成功事例「花王株式会社」

花王株式会社
SAP ERPを活用し、ベストプラクティスを追求。
10年の歳月をかけ、世界のグループ企業の基幹システムを統一。
> IT活用の先進企業として知られる花王株式会社。同社は、世界のグループ企業を対象とした基幹システムの標準化において、SAP ERPパッケージを採用。40年にもわたって稼働していた自社開発のシステムを刷新する国内プロジェクト「Blue Wolf(蒼き狼)」では、アビーム コンサルティング株式会社(以下、ABeam)との協力体制のもと、"世界一体運営の実現(Global One)"に向けたさまざまな成果が生み出されている。
※ 狼煙が古来、人や馬が手紙などを運ぶよりも、遠距離を高速に情報伝達できる手段として使われたことに由来する

コア領域・ノンコア領域の切り分けからなる新基幹システム

大路 延憲氏

大路 延憲氏
花王株式会社
情報システム部門 統括 理事

国際競争は年々激しさを増し、あらゆる面でボーダレス化が進む中、花王では世界のグループ会社を共通の物差しで図る、経営情報の"見える化"という課題に迫られていた。日々蓄積されるデータを正確に処理するシステムは、環境の急激な変化やM&Aに迅速に低コストで対応できる、柔軟性、汎用性、拡張性に優れたものでなければならない。

花王が描いた新基幹システムのグランドデザインの特長は、その機能をコア領域とノンコア領域に明確に区別した点にある。コア領域とは、調達計画、生産計画、在庫計画、販売計画といった、同社が長年にわたり積み上げてきた独自のノウハウからなる計画系システムだ。このコア領域には従来のシステムを活用し、それ以外の実績データの管理・分析をする購買管理、生産管理、物流管理、販売管理、財務・管理会計などは、ノンコア領域としてSAP ERPパッケージで再構築することにした。

同社の情報システム部門を統括する大路延憲氏は、パッケージ導入の難しさを次のように語る。「従来のシステムを単にSAP ERPに置き換えるということではなく、それをベースにして、いかにベストプラクティスを迅速に取り込めるようにするかが大きな課題でした。40年慣れ親しんできたシステムをすべて変えるのではなく、ノンコア領域を変えることから、さまざまなパズルの一片一片を組み合わせていく必要があったのです」
その導入パートナーとして選ばれたのが、ABeamだった。

アジア22拠点のシステム統一プロジェクトを10年前にスタート

花王とABeamは、今回のソリューションの礎ともなるプロジェクトを、すでに約10年前にアジアで開始していた。1997年7月、タイに端を発したアジア通貨危機を機に、タイ花王はSAP ERPパッケージの導入を決定。この成功をもとに、2002年、香港、タイ、シンガポール、上海など、アジア22拠点の基幹系システムの標準化と業務改善を推進するABS(アジアン・ビジネス・シンクロナイゼーション)プロジェクトが立ち上がった。このとき、導入パートナーとして選ばれたのがABeamだったのである。

小和瀬 浩之氏

小和瀬 浩之氏
花王株式会社
情報システム部門
グローバルビジネス
シンクロナイゼーション部 部長

ABSプロジェクトで導入したSAPのモジュールは、財務会計、管理会計、販売管理、在庫管理など。標準化された業務は、業務プロセス、コード、ルール、KPIを合計して1,300余りにのぼった。この広範で複雑な業務の標準化に大きく貢献したのが、ABeamの業種別テンプレート「Industry Framework」である。これは過去のプロジェクトの方法論を再構築した業種別テンプレートのひとつで、消費財メーカーの高品質なビジネスプロセスが集約されている。

「これが業務プロセスのスコープを決めるのに役立ち、業務標準化の大きな武器になりました」と、当時PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の中心的役割を果たした情報システム部門 グローバルビジネスシンクロナイゼーション部 部長の小和瀬浩之氏は語る。
アジア各国で同テンプレートを用いることにより、国によって異なるビジネスプロセスや、言語の違うユーザーにも対応が可能になった。単にツールを導入するのではなく現場担当者レベルでKPIを理解しているため、業務改善スピードもあがった。さらにABSプロジェクトの直後に欧州の産業用化学品企業にSAPテンプレートを導入、米国・メキシコでも短納期でプロジェクトを完了した。これら一連のグローバル・プロジェクトで、マネジメントレベルがあがり、業績の向上に大きく貢献したという。

「Global One」の天王山、"Blue Wolf "プロジェクトが始動

こうしたアジア・欧州における成果の上に、日本のノンコア領域に標準システムを導入する"Blue Wolf"は始まった。プロジェクト期間は2007年10月から2009年4月の第1フェーズと、2009年6月から2010年4月の第2フェーズに分かれる。第1フェーズでは、国内8工場系システムをはじめとして、本社系システムを含め、140近くのシステム・サブシステムをSAP ERPで標準化し、在庫情報や会計仕訳などを一元管理、リアルタイム連携を成し遂げ、見える化を実現した。第2フェーズでは、国内の花王グループ会社24社(カネボウ小田原工場を含む)の会計システムを一度に標準化する。

安部 真行氏

安部 真行氏
花王株式会社
情報システム部門 戦略企画部
部長

「"Blue Wolf"もABeamに任せることにしました。ABSプロジェクトを通じて、テクニカルなソリューションだけでなく、プロジェクトの趣旨をよく理解し、さらに社内横断的なミーティングを開催するなど、大規模プロジェクトの運営管理にも長けていると判断したためです」(大路氏)

ABeamはプロジェクト・マネジメントの方法論である「ABeam Method」を用い、プロジェクトの全体計画から、構想策定、要件定義、開発、テスト、稼働、稼働支援のスケジュールを計画した。また業務の標準化のためには、用いられる言葉の意味を一つひとつ確認し、統一した用語を使用しなければならない。第1フェーズだけでもコンサルタント約400人、花王プロジェクトメンバー約80人が参加し、トレーニングと稼働後の課題対応のため、和歌山、東京、酒田、川崎、栃木、鹿島、豊橋、愛媛のすべての工場にコンサルタントが飛んだ。さらに花王の情報システム部門戦略企画部 部長の安部真行氏が「各国で一人あたり扱うデータ量が違うので、その上で効率性を追求することが必要でした」と語るように、海外業務も考慮し、新システムにどの機能を追加するのか、拡張する必要があるのか、会社の枠を超え、日夜議論が交わされた。

現場目線でプロジェクトをマネジメント

各工場ではコンサルタントが新システムの必要性を説明する一方、工場リーダーが「工場導入推進リーダー」となって現場の声をまとめ、ユーザーの意見をSAP導入の要所でフィードバックした。安部氏は「現場ユーザーにとっても受け入れやすかったのではないかと思います。ABeamは工場まで出向き、現場の目線で対応してくれました。事前の説明会でも、ユーザーが納得するまで話し合いを持ってくれました」と語っている。

一方、これだけ大きなプロジェクトでは、チームが縦割りになって情報が滞り、プロジェクト進捗・品質管理がままならなくなるおそれがある。ABeamはそれを避けるために、チームを細分化しながらも、複数のチームを横断的に統率するリーダーを階層立てて配置し、情報共有に努めた。クオリティを保つためにも、協力会社を含め最適なチーム編成のための細やかな工夫や、漏れのない情報共有を心掛けた。

大路氏によると、大規模プロジェクトに必要な組織づくりや効率的なコミュニケーションは、形式によるものだけではないという。「定例会議がある・ないにかかわらず、ABeamは必要があればその度に関係者を集めてミーティングを開いた。このフットワークが大切です」

導入対象の広範なエリアもさることながら、ユーザー数は約4,000人(各フェーズ計)。最終的に第1フェーズで挙がった業務課題は900件近くにのぼり、約6,000件ものシステム開発、第2フェーズでは240件の業務課題、4,000件近い開発案件をこなした。ABeamにとっては、アジアでのABSプロジェクト支援の経験が大きく役立ったといえる。約10年に及ぶパートナーシップ、信頼感、一体感と、ABeam独自の方法論、Industry Frameworkなどのプロジェクトツールがあいまって、最大の価値を発揮した。

変化し続けるのが花王のDNA

こうして花王は、世界各国のグループ会社の業務プロセス、経営指標、基幹システムを標準化し、グローバル経営情報の"見える化"を実現した。日本の業務ノウハウを世界で素早く展開したり、逆に海外のノウハウを日本に取り入れたりすることも容易になった。全世界のデータを一元管理することで、迅速な意思決定が可能になり、経営資源を結集して世界を相手に総合力で戦うための新たな基盤を得た。システム運用・保守の手間とコストも、大幅に削減できる。

現在、新システムは無事に稼働し、運用・保守段階へと移行している。しかし、花王ははるか先を見据えており、「Global One」に向けた進歩は止まることがない。アジアでのABSプロジェクトから約10年。花王の現場とともにチャレンジし続けてきたABeamは、進歩を続けるReal Partnerとして、花王の行く先をともに見つめながら歩んでいる。

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導入企業プロフィール

花王株式会社

本社:東京都中央区
設立:1940年5月
資本金:854億円(2010年3月31日現在)
事業概要:家庭用製品、化粧品、産業用化学製品、業務用製品の製造・販売
http://www.kao.com/jp/

パートナー企業

アビームコンサルティング株式会社
アビームコンサルティング株式会社

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