「IFRS」 第2回

IFRS(国際財務報告基準)は、日本企業に何をもたらすのか?
~その正しい理解と導入にあたっての実践ノウハウ~
すでに金融庁からロードマップ(中間報告)が発表され、日本企業への適用時期が着実に迫りつつあるIFRS(国際会計基準)。原則主義や賃借対照表の重視など、これまでとは異なる会計思想をフレームワークとするIFRSの導入には、その本質の正しい理解と戦略的な運用が不可欠です。

IFRS対応を契機としたIT変革の方向性(1/3)

IFRS対応の先にあるグループ経営の最適化と高度化

2009年6月に金融庁の企業会計審議会から「我が国における国際会計基準の取扱いについて」の中間報告が公表され、日本の会計基準と国際財務報告基準(IFRS)のコンバージョンの問題が具体化される中、企業におけるIFRS対応のアプローチもより現実的な段階へと差しかかりつつあります。実際、ビジネスのグローバルプレーヤーとしてのポジションの確立に向けて、すでに日本企業の約20社が先行適用を宣言し、各業界におけるIFRS研究も活発化の兆しを見せています。

同時に、企業にとって避けて通れない課題が、IFRS対応を踏まえたIT変革の方向性をどのように舵取りしていくかということです。そこでは、2つの視点が想定されます。1つは、「法制度対応」という視点。もう1つは、グローバル標準としてのIFRS適用後の「システムのあるべき姿」という視点です。これまで、多くの企業のIFRS対応の課題に接しているSAPジャパン ソリューション統括本部 IFRS&コンプライアンス ソリューション部 マネージャーの多川健太郎氏は、特に後者について企業から寄せられる声は、システムのガバナンス、業務プロセスの変革、そして経営情報の高度化の3点に集約されると話します。

「収益認識や有形固定資産管理といった個別要件をクリアすることは、IFRS対応の前提ではありますが、それだけでは十分とは言えません。IFRS適用後も見据えて、どのようなシステムを構築していくべきかが、いま真剣に問われるようになっています。たとえば、システムのガバナンスという観点では、業務プロセスの標準化・共通化がより重要な意味を持つことになります。周知の通り、IFRSは制度自体が変わり続ける可能性が高く、たとえばグループに100の事業会社があり、何らかの業務プロセスを変えなければならないときに、100社100様の対応を行うことは現実的ではありません。そこでは当然、システムを集中管理することで、パラメータ1つでグループ全体の業務プロセスを管理できる仕組みが必要になってきます」

また、標準化・共通化は業務プロセスそのものの変革にも関わってきます。特に決算処理をいかにして迅速かつ正確に行うかということは非常に大きな課題です。というのも、日本企業は当面、IFRS適用後も日本基準の決算報告を並行開示しなければならないため、これだけでも2倍の労力を要することになりますが、すでにIFRSが適用されている欧州の企業は、日本企業の3倍から4倍のページ数の有価証券報告書を作成しているといわれています。これらを効率的に処理するためには、業務の効率化が不可欠です。

≫IFRS適用は企業経営の精度とスピードを向上させるチャンス