「IFRS」 第3回

IFRS(国際財務報告基準)は、日本企業に何をもたらすのか?
~その正しい理解と導入にあたっての実践ノウハウ~
すでに金融庁からロードマップ(中間報告)が発表され、日本企業への適用時期が着実に迫りつつあるIFRS(国際会計基準)。原則主義や賃借対照表の重視など、これまでとは異なる会計思想をフレームワークとするIFRSの導入には、その本質の正しい理解と戦略的な運用が不可欠です。

ユーザーコミュニティーで模索するIFRS対応の「最適解」(1/3)

経営の高度化を視野にIFRS対応の共通認識を醸成

金融庁の企業会計審議会は2009年6月、「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」を発表しました。そこでは、2010年3月期からIFRSの任意適用を認め、また強制適用については2012年を目途に判断し、2015年または2016年から適用を開始するという方針が示されています。

こうした中、SAPのユーザーコミュニティーであるJSUGでは、内部統制・コンプライアンス部会においてIFRSに関する情報収集を積極的に行うとともに、2010年度からは西日本フォーラム内にIFRS分科会を設置し、活発な議論を展開しています。それに伴い、個々の会員企業におけるIFRS対応の取り組みも、次第に現実味を帯びつつあります。内部統制・コンプライアンス部会と西日本フォーラムIFRS分科会をサポートするSAPジャパン株式会社 BUP事業開発部 シニア・マネージャーの関口善昭氏は、その変化を次のように語ります。
「昨年は様子見の企業が多かったのに対して、今年は様相が一変しています。出遅れていた企業においても、社内勉強会の開催や監査法人が主催するワークショップへの参加、またFit/Gap分析などのアセスメントの実施など、取り組みが活発化しています」

同時にIFRSそのものの捉え方についても、共通認識が醸成されつつあります。西日本フォーラムのIFRS分科会長を務める株式会社神戸製鋼所 IT企画部 担当部長の林高弘氏は、次のように説明します。
「連結会計が先行適用となり、単体においては当面、従来の日本の会計基準が維持されるという基本認識のもとで、準備を進めています。また会員の中では、制度対応というアプローチにとどまらず、IFRSを契機に現在直面しているさまざまな課題をクリアし、経営の高度化に取り組んでいこうとする企業もみられます。IFRS対応のロードマップの中ですべての課題を解決するのは難しい面がありますが、二度手間を避けるためにも、その可能性は模索していくべきだというのが一致した意見です」

ここでいう二度手間とは、制度対応と経営の高度化の取り組みを2段階で実施した場合、どうしても手戻りが発生することを意味します。それだけに、できるだけ早いうちから、制度対応と経営の高度化を両立するための議論を行っていくべきだという機運が高まっているということです。

的確な情報収集にもとづくムービングターゲットの把握

一方、ムービングターゲットであるIFRS対応においては、的確な情報収集が成功の鍵を握るといわれています。そのため、内部統制・コンプライアンス部会では、積極的に最新の情報収集に取り組んでいます。同部会の部会長を務める近鉄情報システム株式会社 開発部 マネージャーの浅山昇氏は、その重要性を次のように説明します。
「部会内においては、まだ数年の猶予があるという楽観論はまったく聞かれなくなり、あと数年しかないといった危機感が高まりつつあります。IFRSは、ただ待っているだけでは、いつまでもムービングターゲットのままでしかありません。的確な情報収集にもとづいて、制度の骨格を把握しておくことで、より具体的な議論が可能になります。たとえばIT面では、どこにFit/Gapが生まれるのか、ベンダーが提供する仕組みは十分な機能を備えているかなどの情報を収集し、それを部会内で共有することで、より高度な議論を行うための環境づくりに注力しています」

≫西日本フォーラムIFRS分科会が進める、より実践的な議論の展開