成功事例「アスクル株式会社」

アスクル株式会社
SAP NetWeaver BW Acceleratorでデータの分析スピードを向上し
顧客ニーズに柔軟なサービス基盤を確立
文具・OA機器等のオフィス用品の注文をファックスやインターネットで受け付け、「今日注文すると今日もしくは明日来る」のビジネスモデルで成長を続けるアスクル株式会社。2009年に基幹システムをSAP ERPで刷新し、SAP NetWeaver Business Warehouse(SAP NetWeaver BW)によって情報分析・活用基盤を強化した同社は、BW環境のパフォーマンス強化を目指してSAP NetWeaver BW Acceleratorを導入した。リアルタイムな分析環境を構築した同社は、多角的な情報分析によって、新たなビジネス創出に向けたさまざまな取り組みを推進している。

新たなビジネスを創出するサービス基盤の強化

「お客様のために進化する」を企業理念に掲げるアスクルは、顧客ニーズに柔軟なサービス体制の確立に向けて、2002年から独自のITサービス基盤「e-プラットフォーム」の整備を進めてきた。その中で顧客サービスに直結する各種のシステムを順次稼働させる一方、10年以上にわたってメインフレーム上で運用してきた基幹システムが老朽化したことから、2009年11月にSAP ERPで刷新。同時にSAP NetWeaver BWによって情報分析基盤を強化するとともに、各種帳票作成の自動化による工数削減と業務の効率化に成功している。

池田 和幸氏

池田 和幸氏
アスクル株式会社
ビジネスシステム 部長

しかし、この2つのSAPシステムを基盤に新たなビジネスの創出を目指す同社において、導入から約半年が経過した2010年の春、SAP NetWeaver BWで扱うデータが多く、さらなるパフォーマンスが必要という新たな課題が顕在化する。ビジネスシステム 部長の池田和幸氏は次のように振り返る。
「情報系データベースから分析データを抽出するのに長い時間を要し、それが業務効率の低下につながっていました。スピードを優先する商品仕入れ部門や営業部門の一部では、SAP NetWeaver BWを使わずに、Excelなどで独自の分析が行われていました」

法人と個人を顧客として、5万アイテム近くの商品を取り扱うアスクルのビジネスにおいては、1日のトランザクション数は数十万件に及ぶため、データ量は膨大となる。そこで同社の情報システム部門は、データ抽出のレスポンスを高めるために、複数の「目的別データベース」を夜間処理で再加工し、分析ユーザーに提供していた。しかし、データベースの再加工は新たな工数を生むと同時に、見たいデータがいつでも抽出できるSAP NetWeaver BWのメリットをスポイルしてしまう。池田氏は「システムがビジネスの進化の妨げる状況は何としても避けたいと思いました」と語る。
こうした背景から、同社はSAP NetWeaver BW Accelerator導入の具体的な検討を開始した。

豊富な導入実績とノウハウを評価して、IBMのソリューションを選定

SAP NetWeaver BW Acceleratorは、BWのデータベースの内容をBWAサーバーのメモリー上に展開し、BWAエンジンによって高速検索するインメモリーソリューションである。大量のデータをメモリー上に集約することで、これまでにはない瞬時のデータ分析が可能とする。データ検索はハードウェア上で処理するため、ソフトウェアによるチューニングも不要だ。

SAP NetWeaver BW Acceleratorの導入に際してアスクルは、パートナーとしてIBMを選定し、IBM BladeCenterとIBM System StorageにプリインストールしたSAP NetWeaver BW Acceleratorを採用した。選定の理由について、池田氏はIBMの実績と技術力を挙げる。
「ハードウェアにとどまらず、IBMはSAP NetWeaver BW Acceleratorなどミドルウエア製品の導入に関して多くのノウハウを有しています。また、SAP ERP導入時にインフラを構築した際、IBMサーバーが当社のトランザクションにおいて高いパフォーマンスを発揮することも実証済みでした。インフラのアウトソーシング運用においても、スキルの高い技術者による万全のサポート体制が提供されている点を評価しました」(池田氏)

また、現状のSAPシステムがIBMサーバー上で稼働している状況を踏まえると、連携性の観点からIBM製品を選択するメリットは大きく、テスト工程も簡略化できる。そこでアスクルは、IBMとSAPの提案をもとに将来の拡張性を見据えたサイジングを実施。事前のワークショップで利用環境の綿密な検証やシミュレーションを行い、わずか2カ月間での短期導入を実現した。

データ検索を高速化し、在庫情報のリアルタイム分析を実現

2010年10月から稼働を開始したSAP NetWeaver BW Acceleratorの導入効果について、カスタマー・バリュー・クリエーション マーケティング・データ・マネジメント 数値管理担当 マネージャーの矢吹和久氏は「検索クエリーのレスポンスは従来の5倍から10倍、データによってはわずか数秒で処理が完了するケースもあります」と分析スピードの飛躍的な向上を実感している。

矢吹 和久氏

矢吹 和久氏
アスクル株式会社
カスタマー・バリュー・クリエーション
マーケティング・データ・マネジメント
数値管理担当 マネージャー

アスクルのビジネスでは、在庫管理の効率化が重要な要素となるが、今回のパフォーマンス強化によってデータが素早く取り出せるようになり、在庫状況から将来の在庫予測までがリアルタイムに可視化されたことで、商品調達の業務がダイナミックに変革した。
「アスクルのビジネスでは、個別の商品にかかる倉庫管理や配送などの間接コストを加味した利益分析も非常に重要です。こうした分析軸は以前から用意していたものの、分析環境のパフォーマンスの問題から利用されていませんでした。今回のSAP NetWeaver BW Acceleratorの導入によって、パフォーマンス上の制約がなくなったことで、商品仕入れ担当者はより多角的なアプローチを行うことできるようになりました」(矢吹氏)

SAP NetWeaver BWを利用するユーザー数は導入前より20%以上増加し、現在も増え続けている。さらにリアルタイムにデータが得られるメリットを活かし、商品仕入れ担当者がサプライヤーとの商談の場で「最近の売れ筋商品はこれです」「このサービスはこのセグメントやエリアの顧客に支持されています」といったやり取りをする姿も見られるようになった。また、SAP NetWeaver BWで作成した定型レポートは同社の経営層にも浸透。日次の取引、カテゴリー別売上などを俯瞰的に見ながら意思決定を行う土壌が着実に根付きつつある。

システム部門においても、SAP NetWeaver BWのパフォーマンス向上は業務効率の向上に貢献している。この点について池田氏は「レスポンスを高めるために行っていた目的別データベースを作成とそのためのシステム保守の負担がなくなり、分析環境の高度化にリソースが集中できるようになりました」と語っている。

情報分析基盤をSAPシステム以外のWebアクセス分析にも活用

アスクルのIT戦略のロードマップは、SAP NetWeaver BW Acceleratorの導入で大きな節目を迎えた。
「今後については、e-プラットフォームの整備を継続する中でSAPシステムの活用効率をいかに高めていくかが課題です。その意味で、SAP NetWeaver BW Acceleratorによるパフォーマンスの向上、SAP NetWeaver BWのユーザー数の増加は貴重なモデルケースといえます。現在はアスクルのビジネスに貢献する新たな分析モデルの構築をマーケティング部門などと連携しながら進めています」(池田氏)

直近の検討課題としては、経営指標や各種データをグラフィカルに可視化するダッシュボードの導入を挙げ、意思決定の迅速化や新たなビジネスの創出に活用していく考えを明らかにした。

また、SAP NetWeaver BWで構築した情報データベース基盤を、SAP ERPの業務データ以外で活用する構想もあるという。具体的には外部システムのデータを情報データベースに取り込み、さまざまな分析に応用する方針だ。
「顧客からの受注チャネルがファックスとWebの2通りある中で、最近はWebからの受注が約60%に拡大しています。通販サイトへのアクセス履歴や購入商品などのログデータを高い精度で分析しながら、お客様の購買動向を把握していくことも検討しています」(矢吹氏)

どれほど多くのデータがシステムに蓄積されても、正しい分析が行われなければ、新たなビジネスの創出にはつながりません。SAP NetWeaver BW Accelerator 導入によって分析機能の強化に成功したアスクルの事例は、顧客志向のビジネスを目指す多くの企業にとって参考になるはずだ。

導入企業プロフィール

アスクル株式会社

本社:東京都江東区
設立:1963年11月(創業:1993年3月)
資本金:35億3,500万円
事業概要:文房具、事務用品、オフィス用品などの通信販売
http://www.askul.co.jp/

パートナー企業

日本アイ・ビー・エム株式会社
日本アイ・ビー・エム株式会社