導入事例「大塚ホールディングス株式会社」

大塚ホールディングス株式会社
グループ企業間の異なる事業分野と商流の壁を越えた
販売物流システムをSAP導入で刷新・構築。
グループのITインフラ基盤構築に向け、重要な一歩を踏み出す
大塚グループの事業は、治療薬や輸液などの製造販売を行う「医療関連事業」と、健康の維持・増進をサポートする飲料・食品や健粧品(コスメディクス)などの製造販売を行う「ニュートラシューティカルズ関連事業」の2つの分野に大きく分けられる。グループ内各社で、これら異なる事業分野を個々に展開している中、大規模な販売物流システム刷新・統合プロジェクトが立ち上がった。大塚グループは、グループ全体のITインフラ基盤構築に向けて、大きな第一歩を踏み出したのである。

グループ企業相互のリソース最適化・効率化を目指す

牧瀬 篤正 氏

牧瀬 篤正 氏
大塚ホールディングス株式会社
専務取締役 財務担当

鳥羽 洋三 氏

鳥羽 洋三 氏
大塚化学株式会社
取締役

2010年12月、大塚グループの持株会社である大塚ホールディングスは東証1部に上場を果たした。この時点で、グループ各社はそれぞれメインフレームやオフィスコンピュータなどを用いた自前の販売物流システムを導入していた。これらレガシーシステムは、カスタマイズを繰り返しつつ長期にわたって稼働させてきたため属人化が進み、業務の標準化や内部統制を進めるうえでの課題となっていた。

当時のプロジェクトオーナー、大塚ホールディングス専務取締役・財務担当、牧瀬篤正氏は、「大塚グループの将来を見据え、グループ内企業が互いのリソースを最適化し、効率性を高めるという流れの中で、業務の標準化をどう進めていくべきか、という議論が行われました。その結果、販売物流システムを刷新して、大塚グループのITインフラ基盤構築に資する共通プラットフォームの導入をスタートさせたのです」と、プロジェクトの背景について振り返る。また、当時プロジェクトをリードした大塚ホールディングス執行役員経営財務会計部IT担当部長(現・大塚化学取締役)、鳥羽洋三氏も「今回のプロジェクトは、大塚グループの標準販売物流システム展開のファーストステップとして位置づけられます」と今回のプロジェクトの位置づけについて続けた。

新しい販売物流システム導入の対象となったのは、大塚製薬、大塚食品、大塚チルド食品である。大塚食品はこの間、大塚ベバレジを吸収合併し、大塚食品として統合されている。

異なる商流に柔軟に対応できるシステム

求められたのは、医薬品と食品という製品群の、異なる商流に柔軟に対応する販売物流システムの構築である。すでに十分に高いハードルだ。プロジェクトの推進は大塚ホールディングス、大塚製薬、大塚食品、大塚倉庫の4社で行われ、その導入支援パートナーとして選ばれたのが、大塚グループ各社の会計領域でのシステム導入、保守運用に実績のあるアビームであった。

ここで製品群の違いによる商流の違いについて簡単に説明する。例えば医薬品は製品単位ごとに厳密なロット管理が求められる。どのように製品が流れていったのか、履歴を正確にトレースできなければならない。人の生命に関わる医薬品の性格上、欠品は決してあってはならない。これが食品の場合は、製造日から賞味期限までを3分割し、納入期限は製造日から3分の1の時点まで、販売期限は賞味期限の3分の2の時点まで、という食品流通業界の慣行である「3分の1ルール」に則ったフレッシュローテーションを原則に、リアルタイムで細やかかつ速やかに製品を補充していく。相当に異なる商流なのである。

販売領域と受注領域の2段階導入でリスクを分散

森本 幸司 氏

森本 幸司 氏
大塚製薬株式会社
IT推進室 課長

大澤 慶治 氏

大澤 慶治 氏
大塚倉庫株式会社
ロジスティクスシステム部
情報センター チーフエンジニア

今回のプロジェクトが対象とする業務の流れは、受注・引当・出荷指示の「受注」と、出荷・請求回収・会計の「販売」の2つに大別できる。異なる商流に対応しつつ、「受注」と「販売」の全領域において、グループ会社が個々に稼働させていたレガシーシステムを一気に刷新し、ひとつの販売物流システムに乗せるのは、あまりにリスクが大きいことが十分に予想された。そこで採用されたのが、リスクを分散するため、販売領域と受注領域を2段階に分けて導入するというシナリオだ。

「販売領域におけるお客様に返す仕切データの品質と、受注領域において新たにエントリーするデータの品質を同時に担保することは難しいという判断でした」と大塚製薬のIT推進室課長、森本幸司氏は説明する。「そこで、導入のハードルを下げ、第1段階として大塚倉庫から出荷した後の販売系の仕組みをSAPに乗せ、第2段階として受注系の仕組みをSAPに乗せることにしたのです」。

業務標準化にあたって、まず取り組まれたのがコードの統一であった。例えば食品については、大塚製薬、大塚食品とも製造販売を行っており、食品に限っても、マスター数は大塚製薬で約2万件、大塚食品で約4000件と膨大だ。しかしプロジェクトでは、コードの統一ありきで業務標準化を進めるのではなく、コード体系の統一は進めつつ、名寄せは将来的に行なっていくという現実的な方法が採られた。「将来的に、今回販売物流システムを導入した3社以外のグループ会社の乗り入れを容易にするため、システムもできるだけシンプルにすることを目指しました」とアビームのプロセス&テクノロジー事業部ITマネジメントセンターマネージャー、中野和幸は説明する。

新しい販売物流システムの導入リスクを少なくするため、既存アセットの活用も行われた。大塚倉庫のロジスティックシステム部情報センターチーフエンジニア、大澤慶治氏は「ユーザー視点として、例外処理への対応も必要でした。そのため受注系では既存の『入口』にあたるシステムから受注データをSAP導入による新システムに連携させることにしました」と話す。導入方法について、ときに口角泡飛ばす議論もなされたという。ベストな機能配置を模索することで、開発側、ユーザー側に共通のゴールを目指す意識が生まれていったのである。

本稼働中に新旧システム間の照合テストを実施

古川 恭一 氏

古川 恭一 氏
大塚製薬株式会社
IT推進室 課長

プロジェクト中最大の難関が、レガシーシステムから新システムへと移行させる際の照合テストであった。引当や仕切データの結果が、新旧のシステムでまったく同じにならければならない。仕切データの照合テストは通常業務終了後に取りかかり、差異が発生すると顧客送信前に回収して原因を調査し、確認が完了した後に送信するという作業が約1カ月の間、繰り返された。もし違うフォームが顧客に送信されると、客先のシステムでエラーとなり、はじかれてしまうからだ。

「仕切データは、お客様が翌日の入庫の際の買掛照合で使用するものです。エラーと遅れを出さないことが大前提であり、検証に検証を重ねました」と大塚製薬のIT推進室課長、古川恭一氏は当時の苦心を振り返る。従来はホストコンピュータの周りに10から20ものシステムが接続されていたという。しかし従来のメインフレームやオフィスコンピュータがなくなることで、いままでそこにデータを供給していたシステムが障害を起こす。周辺システムをケアしながらの照合作業は困難を極めた。

アビームの金融統括事業部シニアマネージャー、村山岳広は、「1次稼働である販売領域の稼働の際には、後続情報をストップさせることなく、本稼働中であっても効率よく照合テストを進めることに注力しました。本番稼働前に照合テストを繰り返すことで照合の精度も急角度にアップし、その結果として、稼働後に非常にタイトな時間内でも短時間でチェックができたことは大きな効果でした」と話す。アビームとプロジェクトチームは、ともにこの難関を乗り越えたのである。

アビームのプロジェクトマネジメントでチームがひとつに

今回のプロジェクトにおいてアビームに期待された最大のもの、それはプロジェクトリーダーであった鳥羽氏が「プロジェクトの目的を失わず、期限内にカットオーバーさせることをアビームに求めた」と話すように、プロジェクトマネジメントのノウハウでありスキルであった。

同じグループ内の企業であっても、それぞれの企業文化は異なり、それを飛び越えてひとつの販売物流システムの下に統合するのは相容れない部分がある。アビームは、定例会や随時行われる会議の中で、グループ各社との合意形成の調整役として能力をいかんなく発揮した。現場のニーズを的確につかむため、ユーザー部門にもきめ細かくヒアリングし、離れたロケーションの担当者とも頻繁にテレビ会議を行った。徹底したスケジュール管理のもと、内部統制室との連携を図りながら、システム導入にあたる各企業間の温度差を根気よく縮めていった。

佐藤 哲也 氏

佐藤 哲也 氏
大塚製薬株式会社
IT推進室 課長

「グループとしての業務標準化に合わせ、異なる領域のチーム間で同じ方向を向く意識が醸成されていったのが実感できました」と大塚食品の情報センターセンター長、佐藤哲也氏は振り返る。アビームの製造/流通統括事業部プリンシパル、竹内隆志も「プロジェクトの目的に沿ってシステム構築を進めていくことは、当然ながら重要です。ただし、販売システムのように得意先との関係が深いシステムでは、ユーザーにとって譲れない部分は生かしながらも、柔軟かつシンプルな構築を担保できるように調整を行いました」と話す。

そもそも今回SAPを採用した理由は、すでに大塚グループ各社の会計システムがSAPにより構築され、稼働していたことによる。かつてその導入を支援したのもアビームであった。「引き続き会計システムの保守運用を請け負ったことで、大塚グループの企業文化や慣習をよく知ることができました」とアビームの製造/流通統括事業部シニアマネージャー、坂本良一はその優位性を分析する。「おかげで事前に要望を推し量り、提案に落とし込むこともできました」。

内部統制への対応も、今回のプロジェクトで期待された効果のひとつだった。従来は内部統制を担保するために、グループ各社が個別に仕組みを作り、人の手によって運用してきたが、システムによって自動化、標準化されたことによって、グループ全体の内部統制をより効率的に、より確かに効かせることができるようになった。

BCP(事業継続計画)の効果も見逃せない。大塚グループの販売物流システムの本稼働は2011年の5月。東日本大震災の2カ月後であった。オープン化へと移行できたことで、バックアップサイトの地理的条件を、ユーザーの観点から自由に選べるようになった。大塚製薬は2012年8月、日本で初めて事業継続管理の国際規格の認証を取得している。

新・販売物流システムの海外グループ企業への展開も視野に

篠田 隆司 氏

篠田 隆司 氏
大塚製薬株式会社
IT推進室 課長

このプロジェクトの成功によって、大塚グループの標準システム展開のファーストステップは確立された。大塚製薬のIT推進室係長、篠田隆司氏は「受注し、出荷確定データができると、その後は止まることなくデータが一気通貫に流れ、人を介さずに業務処理ができるようになり、簡便で作業がしやすい環境になった、と実感しています」と話し、森本氏も「グループ他社が乗り入れ容易な、拡張性あるシステムが構築できた」とその自信のほどを語る。目指すのはもっと先、なのだ。

まず国内の連結会社の業務標準化が目標、と鳥羽氏は今後の展望を切り出した。「これを加速するためには、共通のシステム基盤に乗り入れてもらうことが必要です。今回ひとつのモデルができあがったことで、グループ基盤構築のため、グループ会社が皆同じ方向を目指すことができるようになった意義は大きいといえるでしょう。今回導入した販売物流システムを、今後は国内だけでなく海外の連結子会社へ展開することも、視野に入れています」。

その目はすでに世界を捉えている。販売物流システム導入を足がかりにした、大塚グループITインフラ基盤構築のロードマップの今後に、いっそう期待がかかる。

大塚グループITインフラ基盤構築

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会社概要

大塚ホールディングス株式会社

資本金:816億90百万円
売上高:1兆1546億円(2012年3月期、連結)
事業概要:持株会社(グループ会社連結子会社67社、持分法適用会社13社)。主に、医薬関連事業、ニュートラシューティカルズ関連事業などを営むグループ会社の持株会社
http://www.otsuka.com/jp/

パートナー企業

アビームコンサルティング株式会社
アビームコンサルティング株式会社

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