位で生産状況をリアルタイムに追えるよう工夫した。

SAP ERPの導入では、外部システムとの連携も重要なカギとなる。プロジェクトでも、設計情報関連のPDMや資材管理など、既存システムとの連携が発生したが、SAP ERP側のインターフェースを優先して開発することで外部システム側の開発負荷を抑えている。

次の「実現化」フェーズと「移行検証」フェーズでは、データの移行を慎重に実施した。生産リードタイムが長い大型の設備を手がける同社の場合、製番紐付きで仕掛中のトランザクションデータが大量に存在する。新システムで滞りなく業務をスタートするためには、マスターデータと同時に、トランザクションデータも本稼働に合わせて移行しなければならない。そこで、プロジェクトチームとコベルコシステムからそれぞれ専任メンバーを選出し、移行前のデータ整備を入念に行った。さらに、本稼働までに3回のリハーサルを繰り返し、移行時間と移行精度を測定しながら、2011年5月の本番に備えていった。しかし、本稼働予定の2カ月前に東日本大震災が発生。当時の状況について望月氏は「データ移行や検証作業の遅れに不安がよぎったことは確かです。しかし、その後の計画停電や電力需給の影響を避けるため、経営判断によって5月の本稼働厳守を決定し、ゴールデンウィーク中にデータ移行を行いました」と振り返る。

新システムへの移行後、従来と変わらないパフォーマンスで業務を行うために、業務担当者、管理者、現場へのユーザー教育にも力を注いだ。ユーザーインターフェースが変わることで業務担当者が戸惑うことも多かったことから、キーマンへの教育を先行して実施し、その後キーマンが現場で教育推進役を担ったほか、習熟度を測定しながら再教育も実施。さらに、情報システム部門も導入開始1カ月間はバックアップ体制を敷き、QA対応を続けながら粘り強くサポートしていった。

迅速な意思決定によりビッグバン導入を予定通り実現

HI-KORTのテンプレートを用いたSAP ERPのビッグバン導入は、当初の目標どおり12カ月間で終了。現在は、さらなる生産性の向上を目指して、ブラッシュアップを続けている。プロジェクトの推進力となったのは、SAP ERPの標準機能に業務を合わせる業務プロセス改革だ。そして、業務に精通したキーマンの積極的な参画と、トップダウンによる意思決定の迅速化、導入パートナーのリソース活用も重要な要素となった。

「コベルコシステムの確立されたシステム構築のプロセスと、重要なポイントでの適切なチェック体制により、スムーズに進行できました。密にコミュニケーションを取り、過去のSAP ERPの導入経験で得たさまざまな知見を提供してくれたことが大きく役立ったと感じています」(望月氏)

SAP ERPの導入により、開発コストおよび保守運用コストの削減を達成した芝浦メカトロニクス。業務における間接コストの削減にも、継続的に取り組む考えだ。
HI-KORTを用いて基幹システムのビッグバン導入を達成した同社の事例は、個別受注生産体制を取る製造業やシステムの分散化に悩む企業の参考になるに違いない。

コベルコシステムの「HI-KORT」を活用したSAP ERPのビッグバン導入

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会社概要

芝浦メカトロニクス株式会社

本社:神奈川県横浜市
設立:1939年10月
資本金:67億6,100万円(2012年3月31日現在)
連結売上高:連結393億5,900万円(2011年3月期)
事業概要:フラットパネルディスプレイ製造装置、半導体製造装置、メディアデバイス製造装置、真空応用装置、レーザ応用装置、各種応用装置の開発・製造・販売
http://www.shibaura.co.jp/

パートナー企業

三井情報株式会社
コベルコシステム株式会社

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